第18話 女神様に会えた

「女神様! 一度でいいので、お話をさせて下さい。頂いたアイテムについて確認させてもらえないでしょうか? 今のままでは、いただいたアイテムを活かしきれません。どうかお願いします」


幽体離脱というか、俺の意識だけが体からスポンと抜けた気がする。


目の前に女神様がいる。強烈なオーラだが、慈愛に満ちたオーラが心地良い。

「女神様! やっと会えました。さっそくですが頂いたアイテムについて確認させて下さい」


「そなたには、済まないことをしたと思っていました。渡したアイテムの説明を忘れていましたね。すぐに呼び出して説明をしようと思ったのですが、ドラゴンと話しながらアイテムを使い始めていたので、しばらく様子をみようと思ったのです」


『俺は荒野で1人、置かれた状況に絶望し、餓死を覚悟したのだよ!』と、荒地に転生したばかりのころを思い出した。


「本当に済まない。お詫びにそなたの要望を1つだけ叶えましょう」

心の声が……聞こえているの?……


「……それでは『剣聖スキル』をいただけないでしょうか。現状の俺の力では、強い敵から村人を守ることができません」


「では、そなたに剣聖スキルを与えよう。ところで、エルフ族や獣人族を救ってくれてありがとう。良くやってくれた!」


「見て見ぬふりができなかっただけです。俺には力がありませんから、全てレッドドラゴンの力に頼りました。ぜひ、レッドドラゴンを褒めてあげて下さい。よろしくお願いします」


「ところで、元勇者はエクスカリバーを用いて、空間を切り裂けたそうです。剣聖スキルをいただければ、私にも同じようなことができるようになりますか?」


「その前に、そなたが万能棒と呼んでいるものについて説明しておこう。使い方はもう既に使っているから分かっていると思うが、変化してほしいものをイメージして、たとえばナイフになれと念じれば、念じたものに変形します」


「万能棒は念じれば何にでも変形できるのでしょうか? 例えば船になれと念じると船にもなるのでしょうか? さすがにそれは無理でしょうね!」


「万能棒は神器じんぎです。神が使うべき道具だと思って下さい。ちなみに万能棒を変化させると、万能棒から強烈な放出エネルギーを持ち手が受けることになります。そなた以外の者がこれを使おうと思っても、そのエネルギーに耐えられないでしょう」


「話を戻すと、船なら人が20人ぐらい乗れる大きさの帆船に変形できます。ただしメカニカルな機構で動くものに限ります。あなたも知っている電気回路とかコンピュータとかを搭載する物には変形できません。まあいろいろ試してみるといいでしょう」


「たとえば、俺の記憶に残っている前世の兵器、グレネードランチャーとかに変形させられますか?」

「グレネードランチャーにも、ライフルにも変形させることが可能です」


「それで最初の話だが、神器である万能棒を剣に変形させた時は、エクスカリバー以上の剣になります。つまり空間なんか簡単に切り裂けるということです」


「空間を切り裂くとは、この世界と異世界の境目の壁に傷をつけることを意味します。つまり、敵を異世界に飛ばしてしまうことも可能なのです」


「すごい神器なのですね。ありがとうございます。グレネードランチャーみたいな武器に変形させる場合の質問ですが、万能棒がグレネードランチャーになった時に、使用する弾丸はどうなるのでしょうか?」


「それとマジックバックについても教えて下さい。あの中に入っているものを確認することはできるのでしょうか? あの中に入れていただいている物、たとえば水とか金貨とか……どれくらい使えば無くなるのでしょうか?」


「グレネードランチャーの弾丸は無限に自動補給されます。弾丸はそなたがイメージするものが装填されます。次にマジックバックについてですが『マジックバックリスト』と念じれば、マジックバックに収納されているもののリストや数があなたの頭に浮かんできます」


「私が最初からマジックバックに収納しておいたものは、そなたがどれだけ使っても、なくなることはありません。またマジックバックの収納力ですが、相当大きな物まで無限に収納することができます。ただし生き物を収納することはできません」


「では最後に、種が入った袋のことです。どの種が何の種なのかを知る方法があるのでしょうか?」


「『種リスト』と念じれば、入っている種の名前リストと数があなたの頭に浮かんできます。また種はなくなると自動的に補充されます」


「他に聞いておきたいことがありますか?」

「この世界がどうなっているのかを知ることができる地図はないでしょうか?」


「大まかのものだが、これをそなたに渡そう」


大きな地図を渡された。

羊皮紙に地図が描いてあるが、リアルな地図ではなく宝探しの地図のようなものだ。


地図の北側に描かれている一番大きな領土を持つ国のところには、ユニマ国という名前が記載されている。

ユニマ国の下には2つの国の領土が描かれていて、東側の国がエーデリア国、西側の国がゴザリア国と国名が記載されている。


エーデリア国とゴザリア国の間には海がある。

その海には3つの大きな島国があり、獣人国やエルフ国、魔王国と国名が記載されている。


地図で見ると全体の位置関係がよく分かる。


「地図に描かれている以外の国はないのですか?」

「その地図に描かれている以外の国はない。我ら神は、それぞれの国の民が争うことなく、平和に暮らしてくれることを願っているのです」


「これからも、そなたが困った時には、私を呼ぶがいいぞ。天上界からそなたを見ているから、いつでも相談に乗りますよ」


「最後に教えて下さい。人間とドラゴンは結婚してもいいのですか?」

「問題ないぞ。望むなら子ができるようにしてやろうか? その気になった私を呼ぶがいいぞ!」


「ありがとうございました」


女神様の気配が消えていく。

いや俺の魂というか、幽体が自分の体に戻り始めたのかな!

神様はなんでもできでしまうのだな……だから神様なのか……


さっそく『マジックバックリスト』と念じてみる。

頭の中に、すごい数のリストが浮かんできた。

特定のリストに思考を集中すると、リストに書かれた文字が大きく表示される。


リストを読んでいくと、水とか金貨とかいっぱい書いてある。

食べ物類、酒類、肉もあるじゃないか。


つまりどんな環境でも、快適に生活できるためのもの一式を、俺に持たせてくれていたということか! 

女神様ありがとう。


そうだ医薬関係はどうなのだろう。病気や怪我をすることもあるからな。


エリクサーは入っているのかな? 

順番にリスト見ていくとスーパーエリクサーというのと、エリクサーというのが表示される。


『スーパーエリクサーとエリクサー』と念じると、スーパーエリクサーとエリクサーらしき小瓶が1個ずつ出てくる。

見るからに高そうな小瓶に入っている方がスーパーエリクサーだと思う。


のんびりと幸せに暮らせるという願いに対して、女神様は願いを叶えて下さっていたのだな。

転生詐欺とか思ったりして、本当にごめんなさい。


食事は、食堂に全員が集まって食べるようにしている。まだ人数も少ないしね。

夕食の時に、食堂に集まった全員に聞いてみる。


「この中で怪我とか病気のものはいないだろうか?」


俺の唐突の質問に誰も答えない。


「一体どうされたのです?」と、アンジェが聞いてくる。

「女神様にエリクサーを頂いたのだ。効果を試してみたくてね」


「フウタ様は、女神様とお話ができるのですか?」

「さっき話していたよ」


「やはりフウタ様は神の使いでしたか……」

「いや、俺は普通の人間だと思うよ!」


「先程のエリクサーの話ですが。程度の違いはありますが、試してみたい者は多いです。中でも特に試してほしい者は、ゴザリア軍と戦って腕を失った獣人と、目に傷を負ったエルフの2名です」


「今まで、慌ただしくて気付かないで済まなかった。まずは酷い状態の人からこちらに来てほしい。レッドとアンジェもこっちに来てくれないか?」


腕を失った獣人と、傷を負って片目を失明したエルフとレッド、アンジェがこちらにやってくる。


「これはスーパーエリクサーだ。アンジェ、どう使えばいいのだろう?」


「最高級のエリクサーということですね。こんな物は見るのは始めてです。エリクサーの使い方は、病気の人は飲めばいいし、怪我なら患部に垂らせばいいと聞いています」


「では、これを使ってみてくれないか!」


アンジェが、片目が見えなくなったエルフの目にエリクサーを少し垂らす。

傷ついた目がどんどん再生していく。


次に切断された獣人の腕にエリクサーを垂らす。

腕がどんどん再生されていく。


スーパーエリクサーというのは神薬なのだな。

やはり、この世界の魔法文明はすごいな!


「フウタ様! ありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか。彼女はエルフの村がゴザリア軍に襲われた時に、私を庇って目を切られてしまったのです。彼女を見る度に、申し訳ない気持ちで一杯でした!」


腕を失った獣人も、村を守る戦いで腕を失ったそうだ。

獣人とエルフたち全員が涙を流して感謝している。


「スーパーエリクサーは女神様に頂いたものだ、感謝は女神様にしてほしい。それにしてもスーパーエリクサーの効果はすごいな。ひょっとすると死んだ人も蘇ったりするのかな?」


「残念ながら、死んでしまったものには効かない」と、レッドが答える。


「次はこっちの普通のエリクサーだが。希望するものはいるか?」


何人かの手が上がる。


「エリクサーを5本ほど、渡しておくから、アンジェとエメットで優先順位を決めて使ってみてくれ。足らなければ後で追加する、気にせずどんどん使ってみてほしい」


この世界は機械文明の代わりに、魔法文明というべきものが発達している。

魔法文明をきちんと発展させていけば、この世界の人たち皆が、文明の進化の恩恵を受けながら幸せに暮らしていけると思う。


それだけで十分ではないのか?

なぜ争いを起こす必要があるのだろう!




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