whole lotta love胸いっぱいの愛を

きゃんでぃろっく

第1話告白

幼い頃から性にめざめていた気がする。

「自分は異端なんだ」となんとなく感じていた。そして高校1年生になったとき、先輩ヘの気持ちをはっきりと自覚した。戸惑いと嫌悪、なんとかその気持ちを封印しようとしたけれど、初めての性体験で俺は、先輩の姿を重ねてしまった。もっと最悪なのは、俺はその興奮を手放せなかったことだ。

そんな頃に出逢った同級で他校生のカズキ。

彼もまた、自身の性癖を認めつつ嫌悪していた。

いつしかとりあった手、だけど、親友だったはずの俺達はあまりにも幼すぎて、互いのことを傷つけあうことしかできなかった。


現実は……とてもまばゆい光を放ち、俺達を見つけるんだ。

どんな小さな罪もかくせないように。


whOlE*lOttA*lOvE

Led Zeppelin - Whole Lotta Love (Official Music Video)

https://www.youtube.com/watch?v=HQmmM_qwG4k



 経験、そう、あの頃のいろいろな経験が俺を染めた。『ダレにも話したくない

ダレかにだけは話したい』そんな経験。今でも『腹のソコがじわっと疼くよな記憶』、今でも『思い出せば叫びたくなるような衝動』、『もう二度と味わえない甘く痺れる興奮』……誰もが、きっともっているはずだ。


 ん……とね、俺、かなり早い時期から性に対しては目覚めていたんだと思う。幼い頃に親のSEXを見ちゃって、ものすごいSHOCKとワケのわかんない興奮? 刺激? を体験したから。親っていったって彼らとは同居したことがないし、離婚していた……だろうし、まあ、ほとんど他人のを見たって感じなんだけど。

で、なぜか俺ね、ちっこい頃からよく痴漢にあったんだよね。ははは、笑いごとじゃないんだけどさ、なんでかなって、自分はそんな生きものなんだろうかって悩んだ時期もあった。そうしてさ、だんだん性に対して否定的というかね、なんかとても不潔なものだと感じるようになっていってね、特に女性に対してなんだけど、俺は純潔を守ろう、なんてことを考え始めちゃったりしたんだよね。

ほんと、俺ん中はいつもおかしかったんだよね、どこかが。


高1。

友達らが性体験していた中、俺はただの傍観者になっていたよ。性的欲求に欠けていたのかな? いや、そんなに、肉体的に追い詰められることがなかったって感じなんだよな。逆にね、皆ってなんか不潔だな……なんて思っていたくらいだし。男子校だったから会話の内容も口調も言葉も遠慮なんかいらない、いつもまわりはSEXの話で盛り上がっててね、下品な話に吐き気がしたな。目の前で飛び交うハラスメントワードが本当に厭だったんだ、だからただの恋愛話でも敬遠していた。

なのに、そんな俺はある日告白されてしまう、よりによってクラスメイトから。手紙をもらった、すぐ捨てちゃって内容はよく憶えていないけど……いや、嘘、


スキだ


ってはっきりと書かれてあった。そいつとはクラスメイトなだけであんま仲がいいってこともなかったけど、よく話しかけてくんなって思ったことはあったね。でね、手紙のことも悪ふざけかもと思ってさ、大して気に留めなかったんだよね。


 ところが、そいつ、本気だったのかこともあろうか他の奴にも話してて、数人はこの件を知ってしまうんだよ。授業中ふと視線があったり、何気なく顔を上げるとよくそいつと眼があうことが多くなりだして、周りの奴らもコソコソと俺の様子を窺うようになっていたんだ。俺は迷ったけどあえて返事を避けていた。そいつが気をまわして、NOと受け取ってくれることを期待したんだ。

だけどそれはマチガイだった、そいつだけじゃなくクラスの数人が、俺のことをなにか変な眼で見るようになっていたんだ。なにかの拍子に冷やかされたり、わざとぶつかってきては意味ありげに笑われたりしてさ……愉しんでたな、奴ら。それがただのJOKEだったのかどうかは未だにわからないけどね。

このままじゃもっとエスカレートするかも、と心配していた矢先、とうとうそいつが今度は、俺に、キスをさせてくれと伝えてきた。

休み時間、特別教室への移動前だった。

俺は自分のロッカーから教材を取り出していた。そいつは、俺の背から声をかけてきた。俺は振り向きもせず、教材を胸元に抱え込みながら準備を続けた。

「コウサカ、ね、聞いてほしいんだけど」

「待って、少し」

厭な予感がした。

「なに」

教材を抱え、ダイヤルをロックして振り向くと、そいつの向こうに数名ががやがやと騒いでいる、やたらと騒がしい教室の端っこで、

「キス、させてよ」

と、言う。

俺は、顔面が真っ赤になるのをはっきりと自覚した。

そして、俺は、完全に正気を無くしてしまったんだ。

そいつの胸を押しのけ『近づくな』と警告した後、大声で、他の奴らの前で、全くの無関係な者達の前で、ありったけの汚い言葉でそいつのことを罵った。


それからクラスは、ぎこちなくなった。

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