第13話 村の建設3

エルフたちの能力は高い。力仕事も繊細な仕事もなんでもこなせるのだ。

家を建てるという力仕事も平気みたいだ。

櫓を建てたり、足場を作ったりする作業も手際がいい。動きに無駄がない。


もうね、職人さん集団だよ。外見は華奢な女性なのに、どこからそんな力が出るのだろう? 

重そうな丸太も軽々と運んでいる。


魔法の種から成長した大木は、枝を切り落としてもすぐに枝が伸びてくる。

これなら木材不足になることもなさそうだ。


住宅建設用の木材を、エルフたちがどんどん加工して積み上げていく。

建設に使うのは、生木は乾燥させる必要がある。


どうやっているのか聞いてみた。

水分をコントロールできるスキルを持ったエルフがいるようだ。


鋸を使い住宅の部材を加工し、家の形がどんどん出来上がっていく。

いや~、家づくりは見ているだけでも楽しいね。建設はエルフたちにお任せしよう。


エルフ……頼りになるな……彼女たちがいれば、どこでも暮らしていけるな!

不足する日用品だけを、随時購入しておけば、十分村としてやっていけそうだ。


俺は住宅建設エリアから家に戻ってきた。


これからレッドに頼んで、上空からこの近辺の偵察をする予定だ。

ここで暮らすのに、周りがどうなっているか知らない訳にはいからね!

周辺を含めた簡単な地図ぐらいは作っておこうと思う。


ゴザリア国みたいな国が、近くにあっても困るしね。

ついでに森で、家畜になりそうな魔獣を生け捕りしたいと思っている。

もちろんレッドにお願いしてね。俺には生け捕りは無理だ!


マジックバックを持って『紙と鉛筆出てこい』と念じる。

マジックバックに手を突っ込んでつまみ出すと紙と鉛筆が出てくる。


鉛筆はこの世界にあるのだろうか?

マジックバックには、女神様が別の世界から仕入れてくれた物も入っているのかな。


そうなると、マジックバックに何が入っているのか気になるな……

何が入っているか分からないと、やはり不便だ。


俺はレッドの背に乗せてもらい、上空から周囲の地形を確認している。

何となく近隣の地形が分かってきた。紙に鉛筆で地図を書き込んでいく。


偵察が終わった後に、レッドに頼んでホワイトバッファローを、生きたまま捕まえてもらった。

レッドが上空から威圧すると、ホワイトバッファローは観念して動かなくなるのだ。

地上に降りて、ホワイトバッファローを掴んで飛び立てば、怪我させることなく捕まえることができる。


村に戻った。


ホワイトバッファローを牧場の柵の中に降ろす。

ホワイトバッファローが、柵の中でのんびりしている。

ホワイトバッファローは大人しい魔物だったのかな?


いや違うな、おそらくドラゴンが近くにいるから怖くて動けないのだと思う。


牧場を担当するエルフに、ホワイトバッファローの世話をお願いした。

レッドにお願いしてホワイトバッファローを、あと数頭捕まえてきてほしいとお願いしておいた。

ホワイトバッファローを、家畜として増やせればいいのだが。


村の建設もかなり進んできたな。これだと、数日で村らしくなりそうだ。

エルフが加わって、荒地での暮らしが楽しくなってきた。

話し相手が増えたからね。


文化度も上がってきた。


家に戻って簡単な地図を作成しよう。

調査して分かったが、この荒野は1辺が20kmの四角形ぐらいの広さがある。結構広い。

といっても正確に測ったわけではないから、あくまでも俺がそう思ったということに過ぎないけどね。


レーザ測距儀みたいなのが、マジックバックに入っていないかな? 

まあいいや、この魔法の世界で正確な距離とか、細かいことを気にしても意味がないしね。

地図に東西南北を書き込む。東西南北は太陽らしきものの位置からの推測だ。


エルフたちがここに来てから20日が経った。

やっと村らしきものが、完成しつつある。エルフたちの暮らす家も何棟もできてきた。


この村でエルフたちと、のんびり楽しく暮らしていけたら、もうそれで満足だな。

女神様に希望したことは、叶えられたことになる。


いずれにしても平和だ。やっとのんびりと暮らせそうだ。エルフたちも楽しそうだ。


村の建設が一段落してきた。一区切りついたし、皆でお祝いをしよう。

料理をいろいろ準備して、全員でお祝いのパーティだ。


エルフたちに伝えると、俺と同じことを考えていたのか楽しそうに返事をしてくれた。

こういう幸せがいいよね。


エルフたちはホワイトバッファローの肉で、いろいろな料理を作ってくれている。

マーベリックさんにもらったレシピも渡してあるから完成が楽しみだ。

ワインも少しはマジックバックに入れているからね。


焚火の横には、全員が座れるテーブルと椅子が用意してある。


料理ができ上がったので、全員が席についた。

俺とレッドのテーブルは、少し大きめのテーブルになっているようだ。


「フウタ様。やっと全員が安心して住める村ができました。全てフウタ様とレッド様のおかげです」と、隣に座るアンジェがお礼を言ってくれた。


「これまで、いろいろ辛いことがあったね。すぐに忘れられるものでもないと思う。しかしこの村では安らかな気持ちで暮らしていこうよ。皆で美味しいものを食べて、のんびりと暮らそう」


「フウタ様。村の名前を決めて下さい」

「そうだな、ゼピュロスにしよう。心地良い豊穣の風いう意味だ。フウタのフウも風という意味だしね」


「心地良い豊穣の風ですか。ゼピュロス、いい名前だと思います」

「ではゼピュロス村で決定だ」


「それともう一つお願いがあります。私をフウタ様の妻にしていただきたいです! いかがでしょうか?」


「勘違いしているかもしれないので言っておくけど、俺の妻にならなくてもこの村にずっといて良いのだよ!安らかな気持ちで、いつまでこの村で暮らしてもらって構わないよ。そういうことは気にしないいいからね」


「この村で暮すために、エルフの誰かが犠牲になるという話ではありません。まだ20日間ぐらいしか、フウタ様と一緒に過ごしていませんが、ここにいるエルフ全員がフウタ様に惹かれているのです。全員で話し合い、代表して私が妻にということになったのです」


「ありがとう。いや、勘違いしてごめんなさい。アンジェは素晴らしい女性だと思います。それに美しい」


「しかし、結婚をするかしないかの話に入る前に、確認したいことが2つあります。それと伝えておきたいことが1つあります。大事なことです」


「確認したい事の1つ目は、ゴザリア国のことです。この国はあなたにとって憎い相手だと思います。俺も大嫌いな国です。その憎い相手に恨みを返すことを、残りの人生の大きな目的だと考えているのであれば、結婚はしない方がいいと思う」


「結婚は幸せになるためにするものだからです! 恨みを忘れろという意味ではありませんよ」


「私の考えは、フウタ様と同じです。恨みを忘れることは生涯ありませんが、恨みに囚われて生きようとは思いません。私たちを命懸けで守って死んでいった人たちは、私たちが幸せになれない生き方をすることを望んでいないと思います」


「分かりました。確認したい事の2つ目は、私だけが知らないだけで、変な質問なのかもしれません……人族とエルフ族は結婚してもいいのですか? 子どもどうなるのですか?」


「結婚することに問題はないです。過去に人族と結婚した女性もいます。子供もできますよ。問題といえば、人族に比べてエルフ族が何百年も長く生きることでしょうか!」


「分かりました。伝えておきたいことは、俺が別世界からの転生者だということです。俺は別世界で人として死に、この世界に人として生まれ変わりました。この世界に転生する時に女神様から、マジックバックと魔法の種、何にでも変形する万能棒をもらいました」


「フウタ様は、神のご加護を受けた方なのですね。いろいろ普通ではない人族の方と思っていました」


「アンジェ、俺が転生者であることに問題がないのであれば、寧ろ俺の方が結婚してほしいぐらいです」

「フウタ様、よろしくお願いします」


「俺の方が早く死ぬかもしれませんが、この場所で幸せに暮らしていきましょう。レッド、俺たちの結婚を立ち会ってくれないか?」

「ドラゴンの名において、2人の結婚の証人となろう」


「ありがとう、今日は皆で美味しいものを食べて、婚約の祝いをしよう!」

エルフたち全員が大喜びだ。


「明日、俺はレッドとデラザの街に行こうと思う。結婚式に必要なものを買うつもりだ。どんな物を買えばいいのかな? アンジェ、後で教えてね。それとゴザリア国についての情報収集もしてこようと思う」


「私も行きたいです」


「それは止めておいた方がいいだろう。アンジェだけではない。今、エルフがデラザに行くのは危険すぎる。デラザでは、結婚式に必要なものだけでなく、エルフの皆が必要な日用品とか道具類とかも買ってくるつもりだ。リストを作ってくれると助かるよ」


「それと俺たちが返ってくるまでに、レッドの家を建てておいてくれないか。俺の家にはアンジェと住むことになるからね。頼む!」


翌日、俺はレッドの背に乗ってデラザの街に向けて飛び立つ。


1時間もしない内に、デラザの街付近の森に到着した。前回来た時と同じ場所だ。そこからデラザの街に向かって歩いた。


デラザの街にはすぐに到着する。門番に街への入場料銀貨2枚を払う。


前回と変わらないデラザの街だ。



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