第10話
魔王たちだってかなり強いからな。今の状態で挑んだらどうしようもない、のは間違いない。
俺が雷魔法を選んだのは、【ドラゴニックファンタジー】では、明確に雷魔法というのはない。
火、水、風、土、光、闇の六属性のみであり、雷のようなエフェクトの魔法はあっても、火、風、光のどれかの属性だった。
雷属性という魔法は敵の弱点をつくことはできないかもしれないが、半減されることもない。
安定したダメージを与えられる属性ならなんでもいいから、雷魔法にした。ステータスが上がれば、弱点なんて些細なもんだからな。
一応、候補としては氷魔法もあったがやはり雷の方がかっこいいだろう。まあ氷もかっこいいんだけどさ……。ここは難しい選択だった。
どちらにせよレベルを上げまくれば、最終的には、すべての魔法を獲得できるしな。
まあ、今回はゲームクリアが目的なので、この獲得した雷魔法と回復魔法を最優先にあげていくつもりだ。
回復魔法は、俺が死にたくないから。この世界で俺のような高いHPを全快までできる魔法もアイテムもない。
自分で、自分の傷を治療する必要があるというわけだ。
【ファイナルクエスト】の回復魔法は本当になんでも回復できる。
足が吹っ飛ぼうが、腕が吹っ飛ぼうが、なんでもな。
だから、これを習得しておけば、俺が戦場で大怪我を負うことはないだろう。
「こ、これなら……すぐにでも魔法の練習をした方が、いいかもしれないな……エディック。ルーベストの専属家庭教師になってくれないか?」
父はエディックと呼んだ魔法使いにそう声をかけた。
呆然としていたエディックは、それから首をぶんぶんと横に振った。
「わ、私では……荷が重いです。私は中級魔法までしか使えませんので、とてもではありませんが……指導は厳しいです。これほどの魔法ともなると、王都魔法学園で教えていただく必要があると思います」
「王都、か……しかし、それには……魔王様の許可が必要になる」
……俺たちの街ももちろん魔王の管理下だ。
すべての人間は、魔王と魔族の家畜として育てられているわけで、何か重要な動きをする場合は許可が必要になる。
特に、フォータス家は魔王の命令によってこの街の管理を任されているわけで、その息子が学校に通うとなれば、何かしら申請が必要なようだ。
そして……恐らく、許可が降りても魔王軍の監視がつくことになるだろう。
表向きは従っているが、この家は反魔王組織として活動しているわけで、俺の存在や俺の実力を魔王に伝えることはしたくないはずだ。
……第一、魔王軍を危機に晒す存在は成長する前に殺される可能性もあるしな。
学校に行くかどうかの話をしている彼らに、俺はなんて声をかけようか迷う。
俺としてはこの世界の魔法の技術とか理論とかを教えられても困る。
何か、活かせるものもあるのかもしれないが、俺とは文字通り、根本から違うんだからな。
第一、ゲームで知られる範囲の知識なら、もう持ってるし。
下手に学園とかに通わされ、自由に動けなくなるのは嫌だったので、すかさず言葉を挟む。
「父さん。魔法は、自分で勉強したいと思っています」
「……自分で?」
「なんとなく、どうしたらいいのか分かりますから。神様の、声のようなものが聞こえるんです。結局のところ、魔物と戦って強くなればいい、ですよね?」
『ふっふっふっ! 私にお任せください! 知っていることで教えられる範囲のことであれば、なんでも教えますからね!』
いらん。
おまえこの世界の攻略情報ほとんど教えられないだろうが。
ここまで俺に優しくしてくれているが、一応守秘義務なので重要事項は教えられないそうだ。
ポンコツなので、たまにぽろっと漏らすことはわりとよくあるんだけど。
質問攻めすると、脳のキャパシティを超えるようで、そういうときに聞きたいことを割り込ませるのがポイントだ。
「……そう、か。そうだな。今の、ルーベストの魔法なら個人で学んだ方が良さそうだな」
父は、色々と考えた上でそう決断したようだ。魔王に存在を知られたくない、というのが父の中での最優先だからだろうな。
女神様は俺が冷たく言い放ったせいか、ちょっと悲しそうにしている。
あとでフォローしておこう。飴と鞭を与えておくと、女神様はかなり素直に従ってくれる。
そこはまあ、可愛いところではある。致命的なミスをするが、それをお茶目さんで許せる人ならいいのかもしれないな。
俺は無理。
「とりあえず、後で魔物との戦闘訓練にも同行させよう。それまでは、この敷地内なら自由に魔法の練習はしてもいいからな?」
俺に魔法の才能があったことが嬉しいのか、父は笑顔と共に頭を撫でてきた。
「はい、わかりました」
とりあえず、これで雷魔法の練習は問題なくできそうだ。
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