第15話 ancient earl・3
「じゃあ、私もう行くわ」
ナギサがそう言って立ち上がると、キョウノも慌てて立ち上がった。
「おっと……じゃあ、俺も行くよ。送るよ、ナギサ王女」
「ちょっとやめて。ナギサでいいわ」
ナギサがじとっとした目で答えるが、キョウノは「え?いいの?」と答えながらも、ナギサの肩を抱いて部屋を後にした。
完全に相手のペースすぎて、ナギサが頭を抱えるが、来た時に案内してくれた執事長が現れた。
「ナギサ様、キョウノ様、お帰りですか?」
そう聞かれて、ナギサが返事をしようとするが、それよりも早くキョウノがナギサの肩を強く抱いた。
「うん、そうだよ。途中まで送って行くよ」
その様子を見て、執事長がくすりと笑った。
「そうでしたか。お二方とも、お気をつけて。あと、伯爵殿。年頃のお嬢さんをそう扱ってはダメですよ」
そうくすくす笑いながら去って行く執事長に、「相変わらずだなー」と不満そうにぼやくキョウノだったが、ナギサがキョウノを見た。
「え?伯爵?」
その問いに、キョウノは「うーん」とぽりぽりと頭をかいた。
「その昔、それはもう数百年前の話、冥界に爵位制度があってさ、ウーフ家は伯爵位を賜ってたんだよ。今でこそ爵位なんてないけど、名残で呼ぶ奴多いんだよね」
バツが悪そうに言うキョウノだったが、今度はナギサがにやりと笑った。
「へえ、そうなの。じゃあ、私もそう呼ぶわ。キョウノより呼びやすいし」
「え!?キョウノの方が呼びやすくない!?俺、貴族じゃなくて、ただの領主なんだけどなー」
「大して変わらないわよ」
ナギサがそうツッコむが、キョウノは納得いかないようだった。
そんな言い合いをしている間に冥殿の出入口まで来たため、ナギサはさっと身を翻した。
「じゃあ、ここで結構よ」
「え?そう?ギリギリ月界まで行くよ?」
キョウノがそう言えば、「大丈夫よ」とあっさり断られ、苦笑いしか出て来ない。
「悪いけど、聖力の件に関してはまた連絡をちょうだい」
「ああ。今度は魔界に呼ぶから、サガナに連れてきてもらいなよ」
キョウノの言葉に、ナギサはすごい嫌そうな顔をし、キョウノを睨む。
「えー、怖いー。そんな睨まないでよ。資料とか、俺の家の方があるし、来てくれると嬉しいのにー」
「……わかったわ。嫌だけど行くわ」
ナギサが頭を抱えながら言うと、キョウノは嬉しそうに笑った。
帰って行くナギサの背中を見送った後、キョウノは大きな溜め息を吐いた。
「ほんと、予想以上にお転婆姫だな。……ね、ダーク」
そう呼びかけると、物陰からムスッとした表情のダークが現れた。
「まあ、そういう意味でいくと、ダークも困った子だよね。ストーカーは嫌われるからやめておきなよ?」
「違う!ストーカーじゃない!たまたま来たら、お前たちがいただけで!」
そう声を荒げるダークに、「はいはい」と答えるキョウノだったが、すぐににやっと笑った。
「でもさ、今度魔界にお誘いしたから、その時はおいでよ」
「行けるか!」
「えー、いいじゃん。紳士的な対応すれば、意外ところりといくかもよ?」
「そんなにバカじゃないだろ、あいつ!」
ダークが叫び声に、キョウノはダークの肩を抱いた。
「じゃあ、リキのところに戻って、俺たちでナギサとどうすれば仲良くなれるか考えてあげるよー」
「やーめーろー!」
「いいじゃんいいじゃん。幼馴染なんだし、いくらでも相談のるって」
「相談って……お前らの場合、ただただ楽しんでるだけだろ!?はーなーせー!!」
ダークの叫び声も虚しく、いつもの幼馴染会しようと、引き摺られる形でリキの元へと向かうのだった。
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