side story 九条麗舞 後編

 日記を読み終わると、窓から夕日が差していた。

 さっきまでは昼だったはずなのに、時間が経つのが早い。


 私は日記をできる限り奥深くに押し込んでから、タンスを勢いよく閉めた。



(あー。なんのやる気もしない)



 私はコレクション部屋に入った。

 純玲を誘拐した時に使った部屋だ。


 壁にも天井にも、徳美の写真を貼っていて、等身大のラブドールまで鎮座している。


 これだけ愛しているのに、彼女は今記憶喪失で私のことを忘れている。


 いや、愛をこんな風に示している時点で間違っているのかもしれない。

 自分が酔いたいだけなのかも。


 でも、それぐらい『誰かを愛している自分』に酔っていないと、誰かを愛することもできない。

 私はそういう人間だ。


 ナイーブなことを考えていると、ピロン、とスマホが鳴った。


 芸能事務所の総務部からのメールだ。



《調子はどうですか?》



 私は適当に文面を打ち込んで、返信した。

 まだ復帰に時間がかかりそうなこと。

 復帰できそうなタイミングで連絡すること。

 その間の休職の申請書類は後で郵送すること。


 堅苦しい文面を打つのは久しぶりで、かなり疲れてしまった。


 メールを送った後、ふと疑問が浮かんだ。



(なんで、芸能事務所のマネージャーなんてやってるんだっけ)



 確か、徳美に言われたんだ。「レマちゃんは人を見る目があるから、スカウトとかマネージャーがいいと思う。かっこいいし」って。

 当時の私は褒められたことが嬉しくて、舞い上がって、速攻で応募した。

 でも私は大学も出ていなくて、体を売る仕事しかしていなかった。


 普通なら門前払いだ。


 でも、とにかく熱意を伝え続けて、面接官同士の恋愛事情まで暴いてやったら、合格を出してくれた。

 その時の面接官達には、今もおびえられている。



 昔のことを懐かしんでいると、また、メールがきた。

 


《大丈夫か?》



 純玲からだ。

 あいつの前世の顔を思い出してしまって、奥歯を噛みしめる。


 雰囲気が兄に似ていて、嫌いだった。



「放っておいてよ」



 私は返信することもなく、スマホの画面を落とした。


 心配されるのは、正直迷惑だ。

 『連絡が来る』ということは『連絡を返さないといけない』ということ。

 芸能事務所からの連絡はまだわかる。

 仕事だから。


 でも、純玲からのメールは理解できない。

 もう純玲のマネージャーの引継ぎは終わっているし、私に構う理由はないはずだ。


 大丈夫か? と聞かれても、反応に困るし。

 ここで大丈夫じゃない、と言ったらどうなる?

 私を助けにくるのか?

 その間、徳美はどうする気?

 私は大丈夫って応えるしかないでしょ。 

 


(うわ、私ってめんどくさ)



 そう悪態ついていると、またスマホが鳴った。

 今度は通話だ。


 さっきから立て続けに連絡が来ていて、かなり腹が立ってきた。


 さっさと切ってしまおう。

 そう思って画面に触れたのだけど、鳥肌が立った。



(この番号は……)



 電話番号には見覚えがあった。

 実家の番号。


 兄?

 父?

 どっちからだろうか。


 いや、そもそも私の番号をどこで知ったのだろうか。

 どうせ大金を払って、探偵とかを使ったのだろう。


 そこまでして、あの適当な男達が連絡してきた。

 絶対に、よっぽどの用だ。


 本当は出たくない。

 あの男達の声なんて聞きたくもない。

 だけど、出ないといけない気がした。


 この電話が出るか出ないかで、これからの人生が大きく変わる予感があった。



『久しぶりだな』



 少し老けているけど、兄の声だった。



「なんの用?」

『お前、ニュースを見てないのか?』

「何を言いたいの? さっさと本題を言って」



 ため息が聞こえた。

 私はわざと舌打ちで返す。



『お前は昔から可愛くないよな。いい体をしているのに、勿体ない』

「……さっさと要件を言って」



 なんでこの男はセクハラしか話せないのだろうか。

 頭の中に海綿体でも詰まってる?



『親父が死んだ』



 聞いた瞬間、視界がぐにゃりと曲がった。


 父の死にショックを受けたんじゃなくて、精神的ショックが積み重なっているだけ。

 そう信じたい。



「どういう風に?」

『ぽっくりと逝った。心臓だってよ』

「苦しまなかった?」

『即死だったらしい。倒れた拍子で、顔に少し顔キズがついたくらいか』

「そう」



 しばらく無言が続くと、兄は『ここからが本題』と切り出してきた。



『相続の話だ』

「全部放棄する」



 はっきりと言い切ると、またため息が聞こえた。



『そうもいかないし、放棄するにしても一筆書いてもらわないといかない』

「じゃあさっさと済ませて。放棄するから」

『そう結論を焦るな。ある山だけはお前に相続してほしい。親父が生前に言ってたんだ』

「山?」



 意外だった。

 父は私のことなんて忘れていると思っていたし、相続の話が振られるとは想像すらしていなかった。



『親父がまだ若い頃に使っていたアトリエがあって、そこの山を買っていたらしい。その山をお前に継いで欲しいという話だ』

「そんなの、いらない。何もいらない」

『そう言われても、俺もいらない』

「ゴミを押し付けるつもり?」



 兄は「ははっ」と無駄に高い声で笑った。

 図星だったのをごまかしているのだろう。



『ゴミかもしれないが、価値はゼロじゃない。相続税や固定資産税がかかるほどでもないけどな。まあ、その方がお前だって都合がいいだろ』

「いらないって。遺言を守るような性格でもないでしょ。いつからそんなに義理堅くなったの?」

『俺はこれでも成長しているんだ。少しぐらい義理堅くなっている』

「そう。成長しなければよかったのに。書類は後で送って」

『だから、結論を焦るな』

「もう結論は出たでしょ」



 兄は『そういうなよ』と少し猫撫で声で言った。

 嫌な予感がする。



『実は今、お前の家の近くにいるんだ。書類も持ってきている』



 多分、これが一番の用なのだろう。

 

 直接私に会って、何をしたいのか。

 簡単に想像できてしまう。


 正直、かなり面倒だ。

 でも、



「……わかった。好きにして」



 私はさっさと終わらせたくて、承諾した。

 でも、この判断は間違いだった。




◇◆◇◆




 兄はすぐに家に入ってきた。

 私がお茶もなにも出さないでいると、兄は缶コーヒーを取り出した。


 渡された書類にサインを終えた頃には、コーヒーは飲み干されていた。



「これでいいでしょ。さっさと帰って」



 私が平坦な声で告げると、兄は私の横に移動してきて、にっこりと笑った。

 下心が丸見えの、気色の悪い笑みだ。



「なあ、お前今病気で休んでいるんだろ?」



 探偵が調べたのだろうか。

 兄は茶封筒を取り出した。

 そこそこ膨らんでいて、おそらく書類ではないだろう。



「何を言いたいの?」

「金が必要だろ?」



 兄の手が、私の太ももの上に置かれた。

 そして、ねちっこい動きで私のズボンの上を滑っていく。



「なあ、昔みたいに、な」



 遠回しな言い方が、本当に気持ち悪い。



「嫌なんだけど」

「悪い話ではないはずだ」

「なんで私なの。いくらでも女は選べるでしょ」

「お前でないとダメなんだよ」

「なんで? そんなにシスコンだっけ?」



 兄は眉をひそめて、下唇を噛んだ。



「俺は結局、生きている間に親父を超えられなかった」

「なんの話? ちゃんと会話して」

「親父で一番有名な絵は何か知ってるか?」



 私は「興味がない」と言わんばかりに肩をすくめた。



「『純一無雑』。お前を描いた絵だよ」

「それは反吐が出る」



 次の瞬間、兄の目が少し変わった。

 真剣な顔立ちで、直視できない



「なあ、俺は親父を超えないといけないんだ。同じモチーフで超えたい」

「私を巻き込まないで」

「頼む。この通りだ」



 珍しいことに、兄は頭を下げた。



(断るのに、どれだけ時間がかかるだろうか)



 絵のことになると、兄はかなり頑固になる。

 彼を折れさせる頃には、朝日が昇ってしまうだろう。


 もう、面倒くさかった。



「じゃあ、さっさと済ませて」



 そうして、私は久しぶりに兄に押し倒された。


 でも、決してやさしくはなかった。


 首を絞められた。

 首筋を噛まれた。


 でも、なぜか怖くなかった。

 気持ちよくもなかった。


 痛みで表情筋は動くけど、全く絶望はしない。

 それぐらいに、すでに心が死んでいた。



「なあ、もっと苦しめよ」



 兄は苛立ったような口調で、吐き捨てた。



「お前、そんなんじゃ価値がねえよ。病気になって仕事もしなくて、誰の役にも立ってるわけでもないんだろ? 家の中でずっと暗い顔をしているだけなんだろ?」



 私の首が、絞められた。



「お前、生きている価値がねえ」



 私はどんな顔をしているのだろうか。

 

 わからないけど、兄は笑っていた。

 あの時・・・の父みたいに。



「そういや、母さんのことを聞いているか?」



 私は何も答えない。

 答えたくない。



「お前のせいで死んだんだよ。交通事故からかばってな」



 私が固まっている間にも、兄は動き続けている。



「親父にとっては、お前は最愛の妻を殺した女だったわけだ」



 初めて聞いた。

 私の中で、何かが崩れていく。



「もう一度言ってやる。お前、生きている価値ねえよ」



 涙は出てこなかった。

 ただ、ずっと胸の中で何かがうごめき続けている。


 この感情の吐き出し方がわからない。


 私はひたすら、うめき声を上げ続けるしかなかった。 


 兄の笑みを、見上げながら。

 



◇◆◇◆




 兄が会った日から、1週間が経った。

 私は山に来ている。

 父から唯一相続された山。


 一応は私の山なのだから、状態を確認するぐらいのことはしなくてはいけない。


 それにもう一つ、目的があった。

 私の心の整理をつけるためだ。


 ずっと頭の中でリピートしている、この声を消したい。



『お前、生きてる価値ねえよ』



 嫌いな人間からの言葉だ。

 気にする必要はない。


 そのはずなのに、ずっと頭から離れない。離れてくれない。

 胸の中で、ムカデのような何かがずっと暴れまわっている。


 私は車を降りて、父が使っていたアトリエへと向かった。



「……ボロじゃん」



 だけど、そこはあまりにもボロボロだった。

 ほとんど手入れはされていなくて、ほとんど野生動物の住みかと化していた。


 

(こんなところを相続して、何になる)



 

 



「完全にゴミじゃん」



 そう。

 私と一緒。

 無価値。

 ゴミ。

 クズ。

 消えて。


 私は出涸らしだ。


 私の価値は全部、あの絵・・・に持っていかれてしまった。




「ははっ!」



 やっと、父が私にこの山を相続させた意味がわかった。


 私に言いたかったんだ。



【お前はゴミだ】



 だったら、ここで死ぬしかない。

 死んでやる。


 私が生きていることなんて、誰も望んでいないんだし。


 そう考えた瞬間、体に熱が宿った。

 病気のせいで怠かった体が、急に軽くなった。


 これが最期の力ということだろう。



 次の日の朝に、徳美に会いに行った。

 最期のお別れのつもりで。



「徳美、久しぶり」

「あ」



 徳美は私の顔を見ると、頭をひねり始めた。

 頑張って名前を思い出そうとしているのだろう。


 私は少しだけ頬を緩めながら、彼女の手を握った。



「ねえ、私は今から死のうと思うの。一緒に死んでくれる?」



 冗談のつもりだった。

 いや、断ってもらうつもりで、口にした。


 それなのに――



「いいよ」



 徳美は、あっさりと肯定してくれた。



「アタシ、もう長くないらしいし、命あげる」



 彼女は儚げな顔で、言った。

 私は涙をこらえるので必死だった。



「私、価値がないよ?」

「アタシも、お姉ちゃんに迷惑かけたり泣かせてばっかりだから、一緒」

「そう」



 それ以上の言葉は必要なかった。

 私は徳美を眠らせた。


 そして、三戸喜怒哀楽を誘拐した。


 私はきっと、徳美と同じ天国には行けないから。

 三戸喜怒哀楽も地獄に行くかもしれないけど、それでもよかった。


 その後、純玲から連絡が来て、全員が揃った。


 私がアトリエに撒いたガソリンに火を点けようとした瞬間、止められてしまった。


 三戸喜怒哀楽。

 あいつの意味不明な言動のせいで、どうでもよくなってしまった。



「飲むぞ」



 純玲から、缶ビールを渡された。

 キンキンに冷えてはいなかったけど、ゴクリと喉が鳴った。



「いや、殺す気? 肝臓悪いって言ってるでしょ」

「死ぬ気だった奴が言うことか?」

「……まあ、いいか」


 

 この時飲んだビールの味は、忘れられない。

 最高だった。


 のど越しを味わうだけでも、一気にスッキリした。


 私はずっと苦しかった。

 兄の事。

 父の事。

 徳美の事。


 いろんなことが折り重なって苦しかった。


 でも、一番苦しかったのは、我慢していることだったのかもしれない。



「あ、これなに?」



 酔っていると、徳美が何かを見つけて、声を上げた。


 彼女が指さした先にあったのは、布に包まれた絵だった。

 状態からして、そんな昔に置かれたものじゃない。

 最近、ここに持ち込まれたものだった。


 絵に描かれていたのは、赤ちゃんを抱きかかえる女性。

 私ととっても似ていたから、一目で理解できた。



(これがお母さん……)



 端に書かれた日付。


 それは、私の誕生日だった。




◇◆◇◆




 私の心中騒動から数か月が経って、徳美が亡くなった。

 純玲が泣きながらも、電話で連絡てくれた。


 その次の日、純玲からメールがきた。



《いい写真、ないか?》



 遺影に使うつもりなのだろう。


 私は今までのコレクションを一枚一枚めくって、最高の笑顔の写真を送った。

 

 でも、葬式には出席しなかった。

 葬式を見てしまったら、徳美のことを過去にして、忘れてしまう気がしたから。


 それからしばらく経って、家のチャイムが鳴った。



「僕の子供を産んでください!」



 三戸喜怒哀楽が、花束を持って変なプロポーズをしてきたのだ。


 正直、かなり気持ちが悪かった。

 なんでこの人は自分にそんなに自信が持てるんだろうか。

 絶対に分かり合えない。


 でも、心中騒動では迷惑をかけたし、少しチャンスを上げようと考えた。



「ねえ、私のどこに惚れたの?」

「君の苦しんでいる顔が素敵だった」



 クズ男はすぐに答えた。

 反吐が出る。

 一番嫌いな理由だ。



「もう、徳美のことはいいと思ってるの?」

「死んだんだから、仕方ないだろ? ずっと執着することを、彼女も望んでいないはずだ」



 一瞬で、頭に血が上った。

 色々と言いたいことがあったけど、唇が震えすぎて何も言葉にできなかった。



「……ちっ」



 スパァン、と。

 


 思いっきり力を込めて、ビンタをした。

 クズ男は驚愕した後「ままぁ!」と情けなく叫びながら、逃げていった


 心が空く想いがした。


 なんだか、少しすっきりした。

 ずっとこうしてやりたかったのかもしれない。



 その次の日、またチャイムが鳴った。

 あくびをしながらドアを開けると、大量の荷物を持ったスミレが仁王立ちしていて、思わず「げ」と声が出てしまった。



「おい、一緒に住むぞ」

「なんで」

「放っておくと、また変なことするだろ」

「放っといてよ。もう関係ないでしょ。徳美はもういないんだから」

「知るかよ。それで切れる関係かよ」



 純玲は勝手に部屋に上がり込んでしまった。


 もう面倒くさすぎて、私は受け入れることにした。

 ……別に、一人が寂しかったわけじゃないけど。



「葬式、どうだった?」

「普通だった。家族葬みたいなものだったしな」

「そう」



 葬式について聞いたからって、何か感傷があるわけじゃない。

 一応、聞いておきたかっただけだ。


 それよりも、きたいことがあった。

 徳美に無償の愛を与え続けた、純玲という人間に。



「愛って永遠だと思う?」

「愛なんて、ずっと続くわけがない。オレは前世で徳美にフラれたんだぞ」

「たしかに」

「でも、愛した痕跡はずっと残る」

「おー。いいこという」



 なんだか腑に落ちた。

 変に夢のある考えじゃないのがいい。


 今度は、絵を取り出した。

 あのアトリエで徳美が見つけた絵だ。



「この絵、どう思う?」

「高く売れそう」

「そうじゃなくて」



 純玲は変なところで天然だ。

 少し徳美に似ている。



「いい絵だな。愛がこもってる」

「やっぱり、そう見えるか」



 私は母親の絵をじっくりと見つめて、目に焼き付けて、こころに刻んで――


 絵をビリビリに引き裂いて、ゴミ箱に放り込んだ。



「いいのか?」



 純玲はかなりびっくりした顔をしていて、少し笑ってしまった。



「いいの。どうせ、愛した人も、愛された人も、もうこの世にいないし」

「本当にそうか?」

「それでいい。感じられない愛なんて、無いも同然だから」

「ひどいな」

「そう? 伝える努力をしなかったツケでしょ」



 純玲は複雑な顔をしながら「たはは」と苦笑していた。


 そんな顔を見ていると、あるひらめきがあった。

 


「そうだ。あなた、お笑い芸人になりなさい」

「……へ?」



 これは名案だ。

 すごくうまくいく気がする。


 いや、違う。

 そんなふんわりした考えじゃなくて、ずっと考えていた。



「あなたが笑いを届ければ、このクソったれな未来が少しはマシになりそうだし」

「お……おぅ?」



 曖昧な返事だった。


 まあ、納得してもらう必要はない。



「さて、このクソったれな世界を、少し楽しくしますか」



 私は背伸びしながら、冷蔵庫から便を取り出して、ベランダに向かった。


 ノンアルコールビールを口に含んだけど、まったくおいしくないし、気持ちよくもならない。


 でも、飲むたびに思い出す。

 徳美に勧められて、初めてビールを飲んだ日。

 純玲に押し付けられるように、最後のビールを飲んだ日。


 どっちのビールも、最高においしかった。

 気持ちがよかった。


 このノンアルビールは、それらを思い出すために飲んでいるのかもしれない。


 空を見上げると、雲が見えた。

 青い空の上を、プカプカと浮かんでいる。

 あれが全部ビールの泡だったら、世界は平和だったかな。


 髪をなでる風が気持ちよくて目をつむると、額縁が現れた。


 中に飾られた絵は、悲痛にまみれていた。 



『純一無雑』



 私の苦しんだ顔を題材にした絵。

 忌々しい過去。


 私はバケツいっぱいのビールの真っ白い泡をぶっかけて、その絵を染めた。


 本当の『純一無雑』。

 純粋なさま。

 なにもない、まっさらな状態。


 私の中には、白いキャンパスだけが残った。


 さて、どんな絵を描こうかな。


 人の絵を描きたいな。

 とってもかわいいバニーガールの女の子。

 胸が大きくて、愛嬌のある彼女。 


 どんな表情がいい?


 決まっている。

 


 自然と口角が上がるような、とびっきりの笑顔。

 みんなを笑顔にできる、純粋な笑顔。



 今は、そんな気分だ。






――――――――――――――――――――――――――――――

最初の構想では、エピローグで『純玲が麗舞の自殺を止めて終了』とするつもりでした。


この話はその名残を再構築したものです。


残り2人のサイドストーリーを書く予定ですが、結構短めになると思います。

(最初の2人が長すぎるだけですが)


次回は……できるだけ早く上げます……がんばる……

(8月中に完結させた方がきれいなので)

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