第16話 結婚しました
2体のドラゴンがゼピュロス村に降り立つ。
エルフたちはドラゴンが1体増えたのにビックリしている様子だ。
「フウタ様! レッドドラゴン様! お帰りなさい」
「アンジェ! 戻ったよ。皆で迎えてくれてありがとう」
フウタ様が2体のドラゴンと共に戻られた!
レッドドラゴン様と一緒にいることだけでもすごいことなのに、ドラゴンがもう1体増えている。
一体どうなっているのだろう?
ドラゴンの背を見ると、獣人たちが乗っている。
よく見ると獣人たちの服はボロボロだ。
デラザで、いったい何があったのでしょう?
獣人たちは、どうしたのでしょうか?
ホワイトドラゴンが人族の姿になる。
白い髪に金色の目だ。顔は超ハンサムだ。
エルフたちが、ボーと眺めている。
ホワイトドラゴンはドラゴンオーラの漏れ出しを、きっちり抑えていてくれているようだ。
親しみやすそうなドラゴンだ。
「ホワイト! ゼピュロス村まで獣人たちを運んでいただいて、ありがとうございました」
「前にも言ったが、そんなに畏まらなくていいぞ! ここがお前の村なのか?」
「できたばかりの村で、住人はエルフたちが50人住んでいます。彼女たちはゴザリア軍から助け出しました。ここは荒地ですが、魔法の種によって美味しい野菜や果物を収穫することができるのです」
「美味しい野菜や果物とは羨ましいな。ドラゴンヒルでは野菜や果物を収穫することはできないからな。野菜や果物をドラゴンヒルに持ってきてくれれば、肉と交換するがどうだ。旨い肉を用意しておくぞ!」
「ありがとうございます。是非よろしくお願いします」
「アンジェ! 聞いていたな。それとエメットもこちらに来てくれ」
聞いていたなと言われても……ドラゴンヒルはドラゴン族の聖地なのよ!
どうやって私が持っていくのよ!
野菜や果物を運んで下さいとか、レッドドラゴン様に、怖くてお願いできないわよ!
美形イケメンドラゴンとも気楽に話をされているけど、なんであんなに仲良く話しができるのかしら?
アンジェとエメットが俺のところにやってくる。
「アンジェ! ここに連れてきた獣人たちは、ゴザリア国の王宮に囚われていた者たちだ。彼らの村もここに作ろうと思う。エメットが獣人族の代表だ。エルフ族と獣人族で仲良く暮らしてほしい。それとな、アンジェにとてもいい知らせがあるぞ……聞きたいか?」
「はい! なんでしょう!」
いい知らせと聞いてアンジェが笑顔になる。アンジェの笑顔はさらに魅力的だ。
「ドラゴン王に、ゴザリア国の王宮の屋根を粉々にしてもらったのだ。見事に吹き飛んだぞ! ただし、城全てを廃墟にするのは止めていただいた。ゴザリア国の人が全て悪いとは思えないからだ。それで良かったよな!」
「ありがとうございます。私たちも、ゴザリア国の人がすべて悪いとは思っていません」
「お礼は、レッドとお兄さんのホワイトにしてくれないか。俺はレッドの背に乗って一緒に行っただけだぞ。アンジェとエメットは、エルフ族と獣人族の皆に、レッドとホワイトに感謝するように伝えてくれないだろうか?」
アンジェとエメットの呼びかけで、エルフ族と獣人族が集まってきた。
全員が頭を深々と下げている。
「ゴザリア国の王宮から救い出していただき、誠にありがとうございました」と、獣人族を代表してエメットが感謝を伝える。
「私たちを苦しめているゴザリア国に、鉄槌を下していただきありがとうございました」と、エルフ族を代表してアンジェが感謝を伝える。
「アンジェ! ホワイトと獣人族たちの歓迎会の準備をエルフ族で頼む。ホワイト! 今日はこの村に泊まっていってくれませんか?」
「もちろんいいぞ! こんな形でエルフ族や獣人族と食事をするのは始めてだな」
「アンジェ! 結婚式は今日でいいかな?」
「2体のドラゴン様に、結婚式を立ち会っていただくなんて最高です!」
アンジェにウエディングドレスを渡す。
「楽しい結婚式にしよう」
「はい! ドレスをありがとうございました」
エルフたちが料理を作り始める。
俺はエルフたちにワインや頼まれていた日用品を渡す。
獣人族の日用品がないから、デラザにまた行かないといけないな。
「エメット! 獣人たちにも準備を手伝ってもらうよう伝えてくれないか。一緒にやる方がいろいろ話をするきっかけになると思う。もちろん疲れているものは休んでもらって構わないからね」
「ぜひお手伝いさせて下さい!」
フウタ様はいったい何者なのだろうか? どうやってドラゴン族に、ゴザリア国の王都を攻撃させることができたのだろうか?
しかも、レッドドラゴン様やホワイトドラゴン様と仲間のように話をされている。
ドラゴン族が人族と、こんなに親しげにしていたことなど聞いたことがない。
フウタ様は人族の姿をされているが、人族ではないのかもしれないな!
なんにしても私たち獣人は、フウタ様に命を助けていただいた。
この方に助けてもらわなければ、奴隷としてゴザリア国のどこかで朽ち果てていたはずだ。
私はこの方に仕えることで、恩返しなければならない。
日が落ちてきた。結婚式が始まる。
今日はワインもたくさんあるからね。きっと盛り上がると思う。
酒を飲んで話をして、エルフ族と獣人族が仲良くなってくれればいいな。
「フウタ様とアンジェ様! 結婚おめでとうございます! 末永く幸せに! カンパーイ!」と、エメットが乾杯の音頭をとってくれる。
フウタが結婚か! 結婚することは別にいいのだが……
そうなると、フウタのそばにいるのがアンジェになってしまうではないか!
それは面白くないぞ……フウタは……私が一番そばで見ていたいのだ。
あんな面白い男はいないからな!
どうしよう? このままでは……
俺たちの結婚式を見ていたレッドが変なことを言いだした。
「私も結婚することに決めたぞ……」
「おめでとうございます! ですが……どなたと結婚されるのですか?」
「フウタ! お前に決まっているではないか! ドラゴンの寿命はほぼ永遠なのだ。お前と結婚している時間は、ドラゴンの寿命に比べれば一瞬の出来事だ。お前と一緒にいれば、この先もいろいろな面白い事がありそうな気がするのだ! 兄上、良いであろうか?」
「いいぞ! 父上に伝えておく」
そんな軽く承諾していいのかよ? お兄さんでしょ!
俺とレッドが結婚したら、ドラゴン王が怒らないのかな?
怒らしたら……怖いどころではないのだよ……
「あの……人族とドラゴンは結婚できるのですか?」
「問題ないぞ。しかし子はできないと思う」
まさかドラゴンと結婚することになるとは……
「レッド! 妻として俺を支えて下さい。よろしく頼みます」
「これでお前と俺は兄弟だな。仲良くやろうぜ、弟よ!」
「はい、よろしくお願いします。お兄さん!」
「固いな……よろしく頼む……みたいな感じでいいぞ。オヤジもお前の事を気に入っていたぞ」
ドラゴン王が、俺のことを気に入ってくれていた……そうなのか?
怒っていると思っていたのだが、気に入られていたのか。
安心したぞ!
何かありえないようなことが、さらりと進んでいくのだが……これでいいのか……
「俺とレッドの結婚は、ここにいる全員が立会人となってほしい。全員で祝って下さい。お願いします」
「ではもう一度。フウタ様とレッド様! 結婚おめでとう! カンパーイ!」と、エメットが場を盛り上げてくれる。エメット、ありがとう。
「エルフ族と獣人族たち! これからこの村をさらに発展させていこう。この村には人族、エルフ族、獣人族、それにドラゴンが一緒に暮らすことになるが、楽しく仲良く暮らしていこう!」
全員の大歓声が聞こえる。良かったな。
なんか幸せな気分だ。
この荒地が、どんどん幸せな場所になっていく。
女神様聞こえますか?
のんびりと幸せに暮らせるに、段々近づいてきました。
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