第4話 人見知りモンスター

 父親がコミュニケーションモンスターだって……前々回くらい言ったじゃあないですか。


 ある日……まあ、だいぶ前の話なんですが……ウチの父親がね、親しげに電話で誰かと話してたんです。


「うん……うん。はい。じゃあ……ははは。じゃあ、また。はーい」


 って。言うて電話切ったわけです。

 ウチの父親って自営業なんで、お客さんかな? と思って聞いてみたんですよ。


「誰だったの?」


「ん? 間違い電話だった」


 え?


 ウソだろ?


 じゃあ、また。って言うてたやんか!じゃあ、また間違えてね。ってこと? 


もうワケ分からんでしょう?


 というわけで、ウチの父親はこんな具合にコミュニケーションモンスターなわけです。

 行列並んでても前の人とかと話しはじめますしね。


 じゃあ、私はどうかって言うと……


 いやぁ……人見知りだねぇ……


 むしろ知ってても知らないフリするくらいだから。まあ、インケンってヤツです。


 うん、そうだね。オレぁインケンなヤツなんだよ。


 どうにもなんねえ。


 コレだいぶ前の話なんだけど……スノボ行った時なんかさ。


 山登るのにロープウェイ乗るんだけど、4人乗りでね……他の3人、全然知らない人が乗り込んできちゃったのさ。


 まあ、ちょっと乗るくらいだから人見知りじゃなくても、別に話しかけたりしないんだろうけど……人見知りのくせに父親のコミュ力見て育ってるから妙に意識しちゃってね……


 もう……どうしたもんかと。


 これは、なんか話かけた方がいいんじゃないかと。


 なんなら小粋なダジャレでもぶちかましてやろうかと。


 ねえ。


 とまあ、色々思案しておりましたところ……


 話を聞いておりますとね、どうやらこの人達……医療関係の人達。


っていうか医者みたいなんですよ。


 コイツぁやべえ!! と。


 こんなハイソな人種にオレの小粋なダジャレが通用するのかと。


 っていうか、その小粋なダジャレをキッカケに今の医療事情など聞かれたらどうしようと……


 冷静になってみると、そんなこと考えなくてもいいことなんですが……まあ、その時は軽くパニくってしまいまいしてね。


 どうしよう!? と。


 まあ、そんなことを考えておりましたらね。


 なにやら腹の底からこみ上げてくるものを感じましてね。


 まあ、ハッキリ行っちゃうとオナラをですね……したくなっちゃいましてね。


 この密室で!


 知らない人達を相手に!


 人見知りの変態が!


 ダジャレどころか屁ぇぶちまかしてしまいそうになったんですよ。


 ああ……これはいかん! と。


 なにか気をそらさねば! と。


 思ってですね。


 手元にあったスキー場の説明書きみたいなものがあったんで、それを見ようと思ったんですよ。


 そしたら、横から手が伸びてまいりましてね……


 どこの馬の医者かも分からんヤツにソレを横取りされたんです。


 もうね……


 なにしてくれてんだ! と。


 お前、喋る相手がいるだろうが!! と。


 オレの逃げ場所を横取りしやがって!! と。


 憤慨しておったんですが……

 なにせ、人見知りが激しいもので、文句など言えよう、はずもなくてですね……


 しょうがないんで、下を向いて……


 ずーーーーーーーーーーーーーーーーっと……我慢してたら……


 顔が……梅干し。 


 梅干しみたくなってたんです、外見ようと思ったらガラスにその顔がうつってたんです。


 と、まあ……そのくらい……


 私は人見知りなんです。


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