第9話 みんなそう思ってるんだよね?

 はぁ……はぁ……はぁ……どうやらけたようだな……


 オレか? オレは……普通の人さ。本当になんの事はない普通の人間さ。ただアンタらと違う世界……パラレルワールドってヤツから来た人間だ。巨大なマシーンが作り出した転移装置でこちらの世界にやって来た転移者ってヤツだ。


 この祭だからハッキリ言わせてもらう……アンタらは全員、狂ってる! 狂ってるぜ!?

 

 ヤツら突然この世界にオレを連れて来て色々と調べやがった。まあ要は『本当にパラレルワールドから来た人間なのか?』調べる為だろうな。ヤツらは色々と聞いてきたよ……

 

 まあ、まずは言葉だな。そこはなにも問題はなかった。

 オレもアンタらも『日本語』を喋ってる。意思の疎通に苦労はしなかったな。3日くらい会話を重ねて言語に違いがないことが分かった。

 次は地理や歴史の相違点だ。正直そこも違いがなかった。オレが住んでる地名は存在したし、歴史も……まあ、詳しいわけじゃあないが違いが確認出来なかったんだ。

 連中は焦ってたよ。『コイツ……本当にパラレルワールドから来た人間なのか?』てな。

 ふんっ……突然連れて来られたオレからしたらどうでもいい事だったけどな。

 そして最後は街中を歩かされた。『元居た所との違いはないか?』ってな。

 そこでオレは知ってしまったんだ。アンタらとの違いをな……最初見た時は……あ、足が震えたよ。

 

 

 

「は、はうあっ!」

 

「ど、どうした!? なにか違いを見つけたか!?」

 

「し、信号機が……」

 

「信号機がどうした!?」

 

「み、緑色だ」

 

「な、なに?」

 

「信号機だ! 黄色と赤色はオレの居た世界と同じだ! だがここのは緑色だ。オレの居た世界では『青』だった。信号は『青、黄、赤』だった!」

 

「そ、そうか。だがこの世界でも信号は『青、黄、赤』だぞ」

 

「な、なにぃ!? だったら……そうか! 『色の認識の違い』か! オレは緑と青の認識が逆の世界から来たってことか!?」


「いや……うーん……」


「アンタらは……そう! この空の青さを緑と認識してるわけだな!?」


「い、いや……それは青だ。山は緑だし、空は青だ」


「? じゃあ……え? あの信号は? 緑信号ってことだろ」


「いや……アレは青信号だ」


「ん? は? アンタはアレが青色に見えてるのか?」


「いや……緑だが……その……青信号なんだ。り、理由は知らんがアレは青信号なんだ」


「じゃ、じゃあアンタらはアレが緑だと知りつつ『青信号』て呼んでるってことか!? な、なんで、そんな……くそっ! アンタら全員狂ってるぜ!」


「あ! オイ! 逃げるな! そんなどうでもいい相違点で発狂するんじゃない!」





 ってなわけで逃げてきたのさ。

 な?

 アンタら全員イカれてやがるのさ。






 ────────

 

 

 

 

 と、まあアホな文章でしたけど……

 

 実際は「新聞が青と報じてしまったから」。 らしいですね。日本で最初に信号が設置されたとき、それを報じた新聞記事が「青信号」 と記載したからだそうです。

 

 先日、息子に

 

「いや、アレ緑じゃん」

 

 って言われて困ったからね……

 皆様が困りませんように。

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