第2話 寿命を売買しています
悪魔の瞳がきらりと光った。
「寿命を売買しているのです」
「寿命を・・・?」
「はい、特に旦那様には寿命を買っていただけないかと思い伺いました」
資産家は大変興味をそそられた。
普段ならこんなセールスマンはできの悪い詐欺師か何かだろうが詐欺師はあんな魔法のような変身はしない。きっと悪魔は本物で、悪魔の話も本当だろうと考えた。
「実に、興味深いな」
悪魔はそれを聞いて空中に手をひらひらとさせる。
すると悪魔の手の周辺がキラキラと光りだした。
「!」
光の中から書類が姿を現した。
「ほう、悪魔というやつは便利な能力を持っているな。荷物がいらんのか」
悪魔はにこりと笑う。
「こちらが寿命の値段になります」
悪魔は書類を差し出す。
「値段については世界の人口、平均寿命、需要と供給のバランスなどから価格は変動しておりますが、本日はこのお値段です」
書類には命の値段が記されており、ゼロが多く並んでいる。
資産家は寿命の値段を確認して一度天井を見上げた。
「随分安いんだな」
「さすが、お目が高い!」
悪魔の表情が輝く。
資産家は寿命の値段は安いと思ったが、一つ気になることを思いついた。
「しかし、寿命が欲しい者はこの世にたくさんいるだろうが、売りたい者などいないだろう」
「いえいえ、最近は売りたい人のほうが多いんですよ。売って短い人勢を豊かに生きたいと願う人が多いんですよ」
そして悪魔はここで言葉を付け加えた。
「いや、もう生きたくないという人のほうが多いですかねぇ」
悪魔はいやらしく目を細めた。
「全く情けない話だ」
資産家は酒をグラスに注ぎ、一口飲んだ。
悪魔は新たに空間から何かを取り出した。
「こちらが旦那様の残りの寿命を計測できる機械でございます。腕時計型になっておりますので、身に着けておけば常に確認することもできます。まぁ常につけておく必要もありませんが」
悪魔は機械を資産家の姿に重ねた。
「ふむ、旦那様の寿命はあとこれくらいのようですね」
資産家は機会に表示された数字を見る。
「ふ、ホントかどうかは信じられんが、お前の見立てではわしはあとこれくらいしか生きることが出来んということだな?」
「さようでございます」
「お前はどれくらい金を儲けるんだ?」
「いやいや私はお金はいただきません」
悪魔はにっこりと笑った。
「ほう、随分と良心的ではないか」
「金儲けではないので」
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