僕と風俗嬢!⑩

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 僕は、知人によく相談された。“童貞を捨てたい!”、と。



「女性を紹介するのは無理やで。僕は女友達が少ないからな。彼女に合コンをセッティングしてもらうのも嫌や。面倒臭い」

「ちゃうやんか、そういうお店に連れて行ってほしいねん」

「ああ、そういうことか。ええで。顔を見て選ぶ60分と、顔のわからない100分、どっちがいい?」


 どちらか、リクエストしてもらう。そして、僕は案内する。


「ここまで来たら、気に入った娘(こ)のいる店に入るだけや。僕は彼女がいるからそこの喫茶店で待ってるわ」

「わかった、行ってくるわ」


もしくは、


「ここまで来たら、女の子の準備を待つだけや。僕は彼女がいるから待合室で待ってるわ」


と、彼女のいる時の僕は見送るだけ。待つだけ。


 そして、店から出て来た時の知人は、爽やかで晴れやかだった。使用前と使用後くらい、表情に差がある。この笑顔を見ると、“ああ、連れてきて良かったなぁ”、もしくは“いいことしたなぁ”と思うのであった。



 だが、みんな、それから風俗にはまった。そして、別の知人から、


「お前、最近、風俗ばっかり行ってるなぁ」


と言われると、


「いやぁ、崔君のせいで……」

「崔君に風俗の良さを教え込まれたから……」

「崔君が……」

「崔君が……」


みんな僕のせいにするのだった。これはちょっと不愉快だった。



 ちなみに、僕は彼女に正直に言う。


「明日、風俗に行くから!」

「あんた、なんでそんなことわざわざ宣言するねん?」

「心配せんでええで、知人を案内するだけや。僕は遊ばずに待ってるから」

「ほんまに?」

「うん、ほんまやで」

「わかった、ほな行っておいで」

「うん、行ってくるわ」


全く後ろめたくない。



 ところが、営業をやっていた時は接待で、彼女がいても付き合いで、そういう店に入らないといけないことがあった。


 そういう時は、お金を払ってプレイはしない。


「脱がなくてええよ。僕も脱がへんから」

「なんでせえへんの? ほな、この時間は何するの?」

「僕、彼女がおるねん。今日は付き合いで来ただけや。時間までお喋りしようや」


 そして、彼女に報告する。


「今日、接待で風俗に行ってきたわ」

「あんた、なんでそんなことを堂々と言えるの?」

「プレイしてないからね。服を着たまま喋っていただけ」

「信じてええの?」

「信じてええよ」



 彼女のいない時は風俗ライフを楽しむが、彼女や嫁がいる時は、風俗に行ったからといってプレイはしない! どうやら誰も信じてくれないみたいですけど(泣)







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と風俗嬢!⑩ 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る