第28話 ゼピュロス国3
レッドの背に乗り、アンジェとともにエルフ国に飛ぶ。
もう飛行にも慣れただろうということで、レッドが飛行速度をさらにスピードアップしている。
お陰でエルフ国には直ぐに到着だ。
距離は離れているのだが、直ぐ近くに住んでいるような気になる。
上空から眺めると、壊された建物の再建はあんまり進んでいないようだ。
人も物資も足らないからしかたないか。
エルフ王にマジックバッグに入れてきた大量の野菜や果物を渡し、王都の再建状況を聞いてみる。
やはりあまり進んでいないようだ。
王に魔石を持ってきたと伝えると「本当に持ってきたのか」と驚かれる!
「怪我などしておらぬか? 無理はしないでくれよ」
「この通り、ピンピンしています」
エルフ王が魔道具を作らせているエルフの職人を呼んでくれる。
マジックバッグから100個の魔石を職人に渡した。
職人も魔石の量に驚いていたが、グルニヴスの森の魔物をレッドに退治してもらったということにしておいた。
魔道具は3日待てば完成するそうだ。
3日の間、アンジェに修復イメージを聞きながら、まずは王宮の補修をしていく。
周りにいるエルフたちが、俺の建設スキルに驚いている。
建設スキルは、神様っぽいスキルだからね!
ゼピュロス村ではオーバースペックスキルだったが、ここでは丁度いい感じだ。
王宮の補修がどんどん進んでいく。
続いて王都を囲む城壁の補修だ。この際、城壁の高さを20mに変更しておいた。
側防塔も追加しておいたし、これだけ城壁が高ければ、簡単に攻め落とされることはないだろう。
その後は、壊された街の主要な建物を次々修復していく。
もちろん教会もね。
エルフ王が感激して、エルフに伝わる伝説の宝物を渡すという話になったのだが、あまり貴重な物を渡されても、大事に保管するだけで疲れそうなので丁重にお断りしておいた。
3日が経ち、王宮に魔道具を持って職人がやって来る。
この魔道具をエルフ国の防衛に使ってもらいたいことを説明したら、またまた感激される。
取り敢えず試してみないことにはその威力がわからないので、海岸に王や騎士団たちと移動し、エルフ国最強の魔法騎士に試してもらうことになった。
連合軍から鹵獲した船の中で傷みが激しい船を、海岸から200歩ぐらい離して浮かべてもらう。
エルフ最強の魔法騎士に、ミニ大砲の形をした魔道具を両手で掴んでもらい、船に向かい火球を撃ってもらう。火球の威力は強力で200歩ぐらい離れた船が爆発する。
「火球砲の威力はすごいですね。しかし敵からも同じものを放たれたらどうなるのでしょうか? もっと魔石を集めれば、もっと遠くから船を撃っても同じ威力が出ますか?」
「そうなると思います」と、職人が答える。
「エルフ王! グルニヴスの森で目一杯魔石を集めてきましたが、同じように魔石集めを連合軍がやったとして、魔石100個は簡単に集められるものですか?」
「魔石100個は連合軍も苦労すると思うぞ!」
「そうなると、今度は魔法騎士が持っている魔力量の多さの勝負になりますが、エルフ国最強の魔法騎士の魔力量を超えるような魔法騎士は、人族にいるでしょうか?」
「今回の戦闘にきていた連合軍の魔法騎士が奴らの最強の魔法騎士なら、エルフ国最強の魔法騎士には数段劣ると思います」と、将軍の1人が説明してくれる。
「ではゼピュロス村で、できるだけ魔石をストックしておくようにします」
「あまり無理はしないでほしい。フウタ殿はエルフ国の恩人でもあり、我が息子でもあるのだ!」
「安心して下さい。無理のない程度にストックしておきます」
「ところで、奴隷の解放と捕虜交換や獣人国の解放、戦後交渉については、どの程度進んでいるでしょうか?」
「奴隷にされていたエルフ3000人と獣人3000人との捕虜の交換には既に成功している。しかし此処から先は少し時間がかかるかもしれないな。殺されてしまったものも相当数いるだろう」
「獣人国からの連合軍退去も進んでいる。しかし退去完了後に、獣人国を再建するのは大仕事だな。エルフ国もこんな状態だが、獣人国に協力できることはなんでも協力するつもりだ。エメット君も苦労すると思うが頑張ってほしいものだ」
やっぱりエルフ王は良い人だな。
「賠償金は金貨1000万枚をもらうことになっている。獣人国の再建も大変苦労するだろうから、エメット君には、その半分の量の金貨を渡すつもりにしている」
「条約関係については、永続的な不可侵条約を締結できそうだ。もちろん永続的な不可侵条約など信用してはいない。現在残っている捕虜は10000人だ。しかし少し多めに帰国させている。管理が大変なのだ! この後どうするかは、様子を見ながら検討する」
「そうですか、それは良かったです! ところでゼピュロス村は100人弱しか住民がいません。ゼピュロス村を整備したので、ゼピュロス村に住んでもいいという人たちに、移住してもらえればありがたいのですが? とりあえず300人ぐらい来てくれるとうれしいです」
「それはエルフ国としても大変助かる。獣人国が解放されても、獣人国が安定した国家運営ができるようになるまでは、エルフ国はエルフと獣人が混在する国になるだろう。とはいえ、着の身着のままで戻って来る民が、6000人も増えるのはなかなか苦しい。300人といわず1000人ぐらい連れて行ってもらえれば大変助かるよ」
「アンジェ! 人口が1000人を超えると街を管理運営できる者がいないとダメなのではないのか? 大丈夫なのかな? 俺は街の運営については良く分からないのだが!」
「父上! まずは300人を加えて計400人で街を運営してみます。それが軌道に乗れば、更に人数を増やしていきたいと思います」
「侍従長! 内政ができるものを2名ほど、ゼピュロス村に派遣できるか?」
「国王様、任せて下さい」
「アンジェから聞いたぞ。ゼピュロス村では城も建設したそうではないか。それなら今後は、村ではなくゼピュロス国と名乗ってはどうだ」
「エルフ国の兄弟国ということでいいでしょうか?」
「婿殿! うれしい事を言ってくれるな。そういう事にしよう! そうだ宝物庫に王冠があったと思う。持って行くといいぞ」
「ありがとうございます。では300人を船でゼピュロス国に運んでいただけないでしょうか? できればエルフと獣人を半分ずつでお願いします。それと先程お願いしました内政ができる方も2名お願いします」
「ところで獣人国を見に行くことはできますか。エメットと共になるべく早く行きたいと思います」
「連合軍が撤退完了したので、獣人国に行くことは可能な状態になっている。獣人国の監視にパトリックが行っている。現地で彼に聞けば獣人国の状況が詳しく分かると思う」
「エメットを連れて、近日中に獣人国に行ってきます」
「忙しくさせて悪いな。獣人国の面倒もみてあげてほしい」
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