第2話 terrarium

俺が入っていたらしい個室を抜け、廊下に出ると、大会議室のような場所に通された。部屋の脇にはガラス張りになった庭があり、観賞用の植物が植わっている。


室内にはなんだか、屈強そうな男が数名、大人しく席に座っているが、身体が椅子に収まっていない。他には、席にすっぽりと収まっている華奢な男や、中肉中背の男が居眠りをしたり、様々な人がそこにはいたが、一様に皆男だった。


その場にいる男は、みな瞑想をしているのか、目を瞑っていた。奥にいる白衣を着た男に神山が話しかける。


「博士、新人です。」と神山が声をかけると、博士と呼ばれた男は立ち上がった。


「ああ、間宮ですどうも。」と腰の低い博士は俺にそう言って頭を下げた。こちらの挨拶も済まぬままに、矢継ぎ早に彼は話始めた。


「我々はTAS〔タス〕という科学研究部隊です。ええ、タクティカルアサルトサキュバス。ま、まるで中学生のような英語ですが、直訳すると戦術的に淫魔に暴行する。というと野蛮ですが、転じて、科学で淫魔から地球人を守るのが役割です。あなたについてきてもらったのはほかでもない。淫魔が人間を襲うとき、淫魔がのっとった女性と、淫魔が襲う男性には遺伝的傾向に近似値が見られる。ゲノム解析した結果、淫魔に乗っ取られた女性たちを人間に戻すには、襲われた男性の血液が必要だということがわかったのです。だから、貴方に来てもらった。そして、私たちはさらに研究をつづけた結果、襲われた男性には、総じて戦士としての潜在能力がある。なぜ襲われるかというと、淫魔たちが、強い遺伝子を無意識に察知して、襲っている。しかも、それは自分と遺伝レベルが高いもの。ファミリツリーを振り返ると、どこかで血がつながっているかもしれない男女が、襲う襲われるの関係になるのは、このためなのです。そのため、神山君のように、戦士になる才能がある。お名前は?」


あまりの早口に雰囲気にのまれた俺は質問されたことに一瞬気が付かなかった。間があったのちとはいえ、咄嗟に「徳山脩介です。」とこたえた。


「徳山君是非君を神山君の部下として迎えたい。頼みます。」と間宮博士は言った。俺は、「彼女が助かるなら。」とその言葉に、ストレートに答えることにした。不思議なほどに、スッと言葉が染みる人だと間宮博士については印象を持った。


「えらいぞ!即答だな!」と神山が気さくに俺の胸を叩く。細マッチョらしい神山は、いちいち力が強い。みぞおち近くをヤラレタ俺はギャフと押された肺から息が漏れ、その痛みに「あい…。」と中途半端な返答しかできなかった。神山は笑っていた。


その後、俺も神山も瞑想に参加して、実際にぐっすり眠った後みたいに疲れが取れる時間を体感した。

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