第16話 moratorium
翌日、徳山は釘を刺されていた。というのも、部隊の管理者から、言わなくてもいいのに執拗に能力を出し過ぎないように念を押されたのである。
バーコード禿げの内務スタッフである
徳山はその場は早くハゲを追い返すために、大人しく従っていたものの、ハゲが去ると次第に理性よりも本能で判断しだした。怒りがこみあげてきたのだ。
『誰だあいつ!俺のこと現場で見てたわけじゃないくせに!管理職だか何だか知らないが、ズケズケと通達しにきやがって!己の思うことは想像や伝聞じゃなくて見て感じたまま言えっつの!それに、危険者扱いされておいて、こっちに残らないといけない俺の身にもなれよ!誰だよ俺のこと危険能力と決めつけたの!』と徳山は怒っている。
『まあまあ、たしかに、あそこまでの拡散型の能力は俺らの中では強力だから、市街地向きではないわなあ。俺は郊外部に行ったことはないが、それはそれは強い能力の持ち主が部隊・淫魔ともにうじゃうじゃいて、一般人のいない激戦地域では、それはそれはものすごい戦闘をしているらしいぜ。』と神山が言った。
『まったく、激戦区なら殉職者も多いだろうしよ、スグ空きが出るだろうに!』と徳山は興奮気味である。
『落ち着けよ(笑)お前は重宝される予定なんだろう。なんでかというと、以前にも郊外部に移動になった強い戦士がいたが、その時は即日異動だった。しかし、彼はすぐに戦地で亡くなったぜ。それはおそらく、空き部屋を片づける暇もなく、戦況が激化していたんだ。つまりはお前はゆっくり残ってから向こうにいけるということは、今向こうの戦況は落ち着いているということだ。安心しろ。』と神山は宥めた。
『つってもよおお!』とまだ徳山は口吻をもらしている。
『わあったわあった!巡回いくぞ!何かあっても俺が旨いこと言ってやるから!』と神山が往なして、一昨日ぶりの午前の巡視に出発した。この午前の巡視と言えば、徳山が一昨日救出されたシフトである。
番田と筌場からプレゼントされた進化系人感センサーつきナビで、繁華街を回遊する。
と、そこに、不自然に歩行者通路を遠目に見たら蛇行するように、距離の開いた二つの点が互いに一定の距離を保ち同じ道をぐるぐると移動していることに気が付いた。
地図上でみたそれらの二つの点は、北にまっすぐ行っては、西に少し進み、また南にまっすぐ行っては、また西に少し進み、また北にまっすぐ行っては、また西に進みと、不自然な動きをしていた。
やがてその二つの点は、ある北の一点で接触状態になり、それを見た神山と徳山は何かあると感じた。
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