第10話 自転車1
私、自転車通勤なんです。職場近いんで車通勤の許可が降りないのです。
今の自転車は5年目くらい…かな?
これは、その自転車買った時のエピソードなんですけどね。
前の自転車がぶっ壊れて、さあ新しい自転車買わなきゃってことで自転車屋さん行ったんですよ。大手の自転車専門店。
ウチの奥さんにクレカ持たされて行ったはいいけど……お値段結構ピンキリで……これ予算ナンボくらいの感じでクレカ持たされたんやろ。ってことで電話したんです。
「えっと……お値段けっこう差があってね。いくらくらいまでならOK?」
「じゃあ……10万円かな」
衝撃でしたね。なんなら1万切ってるのもあるから「これでいいかー……」なんて思ってましたから。
10万円!? マジかよ……通勤用のチャリに10万出していいってさ! ウチの奥さん!
「まあ、通勤で毎日使うモノだし……大事にするんならいいよ」
ってことで。
ヒャッホーイ! カッケーヤツ買ってやるぜー! って浮かれておりました。
んで、まあ……店内を見て回ってたんですけどね。
購買意欲がダダ漏れだったんですかね。案の定、店員さんが話しかけてまいりまして……
「どういったモノをお探しですかぁ?」
ってね。私の苦手な若い女性店員さんが笑顔で……しかもちょっと可愛いんですよ。
「あ……通勤用の自転車探してまして」
「そうなんですねー。コチラとかいかがですかー?」
あら、カッコいい。お値段見ると3万円。
「うーん……いいんですけど。予算10万くらいでいいって言われてるし、もうちょっと……」
ちょっとカッコつけたかったんですかねー……私はもうちょい上のランクの人間ですよって……そしたらそのお姉さんパッと顔を明るくして
「そうなんですねー! じゃあ、こちらどうですか?」
見るとさっきのとはシルエットから違うスポーツタイプの自転車。飾ってある自転車の横にはモニターが設置してありモデルの白人男性が颯爽とオフィスまで疾走する映像が流されていた。
カッコいい。が……お値段12万円。
予算10万
まあ、もうね……こっちもカッコつけちゃってますからね。「どうもー。ワンランク上の人間です」みたいな感じで。
「いいですね。じゃあこれ下さい」キリッ
よく見もせず。12万円の買い物を即決でってカッコイイー! とでも思われたかったんですかねぇ……2万も……2万も足が出てんのに……
そんでお会計とか防犯登録とか諸々手続き中もそのお姉さんと雑談して……。
まあそんなこんなで帰りますよーってことになったんです。
そしたら、そのお姉さん
「表までお送りします」
って言うですよ。「ああ、どうも。ありがとうございます」ってね。ちょっとキメ顔で自転車押して外まで出たんです。
そんでね。そのお姉さんが笑顔で「ありがとうございましたー」って見送ってくれる中でね「どうも」ってね。
「いやー。いい取引だったよ。またお願いするよ」て感じの冗談飛ばしながら颯爽と自転車に乗ったらね。
地面に足、届かないんですよ。全然。
こりゃカッコ悪いわぁ……って照れ笑いしながら自転車から降りてお姉さんに
「あ。サドルの高さ調整してから帰るんで。もういいですよ」
って言ったんです。お姉さんはフフフッって笑いながら
「そうですか? では……」
ってお店の中に帰って行きました。
ああ……やっぱり私は最後までカッコつかない人間なんだろうなぁ……って思いながらサドル調整しようとしたら……
サドルの高さはね……
すでに一番下だったんですよ。
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