第26話 ゼピュロス国1

ゼピュロス村に戻った。

ペアマジックバックがやはり気になる。


「王妃にゼピュロス村に戻ったことを、アンジェから手紙で知らせてみてくれないか。ペアマジックバックが使えるかどうかを確認しようよ!」


アンジェが手紙を書いて、ペアマジックバックに入れてみる。

ペアマジックバックが光りだした。

ペアマジックバックの中身を確認すると手紙がなくなっている。


しばらくして、ペアマジックバックが再び光りだした。

ペアマジックバックの中身を確認すると手紙が入っている。

確認してもらうと王妃からの手紙が入っていた。


「これはいいな! ペアマジックバックに手紙以外なら、どの程度のものまで入れられるのか、折を見て確認しておいてくれないか!」


「エメット! 獣人国が取り返せるといいな!」

「フウタ様のお陰です!」


本当にすべてフウタ様のお陰だ。

この人はすごい! 


あの劣勢のエルフ国を逆転勝利させてしまった。

連合軍を追い払うだけなら。

レッドドラゴン様にお願いして連合軍を追い払えたかもしれない。


しかしそれでは、連合軍に連れて行かれたエルフ国の国民を取り返すことが出来ない。

もちろん獣人国もだ!


最適な作戦として、連合軍を大量に捕虜にする作戦を考えられたに違いない。

見事な作戦だ!


その作戦のお陰で、奴隷にされた獣人たちを取り返し、獣人国を取り返せる可能性まで出てきた。

夢のようだ!


父上や母上が生きていてくれれば、さぞかし喜んでくれただろう!

この恩をフウタ様にお返ししたいのだが、私は無力だ……それが残念でしかたない。


……俺は、エルフ国で精霊教会が破壊されているのを見て心配になった……

精霊教会というのはエルフたちの心の拠り所のはずだ。

そんな場所が当然のように破壊されていた。


獣人国の中はどれだけ破壊され、国民たちはどういう扱いを受けているのだろうか?


「とにかく獣人国が取り返せたら、直ぐに行って国の状況を確認しないといけないな! 俺はエルフ国の教会が壊されたのを見て心配になった! ここまでするのかと! エメット! 獣人たちの心が折れないように一緒に頑張ろうな!」


「ありがとうございます」

思わず涙が出てしまった。


私が頑張らないでどうする! 

『私は無力だ』とか考えている自分が恥ずかしい。


「エルフ国も獣人国も連合国からの防衛を考えると、遠くから船を沈めることができる兵器を保有する必要がある。その兵器は魔石を集めればエルフ国で作れることが分かった。そして魔石はゼピュロス村で生産できる」


「しかし、エルフ国がその兵器を使えば、連合軍はその武器の有効性に気付き、自分たちでも作ろうとするだろう。集めた魔石の量が多ければ多いほど、兵器の威力が増すということも当然分かるだろう。そうなると魔石をたくさん集めようとするだろうな」


「魔石はグルニヴスの森の魔物から取ったことにしないといけません。魔石が実る木から、魔石が採れることは絶対秘密にしないといけませんね」と、エメットが心配そうにしている。


「魔石にしてもエリクサーにしても、フウタ様が所有する魔法の種は大変価値の高いものです。ゼピュロス村は今後発展していくと思いますよ。現状では、どこかの国から侵略される可能性は低いと思いますが、将来的には、ゼピュロス村を城壁で街を囲ったりする必要があるでしょうね」と、アンジェが村の将来について提案してくれる。


「今後、住人が増えていくに連れて、村から街、街から国に発展していくことになるでしょう。であれば、港の整備とか道路作りとか。将来を見据えた街作りを計画しておく必要がありますね」と、エメットも提案してくれる。


「街作りは、王子と王女の経験を頼りにさせてもらうよ。よろしく頼む! ところでゼピュロス村は、男が2人しかいないよな! 今後のことを考えると、どこからか婿探しをしてくる必要がないかな?」


「エルフ族は、フウタ様に全員の面倒を見てもらってもいいですよ! 

獣人族はエメットさんが全員の面倒を見ればいいのではないですか?」と、アンジェが当たり前のようにいう。

この世界では、一夫で多妻とか普通なのかな?


「俺はそんなにたくさんの嫁は無理だぞ! エメットはどうなのだ?」

「無理! 無理ですよ!」


「そうなると、今後の捕虜交換でエルフ国に戻ってくるエルフや獣人たちから、婿を探すということになるのかな?」


「残念ながら戻ってくるエルフや獣人たちに、男はほとんどいないと思います。女を守るために戦死しているはずですから」


「そうか……難しそうだな! 取り敢えずこの話は先送りにしていいかな……」


「魔石製造の秘匿については、エルフ族にはアンジェから、獣人族にはエメットから村人に事情を説明しておいてほしい」


さて、村をどう開発していこうかな?

小屋の中から外の様子を見ながら考え始めた。

その時、頭の中に女神様の声が響き始める。


あれ……俺は今どういう状態……立ったままトランス状態なのかな。

怖いぞ! そういうの。


そんな事を考えていると女神様の声が、言葉として頭に直接響いてくるようになってくる。

前回は幽体離脱して、俺が女神のところに移動したような気がするが、今回は天上界からの念話通信なのかな。


「あなたのことはいつも見ていますよ。エルフ国を救ってくれたこと、獣人国の返還、奴隷の解放と、いろいろありがとう。良くやってくれましたね」


「あまりこの世界に干渉してはいけないと思いましたが、エルフや獣人たちを何とか助けたいという気持ちで行動しました。その結果、人族も多く死にました。そのことは大変申し訳ありません! もっと上手くやる方法があったのではないかと思います」


「あなたはもうこの世界の住人です。この世界に干渉とか気にする必要はありません。思ったことをどんどん行動に移して下さい。そうだ、エルフや獣人たちを救ってくれたお礼に、私からあなたに何かスキルをプレゼントしたいと思います!」


「ゼピュロス村を発展させるために、港や道路、城壁、城などを作ったりできるスキルがあれば助かります」


「それなら『建設スキル』ですね。建設するイメージを頭に描いて『城』とか『壁』とか『港』とか念じれば建設することができますよ。建設スキルをあなたに授けましたから、後で試してみて下さい。あなたのことはいつも見ていますよ。困ったことがあれば、私に話しかけて下さい。では頑張ってください」



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