第2話先輩
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現実はとても眩い光を放ち
俺達のことをみつけるんだ
どんな小さな罪もかくせないように
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部活は演劇部、席を置いていただけって感じ。けど、先輩達と過ごすことが楽しくて、俺はすごくそこが好きだった。
入学して間もない俺と友達は、正門近くの掲示板の前で二人の先輩達に声をかけられた。三年生の風格なのか、やたらと恰好いい部長のオオツ先輩と、ずっと笑顔で話す優しそうな先輩の二人だった。話し方のテンポがよくて、聞いているだけで楽しかった。オオツ先輩はただ静かに笑っていた、俺のことを見て。
なんだか目が合って恥ずかしくなった、無防備に笑ってただけだったから、だから恥かしくなったんだ、見られていたことに気づいて。俺はオオツ先輩のことを一生懸命見ないフリした。
数分話を聞いて、俺達はその場で部活の希望リストにサインをした。ま、なかば強制的な部分もあったけどね。これで実質演劇部への入部が決定することになる。
オオツ先輩は細身で背が高い、俺はあんまり高いほうじゃないから、羨ましかったな。とにかく恰好いいんだよ、そこにいるだけで。男子として憧れる部分を全部持っている感じかな、同級生には絶対にいない存在感だった。まっすぐな気性と男気で人気者、後から知ることになるけどオオツ先輩は学校全体で有名な人だった。
俺は頼りなくて、そこは本当に自覚していたくらいにひょろひょろで、なにかのお菓子のおまけみたいだと先輩達からかわれるくらいに男子としての資質に欠けていたからさ、オオツ先輩の存在は眩しすぎたな。
でも、オオツ先輩は可愛がってくれたよ。
あ、いや……俺にだけじゃなくさ、誰にでも世話を焼く、面倒見のいい先輩だったんだ。
新生活にも慣れて部活も楽しかったけれど、あの頃の俺の周りって、クラスメイトや家族のことでごたついていたから、週に数度はヤケになった勢いで早帰り、部室にはあんまり顔を出せなくなったりした。
すると、ある日オオツ先輩によばれた。
で、教室と体育館の間に渡り廊下があるんだけど、そこは人が来ないってんで話そうって言われて、行ったんだ二人で。
先輩は、遠まわしにいろんなことを訊いてきた。回りくどく感じた質問は気を遣ってくれていたんだとわかったよ。でさ、あんまり先輩が親身になってくれててね、で、俺、どんどん先輩の優しさに安心しちゃって、その内に吐き出すように話しちゃって、なんかもう止まんなくてなって、声が詰まった拍子に不覚にも泣きそうになってしまったんだ。
したら、そん時ね、オオツ先輩が俺のことを……俺の腕を掴んで抱き寄せたんだ。
泣きそうだったのを辛抱するのに必死で、咄嗟の状況に余計に混乱した、で、慌てて条件反射みたいに離れようとしたら、今度は強く抱き締められた。
不自然に不器用に、俺の上腕を強く掴んで、俺のことをひっぱり寄せて、ぎゅって。
先輩の胸しか見えない。
すげーおかしな気持ち。
恥ずかしくて、さすがに抵抗しようかとも考えたけど、結局俺は、されるがままだった。なんかあったかくて、甘くて、痺れるような感覚が腹の奥底に生まれた。
俺はその日から、先輩のことを忘れられなくなったんだ。
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