第19話 魔王国1
俺の屋敷にレッド、アンジェ、エメットのいつものメンバーに集まってもらっている。女神様にもらった地図を広げながら、この世界の概要を勉強中だ。
まずレッドがレクチャーしてくれる。
「ゴザリア国の南に、魔物が多く住むグルニヴスの大森林地帯がある。グルニヴスの大森林と海に挟まれた荒地がこのゼピュロス村になる」
「魔物がたくさんいる広大なグルニヴスの大森林地帯があるため、ゴザリア国がここに攻め込んでくることはまずないと思う。危険を犯してまで、ここにやってくる理由がないからな」
「ただし魔植物やエリクサーのことが、奴らに知られたら別だぞ。強欲なゴザリア国だ、間違いなくここに攻め込むだろう」
「その場合、奴らは船団を組んで海側から攻めてくるだろう。しかしゼピュロス村と海を挟んだ対岸には魔王国ケギシスがある。船団を組んで航行すれば、魔王国が自国の危機と判断し船団を攻撃するはずだ」
「ドラゴン族が住むドラゴンヒルは、グルニヴスの大森林地帯とゴザリア国の境目のこのあたりになるぞ」
「なるほど、ゼピュロス村は中々に良い場所にあるな。女神様はいい場所を選んでくれたみたいだ。海側から攻めてくる可能性があるのなら、ゼピュロス村は魔王国と仲良くしないとダメだな」
「次は私に説明させて下さい。私の国はこのエルフ国、王都ブランセンはここです。この世界に人族の国は3つ存在しています。この3国は国民の事を顧みない軍事国家、本当に碌でもない国王が統治しています」
「ゴザリア国は御存知の通りです。ユニマ国とエーデリア国は連合軍を作って、現在エルフ国に攻め込んでいます。目的はエルフ国の財産を奪い、エルフを奴隷にすることです。2つの強国に攻められて、エルフ国は陥落しそうになっています」
「実は私は、エルフ国の王女なのです。私の父であるエルフ王が、陥落しそうなエルフ国からゴザリア国に逃がしてくれたのです」
「ゼピュロス村に住んでいるエルフは、私の侍女たちと護衛をしてくれた兵士の家族になります。隠れて暮らしていた村がゴザリア軍の攻撃を受けた時、エルフ国脱出からずっと私たちを守ってくれていた兵士たちは、全員殺されてしまいました」
本当に人族の国は碌でもないのばかりだな……どうなっているのだ……
人族として恥ずかしい!
「次は私が説明します。私の国はこの獣人国です。王都はメルクトックになります。獣人国はエルフ国よりも北にあるため。エルフ国よりも先に、ユニマ国とエーデリア国の連合軍から攻撃を受けました。2強国に攻められて獣人国は陥落しました」
「獣人国の国民は奴隷として国外に連れ出され、国内に残っている者も農場で強制労働をさせられています。私も、実は獣人国の王子なのです。父である獣人王も王妃も、既に殺されているはずです。私もアンジェさんと同じく、侍女たちや護衛の兵士とその家族とともに、獣人国からゴザリア国に逃がしてもらっていました」
「私たちが隠れていた村も、エルフたちと同じです。いきなりゴザリア軍に攻め込まれ、護衛の兵士は全て殺されました。私は獣人国で高い地位にあったと判断され、お金になるかもしれないという理由で殺されませんでした」
「捕らえられた後は、ゴザリア国の宮殿の牢に閉じ込められていました。私たちが奴隷として売られる寸前に、フウタ様とレッドドラゴン様に助けていただいたという訳です」
「獣人国が占領され、次にエルフ国が攻め込まれているとなると、その次にターゲットとなるのは魔王国だな。レッド! 魔王国に知り合いはいないか?」
「魔王国の王族とは付き合いがある」
「ゼピュロス村は現時点では安全だ。しかし連合国がエルフ国を降し、魔王国にまで攻め込むことになれば、ここも危なくなるだろう。レッド! 魔王国の王族に挨拶をしておきたい。魔王国とは仲良くしておく必要がある」
「そしてエルフ国だが、アンジェの夫として何もしない訳にはいかない。最悪でも、生き残っているエルフたちは救いたいと思う。魔王国の王に、エルフ国への援助を相談できないかな! エルフ国を救い、連合軍との戦争を、エルフ国と魔王軍とで共闘した方がいいと思うのだが!」
「いきなり初対面のフウタが、そこまで話すのはどうかと思うぞ。今回は挨拶だけでいいと思う」
「それもそうだな! まずは、この4人で魔王国に挨拶に行こう。お土産は何が喜ばれるかな?」
「新鮮な野菜に果物がいいと思う。ここの野菜と果物は絶品なのだぞ」
「アンジェとエメット、レッドに聞きながらお土産を用意してほしい。3日後に出発しよう」
……3日が経った……
俺たちはレッドの背に乗せてもらい、魔王国の首都ケギシスに向かって飛行している。
お土産はゼピュロス村の野菜と果物を5箱だ。全てマジックバッグに収納済みだ。
レッドの背には何回か乗せてもらっているので、俺は飛行に慣れてきた。しかしアンジェやエメットはまだ少し緊張ぎみのようだ。
アンジェは王女、エメットは王子なので、デラザで購入した小綺麗な服を着てもらっている。俺もそれなりの服装にしている。
魔王国首都の王城が見え始めた。大きな城だ!
人族の城とはデザインが若干違うかな。
王城を囲う外壁も高さが10mぐらいはありそうだ。
王宮の城壁にある大きな門の前に着地する。
魔王国の兵士たちが大勢近寄ってくる。
顔つきは人族と同じだが額に短い角が生えているのが特徴のようだ。
皮膚の色は、人族よりやや青い。
「これはレッドドラゴン様! 本日はどういったご要件で?」と、兵士を率いる隊長が聞いてくる。
レッドが話し易いように、人の姿に変化する。
「ゼピュロス村の村長が、魔王国のティツィアーノ王を表敬訪問したいというので連れてきたのだ」
「そうでしたか。さあどうぞこちらでお待ち下さい」
兵士たちの視線が美人のレッドに集まるかと思ったのだが、隊長は何とか耐えているものの、その他の兵たちは漏れ出るドラゴンオーラで動けなくなってしまっている。
大きな門を潜ったところに設けられた待合室的な部屋に4人で入る。
立派なソファーが置いてあるきちんとした部屋だ。
隊長が持ってきてくれた紅茶を飲みながら待っていると、魔王国の王女ミシェルが馬車で迎えにきてくれた。
ミシェルさんも、少し青みがかった顔だが美人だ。
かなり気が強そうな性格に感じる。
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