第6話 後悔
「・・・」
魔物の攻撃を受け止めていた男は無言のまま重さがかかっていそうな短剣をいとも簡単に振り上げる。
フワッ
自分の倍以上ある魔物が宙を舞い数m先まで吹き飛んだ。
「す、すごい」
絶対絶命のピンチから突如一転し、少女は驚きの声を隠せない。
ガルルルッ!
ブラックタイガーは男に対して獰猛な声を上げ、睨みつける。
一方、助けに来てくれた男は信じられない行動を取った。
その瞬間、少女は先ほど感じた助かるかもしれないという希望は再び、打ち砕かれてしまった。
トン
何と、持っていた唯一の武器である短剣を地面の上に投げたのだ。
そして、その場で両手を上げると、
「・・・お前の獲物を横取りする形になってしまって申し訳ないが見逃がしてくれないか?」
あろうことか魔物に対して無防備の状態で話しかけた。
グルルルル
当然、魔物に人族の言葉が伝わる訳はない。
ブラックタイガーは変わらず、目の前の男を睨みつけたまま今にも襲いかかりそうな体勢をしている。
(何この人族はっ!?馬鹿なの!?)
いくら魔物との戦いに勝ち目がないと察したんだとしてもこの状況で武器を自ら手放すなんて。
魔人族の基準でも頭がおかしいとしか思えなかった。
(あの人族が襲われている内に逃げ出した方が良いのかな?)
少女は割と本気でそんな事を考える。
(いやいや、人族とはいえ、仮にも助けようとしてくれた人に対してそんな仕打ちは出来ないよっ!!ああ・・・今度こそおしまいかな・・・)
そんな思いを確信させるかのように魔物が行動を起こす。
ガァ!!!
猛々しい声をあげたあと、魔物が勢いよく男に飛びかかる。
「ああっ!?」
少女は魔物の行動を見て思わず声を上げ、助けに来た男が血にまみれる瞬間を見たくなく、思わず目をぎゅっと瞑る。
(うう・・・ごめんなさい。わたしを助けに来たばかりに・・・)
ドシンッ
少女が目を瞑った瞬間。
大きな音を立て、地面が震えた。
(ああ・・・次はわたしの番だ・・・)
少女は魔物の次の餌食となるのが自分だと理解していたため目を開けることができないまま、受け身の体勢で死を覚悟した。
だが、少女には何も起こらない。
「?」
(どうして何も起こらないんだろ)
少女は意を決して目をゆっくりと開ける。
「え?」
少女が目を開けると意外な光景が飛び込んできた。
「うそ・・・どうして?どうして魔物が倒れているの??」
そう。
助けに来た男の倍以上の魔物は背中から地面に叩きつけられたかのように仰向けで倒れていたのであった。
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