第31話 獣人国3

建物が元に戻れば、次は農作物の生産を回復させよう。

今ある農場を更に拡張することにする。

建設スキルで農地として拡張する場所の整地などは簡単にできるのだ。


整地さえが済めば、国民全員で頑張って作物を育てればいい。

エルフ国に預かってもらっている獣人3000人が、早く獣人国に戻ってこられるはずだ。

国民全員が張り切っているから大丈夫だと思う。


「獣人王! お聞きしたいことがあります。獣神様を祀る教会を見てきたのですが、連合軍に建物は殆ど破壊され、獣神様の像も雨ざらし状態になっています。

俺は人族ですが、建設スキルを使って教会を修復しても宜しいでしょうか?」


「フウタ様は特別だ! 貴方様がこの国を救ってくれたことは、国民の誰でもが知っている。教会を修復してもらえば、国民は感謝することはあっても、反対する者などいないはずだ」


「分かりました! 明日教会の修復に向かいます。エメット一緒に行ってくれる?」

「もちろんです!」


妹が幼い頃に病で亡くなっていなければ、アンジェ様のようにフウタ様に嫁いでもらうのだが……

父と母の顔を見ると同じことを考えているのが分かる。

仕方のないことだが残念だ……


翌朝、俺はエメットに案内してもらい、レッドと獣神様を祀る教会を訪問する。

ため息がでそうなぐらいボロボロに破壊されている。

教会の中では教会の者や信者たちが、一生懸命に瓦礫の片付けを行っている。


エメットが壊された教会の中に入って、教会の片付けをしていた大司教を連れてくる。


「大司教様! 人族である俺の建設スキルを使って、教会を修復してもよろしいでしょうか?」

「フウタ様が、獣人国をお救いくださったことは、国民の誰もが知っております。願ってもないことです。よろしくお願い致します」


「分かりました。それでは壊される前の教会の形がどうだったのか、俺がイメージできるように、詳しく説明をお願いします」


俺は大司教の説明を聞きながら教会を修復していくと、教会がどんどん元通りの建物に復活していく。

教会の者や信者たちが、どんどん元通りの建物に復活する教会を見て、驚くとともに感謝している。


通りを歩く獣人達も、修復された教会を見上げて喜んでいる。

道端で跪いてお祈りをしている人たちもいる。

戦争で親や兄弟が死んでしまった者が大勢いるのだ、教会が傷ついた国民の心を少しでも癒やしてくれればいいのだが……


「大司教様! 教会の中庭に魔法の種を植えて、教会を訪れた人が野菜や果物で食事ができるようにしたいのですが、どこの場所であれば畑にして大丈夫ですか。エメット! 大司教に許可された場所に魔法の種を撒いてくれないか!」


大司教に場所を確認し、エメットが種を撒く、俺はマジックバッグから水を撒いていく。

種からすぐに芽が出てどんどん大きく育ち、やがてすぐに果物や野菜が実る。


「まずは、皆で味わってみて下さい。美味しいですよ! 果物や野菜を収穫してもすぐに、次のものが実りますので安心下さい」


「ありがとうございます。おかげで、教会に礼拝に訪れる人たちに食事を振る舞うことができます。獣人国の食糧事情は、まだまだ良くないので、本当に助かります」


大司教様が是非にということで、3人で獣神様の像を拝んで帰ることになる。


獣人国はこれから復興が始まります。

獣人たちも賢明に励みますので、彼らをお守り下さいと、心のなかで獣神様に語りかけた。

直後に頭の中に直接声が響いてくる。


「フウタ! そなたには獣人たちが、本当にお世話になりました。何かお礼をしたいが希望するものがありますか?」

「私ではなく王子のエメットに、飛行スキルを頂けないでしょうか?」


「ではエメットに飛行スキルを与えよう。しかしそなたに直接お礼がしたいのだが……」

「荒地を豊かな農地に変えられるようなスキルをいただけないでしょうか?」


「『農業スキル』か、面白いやつだな。女神や大精霊が言っていた通りだ。何か困ったことがあれば我を呼び出すがいいぞ。農業スキルを授けたから、どこかの荒地で試してみてくれ。荒地でも作物が実るし、農地なら2倍の収穫が得られるようになるはずだ」


「たった今。獣神様と話をしていたのだ。エメットに飛行スキルを授けていただいたぞ!」

「獣神様とお話できたのですか? すごいです! 何か言われていましたか?」


「何か困ったことがあれば、我を呼び出すがいいと仰りました。ところでエメットはこの後どうする? 獣人国に残って復旧に専念するか?」


「王と話したのですが、獣人国の復興は王と生き残った者たちで頑張るそうです。王からは、ゼピュロス国でフウタ様の手助けをせよと言われております」


「俺は獣神様に、農業スキルをいただいた。農地の収穫を2倍にすることができるらしいぞ。豊作にしたい農場に片っ端から行こう! 案内をお願いできるか!」


「農業スキルですか、素晴らしいです! 獣人国にとって、とても助かります。さっそく案内します」

次々と農場に案内され『豊作になれ』と念じて回った。獣人国が早く豊かな国に戻ってほしい。


「用事も終わったし、王に挨拶してゼピュロス国に帰ろうと思う。帰りにエルフ国に寄って、エルフ国の農地も豊かにしておきたい」

エメットとともに獣人王に挨拶を済ませ、エルフ国に向かう。


エルフ国に到着後、獣神様から農業スキルを貰ったことを王に伝える。

『そんなにポンポンと、神様からスキルをもらえるものだろうか? 普通の者ではそんなことはありえない。アンジェが言っていたように、この方は本当に神の使いなのだな』と、エルフ王は確信する。


俺は、案内してもらった農地を片っ端から収穫が2倍になるようにして回った。

本当に忙しいけど、皆の役に立っていることがうれしい。


……やっとゼピュロス国に帰ってきた……


魔物の種の畑とは別に、荒れ地を農地にする場所をアンジェに選定してもらう。

農地をどんどん広げるぞ!


まずは荒れ地を建設スキルで平らに整地する、次に農業スキルで整地した荒地を豊穣の農地に変更していく。

農地をどんどん増やしていけば、ゼピュロス国の人口が1万人ぐらいになっても、国民は食べることには困らないな!



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