第11話 村の建設1
エルフたちが檻から出てきた。
さすがに疲れた表情だ。地面に座り込んでいる。
「もう大丈夫だ! ここまでゴザリア軍が来ることはない。ここは荒地だけど食べ物はある。安心してほしい。さぞかし疲れただろう。良く頑張ったね」
俺もなんだか疲れたな!
それにしても、ゴザリア軍相手にケンカ売っちゃったな。
見て見ぬふりはできなかったからな。まあしかたない。
どうせゴザリア軍がここに来ることはないし、気にすることもないか。
さて、もう一仕事する必要があるな。
「アンジェさん、調子の悪い者はいませんか?」
「大丈夫です。助けていただいてありがとうございます。あなたは、私たちの命の恩人です。私のことはアンジェさんではなく、アンジェと呼んで下さい。やる事があればなんでも仰って下さい!」
「今後はアンジェと呼ばせていただくことにしますね。俺の名前はフウタ。そしてこちらのドラゴンさんはレッドです」
「レッド、エルフたちはレッドのことを何と呼べばいいかな?」
「レッドでいいぞ」
「ありがとう」
「私たちエルフ族が、ドラゴン様を呼び捨てにして宜しいのですか?」
「いいと思うよ。レッドはそんな小さなことは気にしないよ」
おいおい……私はドラゴンだぞ。この世界では特別な存在なのだぞ!
特別枠として仲間扱いにしているのは、おまえだけなのだぞ……分かっていないのか……
「そういう訳にはいきません。私たちエルフは、レッドドラゴン様と呼ばせていただきます」
エルフ! 良く言ってくれた! そうだぞ……その通りだ……
「なんか残念だな! レッドはフレンドリーなドラゴンなのだけどな」
余計なことをいうな! フウタ……黙っていろ……
抑制しているドラゴンオーラを少し放出してやろう。
お〜、フウタ以外は理解できたようだな。
「エルフの皆さん。さっき食べ物はあると言いましたが、住居などはこれから作っていかないといけません。一緒に作っていきましょう。住居さえ作れば、ここにゴザリア軍が来ることはないので安心して暮らせますからね」
「それにしても、奴隷制度を勝手に作ったゴザリア王はどうしようもない奴ですね。ゴザリア国のことなど無視して、ここに村を作り皆で楽しく過ごせればいいと思います」
とりあえず今日はどうしようか……家には全員入れないし……
あのコンロでは50人分の調理は無理だしな……薪を作って火起こしが必要だな。
塩とか香辛料や食器に鍋類も買ってあるし、火起こしをしたら料理を食べて、今日のところは火のそばで寝てもらう感じだな。
「今日は疲れていると思うので、直ぐにでも休んでもらいたいところですが、もう少し頑張って仕事して下さい。日が暮れるまでに薪を作り、火を起こしましょう。薪はあの巨木の枝を切って下さい。大工道具はここに出しておきます」
マジックバックから大工道具を取り出す。
「次に料理です。ホワイトバッファローを誰か解体してもらえませんか? マジックバックからホワイトバッファローを出すのでよろしく頼みます。俺は解体のやり方が分からないのです。ナイフも大工道具のところに置いておきますね」
マジックバックからホワイトバッファローとナイフを取り出した。
ホワイトバッファローは新鮮なままだ。収納したものが腐らないのはありがたいな。
マジックバックに収納されると、その時点で時間が止まるのかな?
「ホワイトバッファローですか! 野菜もありますし、しばらく食べるのに困りませんね」と、アンジェたちが喜ぶ。
「さあ、日が落ちる前にもうひと頑張りして下さい。食べなければ元気になりませんよ。疲れていると思うけど、しっかり食べて、ゆっくり休んで下さい」
アンジェが手際よく皆に指示してくれている。
彼女だって疲れているだろう。
いや責任者だから一番疲れているだろうな。
アンジェは責任感の強い、頑張り屋さんだな。他のエルフたちも、テキパキと動いている。
「野菜はそこに実っているのを使ってほしい。料理ができる者がいると助かる。パンやチーズもあるから、野菜スープなんかもいいと思うよ」
「塩とか香辛料、食器、鍋類を、一式ここに置いておくね。自由に使ってほしい。水は俺に言えばいくらでも出せるよ。きれいな水だよ」
エルフたちは疲れているだろうに、懸命に働いてくれている。
子供たちもお手伝いしているな。
こんな人たちを奴隷にしようとは、ゴザリア国の奴め許せないな!
……2時間ぐらいが過ぎた。周りもすっかり暗くなってきた。
食事の準備が何とか間に合ったみたいだ。全員が焚き火の周りに集まってくる。
簡単な椅子とテーブルもあるな。大工仕事ができる者がいるのだな。
「とにかく食べよう……食べて元気になりましょう。食べ終わったら眠くなったら者から寝て下さい。今日は焚火の周りで寝ることになります。まともな寝床は明日作りましょう」
「収穫する果物や野菜ですが、放っておけば明日には元に戻ります。つまり明日も果物や野菜が収穫できるのです。ですから、収穫は丁寧にお願いしますね」
皆が美味そうに食事をしている。
全員笑顔だ。助けて良かった……本当にそう思う。
アンジェは俺の側に座っている。とにかく彼女たちが不幸にならなくて良かった。
エルフたちも、最初はレッドを怖がっていたみたいだが、段々と慣れてきたようだ。
レッドも、ドラゴンオーラが漏れ出さないように抑制しているはずだからね。
人の姿になったレッドが、食事の輪に加わっても、エルフたちは平気のようだ。
「やっと全員が、少し笑顔になってくれた。俺もうれしい。アンジェから、これまでの経緯とかも聞いておきたいが、今は疲れているよね。それに、皆にとっても辛い話かもしれないし、明日にでも聞かせて下さい」
「いいえ! 話をさせて下さい。皆のもの、いいかな?」
エルフ全員がこちらを向いて頷いている。
「まずは、助けてもらったお礼をさせて下さい。ゴザリア軍から私たちを助けて下さり、心から感謝致します。この通りです……」
エルフ全員がこちらに頭を下げている。
「エルフの皆さん、頭を上げて下さい。助けたいと思ったから助けただけです。それに実際に助けてくれたのはレッドだからね」
「レッドドラゴン様、ありがとうございました」
「私はフウタに頼まれたから助けただけだ、気にすることはない」
エルフ全員が再び、俺とレッドに頭を下げる。
感謝されるとなんか照れくさいな。
しかし、こういうのも良いものだな。
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