第27話 ゼピュロス国2

あれ……女神様からの通信が切れた……

天上界から、俺にコミュニケーションをとるのは、神の力でも大変なのかもしれないな。


「レッド! 俺はいま女神様と話をしていたのだが、その間俺はどういう状態だった?」


「女神と直接話ができるとはすごいな! ドラゴン族でもそんなことができる者はいないぞ。やはりフウタは特別なのだな。さっきの話だが、私には外の景色を見ているとしか見えなかった。それも一瞬だったぞ」


「そうか……女神様とは数分は話していた気がするのだが、現実世界では一瞬の出来事なのだな。女神であっても、この世界の者と会話をするのは、膨大なエネルギーが必要なのかもしれないな。ところで俺は女神様から、建設スキルをもらったのだ! 試してみたい」


「それは楽しみだな。それにしても建設スキルという名のスキルは始めて聞いたぞ。面白いスキルをもらったものだ」


「ゼピュロス村を発展させるために、港や道路や城壁、城などを作ったりできるスキルを、女神様にお願いしたのだよ」


フウタのやつは気楽に言っているが、前回は大精霊から飛行スキルを、今回は女神から建設スキルをもらったという! 


この世界に転生したとか言っていたが、神様たちがフウタに随分と相当肩入れしているのが分かる。

それがどういう理由によるのか分からないが、ますます面白くなってきたじゃないか!


翌朝、レッドとアンジェ、エメットとともに、建設が一通り終わっている村に移動する。

村の住民たちを集め「昨日女神様から貰った建設スキルで、試しに壁を作ってみることにする」と伝えた。


『女神様から』というフレーズで、皆が固まっている。


「フウタ様は、神の使いなのですか? 先日は大精霊様とお話されていましたよね」と、アンジェが驚いている。


「大精霊様とは1回だけだし、女神様とは2回しか話をしていないよ。でも女神様からは、困ったことがあれば、いつでも呼んで下さいと言われているよ」


村人全員が『なんですか……それ……』という顔をしている。


そうかもしれない……

冷静に考えてみれば、普通の人が女神様とか大精霊様とかと話をすることなどだけありえないかもな。


もしそういう機会があれば、それを奇跡というはずだな。

とはいうものの、なぜ俺が神様たちと話ができるのか……良く分からないな。


建設が終わっている村が南東寄りになるように、1辺が1kmの四角形の形状で、幅3m高さ10mの壁をイメージして『石の城壁』と念じてみた。


イメージ通りの石でできた城壁がどんどん出現する。


すごいな、建設スキル!

人間がこんなスキルを持っていいのかな? 

神様が行う天地創造とくらべればショボイが、ミニミニ天地創造をやり遂げた感がある。


南の海側に建設した城壁中央部に移動する。

城壁に鉄製の分厚い城門をイメージしながら城門を建設する。

北側の城壁にも同じ城門を建設する。


続けて、南側の城門から北側の城門まで幅4mの石畳の道路を建設する。

なんかすごく立派な城壁が完成したな!


住民の数が少ないことを考えると、完全に分不相応だな。


「これはすごいスキルですね……というか神様以外の者が持って良いスキルなのでしょうか? フウタ様は特別……ということで疑問に思わないようにします!」と、アンジェとエメットが頻りに感心している。


だんだんと俺は、人間離れしてきているのかもしれないな! 

神様がどんどんスキルをくれる訳だから、仕方ないよな……俺のせいじゃないぞ!


「こんな感じで建設してみたが、このスキルを使って建設した構造物は、後で形状や構造を変更したり、追加したりすることができるみたいだぞ」


「こういう構造物を建設してほしいというものが有れば、構造物の絵とか模型とかを作って渡してくれるとありがたい!」


「イメージできる見本があれば、建物でも道路でもなんでも建設することができる。たとえばアンジェやエメットが住んでいたような王宮も建設できると思う!」


城が建てられるなら、ひょっとして前世の近代的な高層ビルなんかも建設できてしまうのかな? 

なんと窓ガラスもできたのだよ!


魔法で上下するエレベータを開発すれば高層ビル街なんかも建設できたりしてね!

何か面白そうだ。


いろんな便利魔道具を開発すれば、近未来国家風の街も建設できるかもしれないな。

何か夢がある。


「次は海岸に移動しよう」


まずこの城門から海まで道を建設しよう。

俺はスキルを使って幅4mの石畳の道路を建設した。

その道を歩いて海まで移動すると、海に堤防を建設し、帆船が横付けできる桟橋を建設していく。


スキルで建設した城壁の内側に村がポツンとある感じだ。

建設した壁に対して村が小さくてアンバランスだな。


ここから先の建設は急ぐこともないよな。

何だか少し疲れてきたな。スキルの使い過ぎなのかな。


『こういう構造物を建設してほしいというものが有れば……』と伝えたことで、アンジェとエメットが大いに張り切っている。


壁や堤防がどんどん出来上がるのを見て、やる気に火が付いたようだ。

ジオラマ作りは楽しいもんな。


王宮や街の建物のイメージ図や模型を次々渡される。

渡された模型を頭にイメージして王宮を建設してみる。


村長は俺だけど、王はいないけどね。

やはり住民の数100人に比べてアンバランスだな。


街の住宅も、お試しで建設してみた。住民の数より随分多めに建設してしまった。

そのうち住民が増えれば、空き家も埋まるかもな。


王宮を建設したものの、マジックバックに入っていた快適な屋敷は捨てがたく、王宮の中庭を広く作り直して、そこに屋敷をセットすることにした。


見た目は、なんか変だけど、便利さ優先だよ。


王宮は海を見たい時に登って風景を眺めたり、打ち合わせに使ったりしているけどね。

要らないといえば要らないか……


贅沢なものを作っちゃったかな! 

無料だからいいことにしよう。


しかしアンジェやエメットは「立派な王宮です」と、褒めてくれる。


いずれにしても、街は住居も建設し、上下水道も完備、公園なんかも作った。

しかし住民は今のところ100人だし、王宮には俺とレッドとアンジェの3人しかいない。

何か広くて寂しいのでエメットにも住んでもらっている。


魔石が採れる木については、高さ5mの壁で囲った建物の中で栽培することにした。

やっぱりもう少し街の人口を増やしたいな……エルフ王に相談してみるかな。


「アンジェ! ここが終わったら、エルフ国の再建を手伝いに行こう。魔石を持って行くと約束した日も明日だしね」


「ありがとうございます」



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