第4話 arena

神山の移動に付き添った結果ついた場所は、埼玉にある小さなコンサートホールだった。徳山は思わず「え?ここ?」と驚いた。小さくとも、少なくないかなりの数のヒトケがある場所であるため、死角などないのではないかと、思ったのだ。


「いや、単純な話。ライブが始まってしまうと、みなアーティストに気持ちが集中するだろう。まるで、新興宗教の信者が、神と名乗る首謀者を崇めるみたいに。」と網山は説明する。「そのとき、ホール内は完全な洗脳状態になり、周囲に注意を向けなくなる。そのころには、トイレでは事件は起こっている。というわけだ。まあ、会場の規模や有名度によっては、管理会社が完全に粗相がないか見守っているが(一般人が盛り上がって行為に及んでいないか。)、小規模なところだとまだまだ粗がでやすいというわけだ。そういうところを奴らは見つけてはコソコソしてやがる。そこを俺たちがチマチマ捕まえているというわけさ。お前もそういうところにいただろ?トイレじゃなかったが。」と神山は言ってはにかむ。


「いや、あまり答えにくいこと言うなよ。俺は初デートだったんだよ。まさか、あんなことになるなんて…。」と徳山は頭を掻きかき話した。それに被せるように神山が言う。「恥ずかしがることはない。俺はキリスト教徒で、婚前交渉はできない身体だから、お前と同じように相手から無理やりされかけたところを、仲間に助けられた。大体の経緯はみな同じだよ。」と神山は歩み寄りを見せた。


「そ、そっか。」と徳山は胸をなでおろした。会場では、もうすぐ出演者が登場しようとしている。「さあ、出るぞ。おっぱじめようとしているやつがいるよやっぱり。」と神山は言った。「なぜわかる?第六感でも働いているのか?」と徳山が食い下がると。「これだよ。」と神山は喋りながら何やら眺めていたスマホを徳山に見せた。


「これはSRといって、サキュバスレーダーという名前のアプリだ。スマホはお前のでも誰のでもアプリは取れる。ただし、裏ルートでしか取れないから、一般人は知ることもできない。これを見ると、特に妖気が漏れている状態の相手を近くから検知することができる。」神山は、妖気という言葉を初めて使用した。


「妖気?なんだか聞きなれねえな。漫画みたいな言葉だな。」と徳山が言うと、神山は、「やつらは行為に及ぶと、衣服に閉じ込めていた妖気が漏れ出すんだ。それは、このアプリによって検知される。」と説明した。


「だから、俺はあのタイミングで救われたのか。」と徳山が感心した。とはいえしかし、まだ神山は現場に突撃しようとしない。「おいおい、行かないのかよ。もう始まってるんじゃねえのかよ。」と徳山は急かす。


「いや、まだだ。女の方が警戒を解いていないためか、前戯を焦らすようにし始めた。知能犯だな。最も効果的なのは、やつらが膣に陰茎を迎え入れた瞬間だ。その状態になると、非常に無防備な状態になったやつらは、防御力も攻撃力も格段に低下し、簡単に制御できるようになる。しかししまったな。あまりに喋りすぎて、此方の話が聞こえているのか?もしかして、聴力系の能力なのか?」と神山は訝った。


「だとしたら、俺たちが入口を塞いでいるとはいえ、もし最低限の腕力があるのだとしたら、強行突破してさらに万全な体制を整えるだろう。おそらく、様子をうかがってるんじゃないか?」と徳山は推理した。その場を動いている様子はない。


「ちなみにだが、お前が挿入に至った時、陰茎が赤くただれなかったか?」と神山は妙なことを質問した。「確かに。痛みはないものの、見たことのないような腫れと赤みがあった。なんだあれ?」と徳山は疑問を呈した。


「あれはな。実はサキュバスの膣には麻酔成分が含まれていて、鎮痛効果がある。なぜ沈痛するかというと、いざ男が射精する瞬間にサキュバスの膣からは毒素が砲h出され、精子と入れ違いで男に注入される。その毒を注入するには、男の陰茎に幾多もの毒牙をかけ、陰茎を掴んでおかないとならない。しかし、痛みを感じると、陰茎を外してしまいかねない。だから、奴らの膣はものすごい強力な麻酔を抽出するのだ。」と神山は説明した。


徳山は、「ということは?」と言った。つまり、あんなにただれていた徳山の陰茎は、まだ痛んでいない。ということは、これから麻酔が消えて、痛む恐れがあるのだ。「まだ麻酔が効いているってこと?」と徳山は聴いた。


「そうだ。これは誰もが通る道だが、風呂がとてつもなく痛い。暫しの試練だ。2週間ほどは、水気で濡らさないように、衣服で擦れないように、麻酔が取れてからの期間は気を付けないといけない。」と神山は言った。


「そげな~」と徳山は言う。レーダーは、まだ、本番に至ってない焦らされているような状況を図で示していた。

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