第39話 一人の時間と募る想い



 ■■■


 部屋に着いて電気を付ける。

 相部屋の相手(恋人)はまだ帰宅していなかった。

 荷物を置き、洗面台に行くとそこには疲れきった顔の小柳が居た。

 これは酷い、と先にお風呂に入り疲れを癒す。

 気が抜けると急に寂しく感じてしまう。

 いつも近くにある温もりがないから。

 特に心が疲れている時ほど、それを強く感じる。


「あきひさくん……早く会いたいよ……」


 そんな言葉が口から出てきた。

 普段は戦略攻撃隊の隊長として働いている東城。

 だけど小柳が急用で居ない時は副総裁として小柳のフォローに回っている。

 そのため東城は東城で忙しい立場にいる。

 そんな東城が今では小柳の仕事とプライベートの両方で心の支えとなっている。

 東城の存在は小柳の中でとても大きく頼もしい存在となっていた。

 お風呂を上がるとすぐにルームサービスを呼ぶ。

 そこで二人分の夜食を手配して、東城の帰りを待つことにした。

 ドライヤーで髪の毛を乾かして、化粧水や乳液などで肌の手入れをしていく。

 そんなことをしているとあっという間に時間が過ぎるが東城はまだ帰ってこなかった。

 不安になり連絡を入れようとハンドバックに入れていたスマートフォンを取り出す。

 すると一件の不在着信と一通のメッセージが来ていた。


『ごめんな。帰り遅くなるから先に寝てて。暁によって真奈のお見舞いと残りの仕事終わらせてから帰るよ』


 そのメッセージにショックを隠せない小柳はしばらくスマートフォンの画面を見つめる。


「……明久君」


 小柳は知っている。

 東城は北条が重傷を負ったことに大きな負い目を感じていることを。

 それを紛らわすかのように最近は仕事に打ち込んでいることを。

 だけど悪いことばかりでもなかった。

 担当医からも一件のメッセージが来ており、回復の兆しが見えたとの連絡があった。

 後は時間の問題だと書いてある。

 これで小柳自身も心の問題が一つ解決に向かい一安心できた。

 ソファーに座り、夜食にラップをかけて待つ事にする。

 部屋から見える夜景は痛々しい場所こそあるが、とても綺麗で美しい街並みだった。


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