第23話 僕と秘密の関係がある、らしい、女性達(1)
正直なところ、ここ数日、意外な出来事が連発しており困惑している。
美倉三姉妹――楓先輩、ひかりさん、春歩ちゃんとの邂逅から徐々に導き出され、そして母さんから語られた真相。
僕が記憶を失っており、過去の自分は何やら信じられないくらい有能だったという事が発覚した。
その影響というか功績は美倉三姉妹に留まらず、教員の諏訪部先生。
商店街の大衆食堂、食堂ぬのかわの布川親子にまで及んでいた事まで明らかとなった。
(……ちょっと、真相究明は一旦お休みしようかな……)
登校中。
教室へと向かう僕は、頭の中でおさらいを終えてそう思った。
最初こそ、過去の自分に関してなんとか足跡を辿ろうと、どんな細かい情報も見逃さないようにしていたが……どうも、怖くなってきた。
昔の自分が、予想以上に色んな事に首を突っ込んでおり、色んな人に多大なる影響を及ぼしているとわかった。
一番の懸念は、僕に対して悪感情を抱いている人達と再会した場合だ。
先日の不良はなんとかなった、僕に対してビビっていたから。
問題は体育教師の田山みたいな存在だ。
僕が記憶を失っており、過去の僕ではないと分かるや否や、一気に復讐へと舵を切るタイプ。
そういう存在に見付かったらマズい。
なので、しばらくは様子見に徹し、一人の陰キャ高校生夏野夜空として日々を過ごしておこう。
そう結論付け、教室のドアを開ける。
「あー、やっと来た。おはよう夜空ー」
僕の席に、当然のようにひかりさんがいた。
教室に到着した僕に、クラス中の視線が集まる。
……そう、これも問題の一つ。
美倉三姉妹と深い関わりを持つようになった結果、他人からの注目度が上がってしまっている事。
「よ、夜空さん、おはよう」
自席に向かうと、ひかりさんと一緒にもう一人、見知った顔が居る事に気付いた。
「今日はピヨも一緒だよ」
「ひかりちゃん、ピヨじゃなくて雛だよ」
「えー、雛って書いてピヨとも読むでしょ? かわいいからいいじゃん」
そんなやり取りをひかりさんと交えているのは、布川雛さん。
そう、彼女もこの学園の生徒の一人だった。
「夜空さんは、かわいいと思う?」
そこで、雛さんにそう聞かれ、僕は「え」と声を漏らす。
雛さんは恥ずかしそうに、ジッと僕を見詰めてくる。
「か……かわいい、とは思いますけど」
「そ、そう、かな? 夜空さんになら、呼ばれても嬉しいかも」
「えー、なんか不公平」
ぶー、とふくれっ面になるひかりさんの一方、雛さんはニコッと微笑む。
「夜空さん、いつでもお店に顔を出してね。お母さんが、また是非来て欲しいって言ってたから」
「あ、はい……」
朝一番、女生徒二人に囲まれわちゃわちゃと盛り上がる。
ひかりさんは当然として、雛さんもかわいい。
そんな状況のためか、主に男子生徒からの視線が鋭く痛い時間だった。
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