第17話 魔法を使いたい

荒地で1人、絶望したところから始まって、ドラゴンやエルフ、獣人の仲間が増えて村長になった。

妻は2人もいるぞ!

出発点の境遇が悲惨だっただけに、とにかく幸せを感じる。


村長として、俺だけでなく村の住民も幸せを感じるように、ゼピュロス村を豊かにしていこう。


「アンジェ! 魔法について教えてほしい。日常生活で使う簡単な魔法にはどんなものがあるの?」

「生活魔法ですね! 火魔法による小さな火起こしとか、光魔法による照明、クリーン魔法による汚れの除去とかですね」


「俺も生活魔法を使えるかな?」

「フウタ様は使えないのですか!」


驚かれると落ち込むな!

「どうしたら使えるようになるのだろう?」


「フウタ! 生活魔法程度なら、使えるようにできるぞ」


レッドが俺のお腹に手を当てる。

体の中を、何かがグルグル回っている感じが分かる。

気の流れみたいなものなのかな?


何かが体をぐるぐる周り続けている。このぐるぐる周り続ける流れが止まらない。

体の中で周り続けて大丈夫なのかな? 


しかし気持ちがいいし、爽快な気分になってくる。


「体の中を、何かがグルグル周り続けているけど。これはどうしたらいいのだろうか? このままでいいのかな?」


「グルグル回る感じが分かるのであれば、生活魔法など簡単に使えるぞ。そうだ火魔法をやってみるか! グルグル回る流れを手の平から放出するイメージを持ってみることだ」


「イメージを定着できたら、次はそれに炎のイメージを追加する。両方のイメージは保ったままだぞ。そして炎と念じてみる。手の平から炎が出てくるはずだ」


「炎で手は火傷しないのかな?」

「大丈夫だ、もし熱くなれば消えろと念じればいいぞ」


俺は体の中のグルグルの流れが、手の平から放出するイメージを頭に定着させる。

手から流れが放出するイメージと、炎のイメージを両方とも保つ。

余計なことは考えない。集中だ。

そして炎と念じてみる。手の平から炎が出現する。


しかし『炎は熱い』、『熱いと火傷』という意識が、消そうとしても次々頭に浮かんでくる。

途端に炎が怖くなる。


恐怖に負けてしまう。

頭に描いた炎のイメージが消えてしまう。炎が消える。


魔法を使うには、恐怖の感情を消し去らないといけないみたいだな。

その後、何回か頑張ってみたが、炎は付いてもすぐに消えてしまう。

手が燃えてしまうという恐怖心が勝ってしまうのだ。


「フウタ、初めてでそこまでできるなら。優秀な部類だぞ。慣れるまでは炎ではなく光がいいと思う」

「光で練習しておくよ。ありがとうレッド」


「ところでクリーン魔法だと、どういうイメージを持てばいいのかな?」

「流れを手から放出するイメージではなく、体全体を何かが包み、それが膨らむイメージを持てばいい。膨らんだものが体から拡散するイメージだ」


「両方とも練習しておくね。イメージか! 魔法は面白いな!」


俺も生活魔法なら使えるようになりそうだ。

どんどん便利になっていくな。


魔法文明、楽しい!


「アンジェ! 生活魔法というのは、この世界の者なら全員が使えるものなの?」


「頑張っても使えない人もいます。そういう人は魔石を購入し、魔石で自分の少ない魔力を増幅することで、生活魔法を使えるようになるようです。しかし魔石を購入するお金が必要になります」


「そうすると、魔石というものの需要は高そうだね。ところで魔石はどうやって手に入れるの?」

「魔石は名前の通り、討伐した魔物の体の中から取り出します。需要に比べて数が手に入らないので、大変高価なものになっています」


「ゴザリア国では冒険者ギルドが開店休業状態らしいから、なおさら魔石は入手困難だろうね」


俺としては魔石を手に入れるために、魔物を殺して取り出すというのがどうも嫌だ。

魔物だって生き物だからね。


「アンジェ! 魔石が植物の実のように成ってくれれば便利だよね。それなら魔物を無闇に殺さないで済む」


「そういう植物もあるそうです。魔植物と言われていますが、あくまでも噂レベルなので当てにはなりませんけど」


「そうなのか……女神様にもらった種袋に、魔植物の種が入っていたらいいけどな。アンジェ、どの種だか分からないかな?」

「私には分かりません。魔植物の匂いを嗅いだことがないですから」


「レッドだったら分かる?」

「種が発する魔力で何となく分かると思うぞ。多分これだ」


お〜、入っているのか……女神様ありがとう。


レッドが種を取り出したので、種をまいて水を掛けてみる。

魔植物の枝がニョキニョキ伸びていく。


やがて花というより毒々しい蕾ができる。

やがて毒々しい蕾の口が開く。

近づくとなんだか噛みつかれそうだ。


蕾が次々にできていく。

数が多いと、さすがに気味が悪いな……このまま魔植物が育ちすぎると危険な気がする。


万能棒を持って『ナイフになれ』と念じる。

ナイフで蕾を数個切り落としてみる。


地面に落ちた蕾はすぐに枯れてしまう。

中を見ると何か石のような物が入っている。

アンジェに確認してもらうと魔石だそうだ。


もう少し育つのを待てば、大きな魔石がとれるのかな? 

しかし魔植物をあまり大きく育てるのは、とんでもなく危険な気がするな!


「レッド! この魔植物は魔石が採取できて便利だけど、どんどん大きく成長すると危険じゃないかな? 巨大化した魔植物に、俺たちが食われてしまうことにならないかな?」


「与える水の量を最小限にすれば、大きく成長しないと思うぞ。育て方次第だ。もしも危険な状態になれば、私が燃やして灰にしてしまうから安心してくれ」


「雨が掛からないように、魔植物は小屋の中で生育させないといけないな。エメット、小屋の建設を頼む。管理はエルフより力がありそうな獣人の方がいいと思う。管理する者を決めてほしい。大きな魔石を採取しようと欲張らないようにさせてほしい。管理する者が怪我をしないことが大事だからね」


この方法で魔石を生産し、村にストックすることができる。

魔石がどんどん生産できるというのはすごいことだ。

これだけでゼピュロス村は豊かな村になれる。


「レッド! このタネ袋の中に、ひょっとしてエリクサーが作れる植物の種も入っているかな?」

レッドが匂いを嗅いでいる。


「この種からエリクサーの匂いがするぞ」


ドラゴンの嗅覚はすごいな。

そういえばアンジェも種の匂いを嗅いでいたな。


獣人も間違いなく嗅覚が発達していそうだ。

匂いに敏感でないのは俺だけなのか……


俺はエリクサーの種を撒いて水を掛けてみた。

どんどん枝が伸びて花が咲いた。

魔植物を見た後だけに、エリクサーの花がずいぶん綺麗に見える。


「エルフたちの中には、エリクサーの作り方を知っている者がいると思います。エリクサーの試作をさせてみますね」


「ありがとう。魔石とエリクサーがあれば、ゼピュロス村が貧乏になることはないな」


「いや待てよ! むしろそれを狙って、他国に攻め込まれる可能性がでてくるな。儲けより安全が優先だ。他国には絶対秘密にしないといけないね」


どう秘密を守るかは、アンジェとエメットに考えてもらおう。

俺はこの世界のことを何も知らないからね。


結婚式も終わって一段落したので、獣人族の日用品を買いそろえに再度デラザに向かう。

ガハリエと食事をしながら聞いた話では、ゴザリア国に戻った勇者は、称号を剥奪されて国外追放を命じられたようだ。


元勇者は悪態を吐くことなく、黙って姿を消したそうである。

意外と忠誠心の厚い、真面目な人だったのかな?


もう一つの情報だが、ゴザリア国ではドラゴンの攻撃で王が死去し、王女が女王となり国を継承したそうだ。まあゴザリア国なんか、どうでもいいけどね。

できれば、もう二度とゴザリア国と関わりたくないな。


ゼピュロス村では、エルフ族と獣人族が協力して村の拡張を進めている。


エルフ族と獣人族の住宅建設が一段落したので、俺たち3人のために、大きな屋敷を建てるという話になった。

俺としてはマジックバックから出した家が快適すぎるで、できればそのまま住みたいと思いっている。


しかし皆の好意を無為にするのも良くない。

マジックバックに大きめの屋敷が入っていればいいなと思いながら『大きな屋敷』と念じて、マジックバックに手を入れて引っ張り出すと大きな屋敷が出てくる。


やはり、女神様がマジックバックにいれてくれていた。ありがとう女神様!

これで家問題は解決。


この屋敷に妻2人と住めばいいな。

なにかどんどん環境が良くなってきている。


マジックバックにはなんでも入っているみたいだけど、何がどのぐらい入っているのかは、さっぱり分からない。


女神様に聞いてみたいのだが、どうしたらいいのかな?




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