第3話 寿命購入
「いやいや私はお金はいただきません」
悪魔はにっこりと笑った。
「ほう、随分と良心的ではないか」
「金儲けではないので」
「面白いやつだ。わしの寿命が残りこれくらいかどうかは信じることはできんが、面白いお前に免じて寿命を買ってみてやろう」
「ありがとうございます。決して損はさせません。こちらの書類をしっかりとお読みください」
「あぁ、後で読んでおくよ」
資産家は酒をグイっと飲みほした。
「旦那様、どれくらい寿命をお買いいただけますでしょうか?」
「そうだな、わしはずっと長生きをしたいと考えている。この先の世界がどうなるのか、大変興味深い所だな。それに世界一長生きの人間になりたいものだが、ここはとりあえず十年くらいにしておこうか」
そして資産家は寿命十年分の購入を提示した。
「ありがとうございます。それでは十年分の寿命を」
悪魔の目が光ると、資産家の体もオレンジ色に光り始めた。
「おぉ!」
しかし光るのみで資産家は何も感じなかった。
「これで旦那様の寿命は十年間延びました」
機械を見てみると確かに残りの寿命が十年間分延びていた。
「なるほどな、また寿命を買いたくなったらどうすればよい?」
「その機械のボタンを押していただければいつでも呼び出していただけます」
「このボタンか、わかった。支払いはどうすればよい?」
「ご心配いりません。自動引き落としになっております」
「何⁉ 口座を教えた覚えはないぞ」
そう資産家が言うと、悪魔は面白そうに目を細めた。
「旦那様、私は悪魔でございますので」
「あぁ、そうであったな。そんなことを調べるのも簡単だということか」
「はい。他にご質問はありますでしょうか。なければ失礼いたしますが」
「特にない。何かあれば呼ぶ」
「かしこまりました」
悪魔の体が足元から透明になり始めた。
「さすが悪魔だな!」
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