第3話 次の任務

新たな任務

 宿での事件が解決した翌日の朝、ダクティーは仕事用に泊まった宿のロビーでベルデルと待ち合わせしていた。


「待たせたな」


 ベルデルは片手で頭を触りながら、ダクティーの前へ現れた。


「いえ、時間通りなので大丈夫ですよ」


「そうか」


 ダクティーが立ち上がると、ベルデルは眠い身体を動かして、入口の方へ歩き始めた。


 ダクティーとベルデルは王都の通りを通って、所属しているレッドフィールド探偵事務所の本部に戻っていた。


 レッドフィールド探偵事務所は王都最大の探偵事務所で、リーダーであるジェフ所長の下、王国の衛兵隊では対応しきれなくなった王国の犯罪を代わりに取り締まっている。


 衛兵隊とは違い国の組織ではないため、有料で事件の解決を引き受けており、そのため貴族や商人などの富裕層が主な顧客となっていて、兵隊とは違いその分犯罪者を捕まえることに特化しているため、専門性が高い。


 「着いたぜ」


 しばらく歩くと、ダクティー達の目の前に黒塗りのコンクリートで作られた、王都の中でも特に大きなビルが現れた。


 ガラス張りの入り口の扉を開くと、広いロビーに出た。


 ベルデルはロビーにあるソファーへ腰を下ろした。


 「俺は後から行く、先に報告して今日は解散だ」


 「ではお先に失礼します」


 「ああ」


 ダクティーは挨拶を済ませると、ロビーにある受付へ向かった。


 「こんばんは、ベルデル探偵の助手のダクティーです、任務が終わり報告の方をしに来ました」


 ダクティーは受付嬢にそう告げた。


 「分かりました、502号室に行ってください、そこにパンドーラ部長がいらっしゃいます」

 

 この事務所では各仕事が部門に分かれていて、部門のリーダーである部長が存在していて、これから探偵部門の部長であるパンドーラのところへ向かおうとしていた。

 

 この事務所は王国全土を担当していて、事件の捜査以外にも警備や調査を請け負っているので、その仕事の多さと範囲の大きさからこれほど大規模になっている。


 「五階ならテレポーターを使った方が早いな」


 そう呟いたダクティーは、階段の入り口付近にある、籠のような部屋の中に入ってから五階と書かれているボタンを押した。


 その瞬間、籠は光を放ち、光が止むと五階にある籠の中へワープしていた。


 ダクティーは籠から出て、身だしなみを確認すると、503と書かれた部屋の前に立ってノックをした。


「失礼します、任務の報告をしに来ました」


「入れ」


 そう言われて部屋に入ると、部屋の中にはパンドーラとおそらく秘書と思わしき女性が立っていた。


 パンドーラはダクティーの方を見て口を開いた。


「ベルデルはどうした」


「まだやることがあるらしく、あとから来るとのことです」


 ダクティーは答えた。


「まあいい、用があるのは君の方だからな」


「私の方ですか?」


 ダクティーは息を呑んだ。


「そうだ、昨日の仕事は実にみごとだった」


 パンドーラは手元の資料を見ながら続けた。


「あのわずかなガラス片から違和感を感じ取り、高度な魔法鑑定により盗賊の侵入するタイミングを見極め、見事解決に導いた」


 パンドーラは資料から目を離し、ダクティーの方を見た。


「君の優秀さを見て、君なら彼女と新人同士で組ませることができると思い、そこで明日から君たち2人と指導役の探偵1人でチームを組ませることになった」


「分かりました」


 ダクティーはすぐに納得した、昨日の仕事で自分が試されていたことはなんとなく分かっていたので、すぐに異動があると考えていたからだった。


「ところで、そのメンバーは誰と組むのですか?」


 ダクティーは尋ねた。


「ああ、リーダーは探偵のバルカンがやってくれる、探偵歴30年のベテランだ」


 パンドーラは続けた。


「もう1人はジニアという君と同じ新人だ、なにより彼女は……」


 それを聞いてダクティーは複雑な表情をした。


「分かりました、打ち合わせ等は……」


「今日から担当してもらう事件がある、顔合わせはそこで済ませてくれ」


 パンドーラは懐中時計を取り出して、時間を確認した。


「もう時間だ、今回はこれで以上、次の現場は3丁目のアパートだから、そこへ向かって2人と合流してくれ」


 ダクティーは会釈すると、部屋を出て行った。


 


 

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