第7話 on the way home
形式上、口頭で神山から今日時点で雇用されるという形になった徳山と新井は、居酒屋を出て、帰路に就いた。三人並ぶと、神山が細マッチョで背丈が170㎝ほど、徳山が中肉中背で背丈が160㎝、新井が痩身で180㎝ほどという順番だが、二人の背丈を超えている新井は、立場を気にして腰をかがめている。
と、ここに、しっかりとおしゃれメイクをした女が3人、三名の前に立ちはだかった。場所は、人気のない路地裏である。駅までの道をショートカットしようと、近道をした結果、薄暗くて人気のない裏道に出ていた。「お兄さんたち、今暇かしら?」と話しかけてくる。
「まちがいなく、奴らの刺客だ。3人寄越したところをみると、恐れるに足らん雑魚だ。だが、お前らは出るな。慣れん能力や能力なしでは敵わん。下がってろ。」と神山は二人を制し、前に出た。
「お兄さんがまず私たちとあそんでくれるのね?いいわ。4人でたのしみましょうよ。夜のランデブーを。」と真ん中にいる最も背が高く着ているふわりとしたワンピースから隠れ切らない身体の線(つまり体格)のしっかりしたポニーテールにハイヒールの女がそう言っている。他の女は、それぞれ、左がおかっぱ頭オーバーオールにスニーカーの小柄で、右がハイウエストパンツにへそ出しシャツというロングヘアの細身の二人の間の身長ほどのブーツの女。それぞれが腕組みをして、殊勝にほほ笑んでいる。すでに勝った気でいるようだ。
神山が歩みを進めて彼女たちの眼前に来ると、さっそく戦闘は始まった。
まず、神山はあいさつ代わりに中心の体格優な女に上段蹴りをかました。それは、彼女の抜群の反射神経による上段構えによって防がれてしまった。
かと思うと、神山を襲うとみられたほかの女二人は、その場から他二人の男。つまり徳山と新井を狙いだした。おかっぱは、手から10本の糸を飛び出させ、新井を捕まえる。そして、ロングヘアが妙なポーズをした途端、徳山の身体がその女と同じ妙なポーズになったのち、彼は自分での体勢の変更がきかなくなった。
彼はしかし喋ることができる。「おいおい!どうなってんだよこれ!あいつ気持ち悪い恰好しあがって!動けねえ!」と彼は叫んだ。
隣では、新井が身体をしばられ、身動きが取れないでいる。おかっぱが近づき、品定めするよに二人を眺めている。
「どっちもまだ、強くなさそうね。あの子たちは、やっぱりあの男がやったのよ。」とおかっぱは言っている。ロン毛は、「ま、そうよね。新人さんって感じだし。」と答えた。
そして、ロン毛はその場で走る様なしぐさを見せると、徳山もまた走る様な動作になり、地を蹴って進みだした。進む方向は、神山が一進一退の攻防戦を繰り広げている空間である。ロン毛が、徳山を使って、突進させて神山をひるませようとしているのだ。
片や、おかっぱは、新井を操り、同じように神山の格闘を妨害しようとしたが、しかしこの計画は破綻した。なぜなら、新井を縛っていた糸が、新井の身体の中に脈打つ能力、筋肉肥大に奇しくも加担してしまったのである。部分的な血行不良が功を奏し、新井の「神山や徳山を助けないと」という意思も相乗的に働いて、まず彼の腕は猛烈に肥大した。筋肉の肥大とは違い、何か手の先に頑丈だが軽い物質のできものが出来たような感じで、それは切れ味も備えていた。そのため、おかっぱの糸を切り刻み、おかっぱに攻撃すべく、突進した。
「やめんかああい!」と新井が叫んだ時には、徳山を操っていたロン毛が身の危険を感じ、後ろを振り返り、神山のところに突っ込むのに未遂した。
新井はおかっぱに突っ込んだ。直径1mもある肥大した拳で殴打され、「あうち!」と言って失神するおかっぱ。鼻血が大量に吹き出ている。
「蜘蛛子!」とあだ名を叫ぶロン毛。神山の相手も、仲間の失神に気をとられ、驚いている。その隙を縫って神山はロン毛に飛び込む。神山はロン毛の腹を抱えこみ、勢いよくドラゴンスープレックスを決め込んだ。
ドーンという音がしてロン毛は失神し、解放される徳山。逃げ出す、屈強なワンピース女。
「なかなかの格闘の腕前だったが。仲間がやられたくらいで気をとられてちゃまだまだだな。」と神山はつぶやいていた。
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