第1話 第10章 SAS751便不時着事故 調査報告書

【SAS751便不時着事故 調査報告書】

〈事故の概要〉

 この事故は、甦生暦九十一年十二月二十七日にラエヴネ空港を離陸したサテライトエアラインシステムズ(以下SAS)保有のDC-9-81M型航空機が起こした不時着事故である。

 当該機はラエヴネ空港に前日の夜二十二時十分に着陸し、その後野外にて駐機され朝を迎えた。機の離陸を担当したパイロットは除氷作業を行っていた。


 離陸は機長の操縦の下行われ、離陸方式はスタンディング・テイクオフであった。離陸滑走は正常に行われたが、機の離陸後、機長らは異音を感知した。この異音はコックピットボイスレコーダー(以下CVR)にも記録されている。

 離陸から約二十五秒後、右エンジンにサージングが発生した。機長はこの事態に対してエンジン出力を調整することで対処したが、サージングは止まる事は無かった。サージングは約五十一秒間秒間続いた。

 離陸から約六十五秒後、左エンジンもサージングを発生させた。この現象は右エンジンが推力を失った二秒後に発生した。

 両エンジンの停止後、パイロットたちは緊急着陸に向けた準備を開始した。機長は凡そ機の進路上にあった平原に着陸することを決定した。着陸の途中、機は平原周辺にあった木へと接触している。この接触によって右主翼が脱落した。機体は尾部から設置し、約百十メートルの制動の後静止した。この過程で機体胴部は三つに分裂した。


 航空機事故調査委員会の調査により、事故の原因は航空会社の除氷後の点検作業とパイロットらに通達されないまま搭載された推力操作装置にあることが判明した。離陸に伴い機体に付着していた氷片がエンジンに吸入されてサージングを引き起こし、エンジンを破壊するに至ったのである。


 根本原因は以下の二つである。

 ・杜撰な除氷後の点検で着氷が見逃された

 ・機体に搭載されていたATRシステムがパイロットの認知外にあり、適切な対処を執る事ができなかったためエンジンの破壊が助長された


 この事故の結果、SASには航空機事故調査委員会により十五の業務上の勧告がなされた。

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魔動航空機事故調査委員会 アヤバ @Ayaba0203

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