第30話 獣人国2

ゼピュロス国に戻る途中でエルフ王に会い、獣人国の状況を説明する。

そして、獣人国への食料支援もお願いしておく。


2日後、ゼピュロス国の野菜や果物とエルフ国からの支援食料を持って、再び獣人国に向かう。

本当に、あっちに、こっちにと、移動ばかりしているな!

レッドに申し訳ない!


王も王妃も将軍たちもすっかり元気になっていた。

やはりスーパーエリクサーの効果はすごい。


ゼピュロス国から持ってきた野菜や果物と、エルフ国に用意してもらった大量の支援食料を、マジックバックから取り出す。

支援食料の山が出来上がると、王を含め全員が驚いている。


「フウタ様! 食料をありがとうございます。さっそく国民に配給させていただきます。これで国民も一息つけると思います。ところで私と王妃とエメットをエルフ国に連れて行ってもらえませんか? 留守は2人の将軍に任せようと思います」


「元気になられたのですね。良かったです」


「エルフ国には、連合国から取り戻した獣人達が3000人もいます。奴隷から解放されたものの、引き続き苦労しています。その方たちをどうするのか? エルフ国との関係をどうするのか? 対連合軍に向けての対策をどうするのか? いろいろ打ち合わせすることが多いですね!」


「それに、連合国で苦労した獣人達3000人を励ましてあげる必要があるでしょう。今から行きますか!」


「お願いします!」

「では皆でレッドの背に乗って下さい。落ちないようしっかり掴まって下さいね」


エッドが高速で移動してくれたので、エルフ国には直ぐに到着する。

王妃はさっそく、連合国から戻ってきた獣人たちのところに向かっている。彼らに国の状況を説明し、安心してもらうためだ。獣人王とエメットは、エルフ王や側近たちと、今後の打ち合わせをすることになる。


3人それぞれに忙しいだろうな。


俺とレッドは1週間後にエルフ国に戻ってくると伝えて、ゼピュロス国に戻ることにした。

何か俺、すごく忙しい気がする……俺もレッドも休養が必要だ……

最低1週間は、ゆっくりとさせてもらいたい。


……ゼピュロス国に戻る……


王宮の海の見渡せる部屋で、アンジェやレッドと共にゆっくり過ごさせてもらっている。

海風が気持ちいい。


魔法植物に実った果物は実に美味しい。

海を眺めながら楽しい食事だ。

連合国やエルフ国、獣人国のことは、しばし忘れさせてもらおう。


「レッド! 永遠の命を持つドラゴンはこの世界をどう見ている!」


「悪の勢力が強ければ、影の中で密かに善の勢力が育つ、やがて力を蓄えた善の勢力が悪を滅ぼす。逆に善の勢力が強くても、光の中で密かに悪の勢力が育つ、やがて力を蓄えた悪の勢力が善を滅ぼす」


「長い歴史の流れの中で、この繰り返しが何度も繰り返される。何度かそれを見ていると、やがて興味がなくなるのだ、また同じことをやっていると……」


「この世に暮らす者の心のなかに、住み着いている悪と善の心が、それをさせるのだろうな!」

「どうすれば、ずっと善の勢力を保ち続けられるのかな!」


「難しいと思うぞ! フウタが永遠の命を持ち、善の勢力が永遠に続くようサポートし続ければ、可能かもしれないな。しかしそれはそれで大変な仕事だと思う。なぜならこの世に暮らす者は、管理され続けることを嫌うからな」


「人の心は難しいね! 俺の命は永遠ではないから、善の勢力が永遠に続くようサポートし続けるのは無理だと思う。だけど命ある限りは、善の勢力が続くようサポートし続けようと思う」


「しかし善であり続けるように監視され、管理されることは、民にとって息苦しく感じるだろうね。自由にさせてくれとね! 難し問題だね。その辺は神様の仕事だろうな」


「フウタはそれでいいと思う。思うように行動すればいい」2人が頷いてくれている。

そんな話をしながら、久々にのんびりと過ごすことができた。


……エルフ国に向かう……


1週間後に、エルフ国に行くと獣人王との話し合いが終わっていた。


エルフ国と獣人国は、正式に同盟を結ぶ。

これで獣人国とエルフ国、魔王国、ゼピュロス国は同盟を結んだことになる。

どの国も人族を信用しておらず、来たるべく人族の侵略に備える準備を整えておくことが、暗黙の了解となっている。


エルフ国王は、連合国からの賠償金の半分である金貨500万枚を、復興に使ってほしいと獣人国王に渡す。

また捕虜交換で解放された獣人3000人は、獣人国の復興がもう少し進み、受け入れ体制が整うまでエルフ国で預かることになる。

そして、エルフ国が鹵獲した連合軍の船の半分近くを獣人国に譲渡することも決まる。


エルフ国王と獣人国王から、改めて今までのことを感謝される。

王女と王子の救出や連合軍の撃退、連合国に奴隷にされていたエルフと獣人の解放、獣人国の奪還といろいろあったからね。


獣人国王に申し出た。

「俺は、建設スキルを持っています。エルフ国の復興にも協力しましたので、獣人国の復興にも協力させて下さい!」


「それは、大変ありがたい。獣人国の建物はどれもボロボロ状態なのだ。本当に助かります。国民の住むところが確保できれば、エルフ国で預かっていただく獣人3000人を早く国に戻ってもらうこともできそうです!」


獣人国王と王妃、エメットと俺はレッドに乗って獣人国に移動する。


獣人国に到着早々、戦争で壊される前の状態をエメットに確認しながら、建設スキルで王宮も民の住宅も道路もどんどん修復する。

どんどん元通りの街並みが復旧していく。

獣人国の城壁もエルフ国と同様に20mの高さに増築しておく。


建物が修復されると、民の顔が少しずつ明るくなってくる。

子供が公園で楽しそうに遊ぶ姿を見ると、建設スキルを有効活用できたことがうれしくなる。


さあ、どんどん修復していくぞ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る