【ファンタジー】×【短歌】二十首連作 勇者の人生は魔王を滅ぼした後も、続いてゆく

初美陽一

冒険の果てに、失ったモノと、最後に残ったモノは、何だったのか

旅立ちの 勇者へ王は はした金 期待のなさが 伝わってくる


頼れるは 共に旅する 仲間達 苦楽を共に 世界を巡り


よそ者に 冷たい国は 当然で それでも救う 勇者として


傷だらけ 冒険の果て 辿り着く 魔王を倒し 世界を救え


決戦に 震えるこの手を 握るのは 心を繋いだ 聖女のあなた


激戦に ついに魔王を 討ち果たす 聖女の命と引き換えに



今際いまわまで この手を握り 微笑んで

目を閉じながら 「幸せになって」



凱旋に 勇者を迎える 称賛も 何一つとて 胸に届かず


王座にて ふんぞり返る 王様の 「信じていた」が 空しく響く


生き延びた 仲間の悲報の 原因は 耳を疑う 国の戦争


魔物から かつて救った 隣国りんこくは この国の手で 滅ぼされたと




何のため 俺は魔王を 滅ぼした 人間同士 争うためか




馬鹿馬鹿しい 全てのことに 背を向けて 勇者は今や 世を捨てた者


戦乱に 人の心は すさみ果て おご為政者いせいしゃ 自国もけが


兵士ども 魔の手を向ける 村娘むらむすめ 今さら救って なんになるのか


気が付けば 右手で剣を 振り払い 左で握る 村娘の手


迷いなく 己の国に 背を向けて かつてのように 旅立ってゆく




争いに 愚かな国は 滅び果て 後に残るは き人の世か


聞こえるは 行きう人の 笑い声 静かに微睡まどろむ かつての勇者




微笑ほほえむは いつか救った 村娘

「あなたの旅に意味はあったわ」

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