第11話 自転車2

 え?


 ってなるじゃないですか。いや、なったんですよ。

 だって全然届かなかったんだから。足をつま先までピーンと伸ばしても地面から10センチ近く離れてたんですもの。


 乗り方が違ったんか?


 そう思って、もう一回乗ってみたんですよ。


 ……………うん。


 まあ、やっぱ届かないんですよ。

 そりゃーね、さっき届かなかったんだし急に届くようになるわけないんですよ。無理無理。

 コレあれか? モニターで流れてたみたいに外国人モデルくらい足が長くないと乗れんのじゃないか? 170センチじゃダメなんか? アジア人に優しくない、ポリコレ完全に舐めた自転車なんか?


 しゃーない……さっきのお姉さん呼んでコレ替えてもらおう。そうも思ったんですけどね…


 呼べないですよー……

 カッコつけて……調子乗りまくって……「やっぱ足届かないんで替えてもらえますか?」なんて言えるわけねーんですわ。


 コレはもうこのまま帰るしかないな。と……


 信号待ちも出来んような自転車で帰るしかないな。と……


 そんで帰ったんですよ。足つかないまま。信号で止まる度に自転車降りながら。

 屈辱でしたねぇ……身の丈にも背の丈にも合わない自転車でオッサンが半泣きで帰るわけですよ。屈辱ですよ、そりゃあ。


 おまけにやたらサドル尖ってて……なんでああいうのって座り心地完全無視で作るんですか? ニ◯リとかそろそろ『座り心地のいいソファ自転車』とか出したらどうなんです?キャッチコピーは私が考えるから。いやむしろ皆さんやりますか? コメント欄で大喜利。


 まあ、そんなこんなでね……帰ったら地獄ですよ。

 そりゃあ奥さん怒りますよ。

 オレでも怒るもん。予算オーバー&股下サイズオーバーの自転車買って帰って来たら。ヨタヨタと自転車に跨る私を見るなり「返して来い」って言われました。


 でもね……それだけは出来んのですよ! 猫拾って来たんじゃないんだから! 

 だから土下座しましたよ。深々と。


「10年乗るから勘弁して下さい」


 そう言うて、なんとか奥さんにも納得してもらったんです。


 でもねぇ。もうコレ……今考えたら返しに行ってたらよかったんですよ……。

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