インモラル アブノーマルズ
YOUTHCAKE
第1話 aquarium
「脩介君。ちょっと…。こっち来て。」
人生初の彼女【流鏑馬マイ】と初デートに来た俺は、只今都内の水族館を周遊中。初めてのデートは互いに緊張しているのか、言葉も少なく、俺は手に汗を握っていた。しかし、そんな俺を見かねたのか、彼女は、俺の手を引いて、人々の目の死角になる物陰に俺を誘い込んだ。
少し日に焼けて赤くなった肌をした彼女は、そのうえ顔を赤らめて、「もう、こんなに熱くて…。どうしたらいいかわからないの。」と言って握っていた俺の手を彼女の股座に引いていく。
スカートを履いた彼女が俺の手をパンティ越しの秘部に触れさせる。実際に俺は彼女の中心が熱くなっており、じわりと浸潤しているのを感じた。
唐突な出来事に顔を赤らめる俺。まだ、彼女とは初夜も迎えていない。とろけた顔で、目を潤ませて俺を誘惑する。マイ。
俺は、臆病なもので、とっさにそうしか言えなかった。「だだ、誰か来るかもしれないし…。ちょっと、ここでは…。」と。俺は、すごく自分が残念に思えた。彼女の勇気をフイにしたような。そんな罪悪感が俺の背中を冷笑するようだった。
しかし、意外なことに、「じゃあ、こうならどう?」と彼女は言った。すると、彼女の身体全体が透明になり、彼女が握っている俺の手も徐々に透明になっていった。
「えええ、なにこれ。」と茫然自失の俺は、呆けたようにそう言うしかなかった。なにせ、彼女は絶世の美女である。そんな彼女がデートしてくれると知ったあの日から夢見心地だった。しかし、目の前には透明になった彼女がいる。そして、俺自身も全身が透明になり始めている。
「誰にも見えないんだから、いいでしょう?」と透明になった彼女は、俺の耳元でそう囁いた。甘やかで蕩けるようなその耳を擽る様な透きとおった声は、俺の耳殻を愛撫し、俺は震戦した。
やがて俺まで透明になり、透明なまま衣服を脱がされる。今や視界まで透明で何も見えず、皮膚感覚と音のみが頼りだ。身ぐるみを剥がされた俺は、なすすべなくされるがままに彼女に跨られる。
「ああ、もうこんなに…。」と彼女は喜びの声を漏らし、気付けば膨張していた俺のSONを早くも挿入しようとしている。
咄嗟に焦りをおぼえた。何か、得体の知れない大切なものを失くしてしまうような不安に駆られて、俺は直感的に「待って。」と言った。
「いいの。私に任せてくれたら。天国に連れてってあげるから。怖がらないで。大丈夫だから。」と彼女は俺に言い聞かせるように言うだけで、止まらない。
やがて俺のSONは彼女のMANに割って入り、彼女は「あふん」と口吻を漏らした。MANの柔毛がしなやかにSONにまとわりつき、蠕動を始める。
俺は、童貞を卒業した。そして、彼女は処女ではなかった。
と、そこへ。「危ない!」と男がその場に割って入る声や衝撃が走った。彼女を俺から押し剥がし、物陰の奥へと押しやる。突如引き抜かれた俺のSON。俺は痛みをおぼえた。見ると、茎皮が赤くただれている。
俺の透明化した身体は徐々に色を戻し、情景が見えた。見ると、青いオーラを放った彼女が赤色の電気を放電している男に取り押さえられ、後ろ手にされていた。
「彼女をどうするんですか!」と俺はとっさに叫んでいた。人生初の彼女だ、彼女の運命はどうなる?
放電男は言った。「彼女はもう彼女じゃない。淫魔に完全に乗っ取られている!」と。
俺はその場で放心したようだった。なぜなら、その摩訶不思議な言葉を聴いたからだけではない。よく見ると、彼女が流鏑馬マイではなく、別な得体の知れない魔族のような姿に変わっていたからである。
青いオーラを纏った彼女は、天女のようなシルクを身に着け、鋭い牙を口の端から覗かせていた。なにより、肌が雪のように白い。そして、俺を睨んでいる。その彼女が叫んでいた。
「あともう少しで私もこの男の精を奪えたというのに!貴様!邪魔しおって!離せ!」と。俺はショックで腰が抜けてしまった。流鏑馬マイの華やかでおしとやかな印象はそこにはなかった。精?それが何かはわからないが、というより、今は混乱して理解を拒んでいるが、おそらく彼女は、男を食って何か大義を成しているそんなバケモノに姿を変えていると、受け入れがたい現実に、俺は打ちひしがれていた。
「キミ、僕についてきてもらおうか。彼女がもとに戻れるかもしれない。そのためにキミが必要だ。証人になってくれ。」と電気男は言った。
魔物女は言った。「貴様!私をどうするつもりだ!」
俺は、腰が抜けていたが、のろのろと立ち上がり、男に迎合した。そうしないと、後悔しそうな気がして。
「じゃあ俺の手に掴まれ。飛ぶぞ!」と男は言い、片手で女を捕まえ、もう片方の手で俺の手を掴んで、飛んだ。
ビシャン
ドタッ
俺の耳に聞こえたのはそんな音だった。俺たちの身体は、ワープしたのか、先ほどいた水族館から、サイバーパンクな宇宙船のような建物に移っていた。体制を崩して今自分たちが床に伏臥しているのがようやくわかる。
身体を起こし立ち上がると、人間が乗り込めるほどの巨大なアクリル製の試験管のような容器に、さきほどまで流鏑馬マイだと思っていた化け物がホルマリン漬けになって収まっている。
赤い電気を纏っていた男が身体を起こした俺に気づいて話かける。今は自衛隊のような恰好をして、俺の前に立っている。おそらく、人命救助用の衣服として、電気を発する衣服を先ほどは着用していたのだろう。
「意識が戻ったか。一瞬のように思えただろうが、今はお前たちが水族館にいたときから5時間ほどあとだ。」と男は言った。
俺は、そんなことはどうでもいいと、男にすぐ違う話を振った。「マイはどうなるんですか!」まだ付き合ったばかりだが、彼女のことが心配だった。
「何安心しろ。今から博士が魔性菌と彼女を分離してくれる。」と男は言って、俺に自己紹介をした。「神山豪だ。よろしく。」と。
俺もとっさに自己紹介をした。「俺は、徳山脩介…。」と。しかし俺の心は落ち着かない。このまま、彼女を囚われたままでは、帰れない。なので、俺は尋ねた。
「いつ、彼女は彼女に戻るんですか?」と。すると男は答えた。「いや、それはわからないよ。だが、この部隊のメンバーは、お前みたいに、彼女の安全を願って結成された仲間が沢山いる。案内しようか?」と男は言った。
部隊?仲間?俺の頭の中は疑問で一杯になった。なにせ、初めて連れてこられた場所だ。
「ま、ちょっと歩こうぜ。」と男は言って、俺を案内した。
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