第9話 そのまま探索者

「ちょ、ちょと待ってください、そんな周りも警戒しないでズカズカ先進まないで!」

「あーすまんすまん、ちょっと人目の引く所じゃ言えない事あってな!」

 それだけ言うとダンジョンの5階まで一直線で降りて行った。

 地図って便利だな。

 途中出てきたモンスターはワンパンで倒した。

 ざっくりダンジョンは、1階ならレベル1、2階ならレベル2、って感じです階を重ねる毎にモンスターのレベルが上がる。

 だいたい、最初は弱いモンスターばかりでゴブリンやら、コボルドやら、ホーンラビットやらが出るが5階毎にもっと強いモンスターが混ざってきて、下に行くほどレベルとモンスター自体の強さが上がるんで、加速度的に危険度が上がる。


 で、自分のレベルがだいたい行ける階層の目安になる。


 なので、5階くらいならまだまだ大丈夫なはずなんだが、ポアンは割とビビってるな?

「あれ?ポアンってレベルいくつ?」

「10ですー」

「じゃあ、これくらいの階層余裕だろ?」

「何言ってるんですか!5人パーティで自分たちのレベル程度の階層が常識ですよ!

 しかも、ショウさん全然装備してないじゃないですか!」


 おー勘違いしてた。

 そうか、普通はそれくらいの人数でダンジョン潜るんだっけ。

「悪い悪い、まぁ、それは置いといて、ちょっと俺の秘密を共有しておきたいんだ。

 マリー、出てきて良いぞ」


『ふぅ、やっと出てこれたわ』

「はわわわ、人工精霊が喋ってる!」

 そういえば人工精霊って喋らないんだっけ。


『ちょっと特別だと思っておいて、でも他の人に言っちゃダメよ』

「初対面なのに、そんな秘密喋って良いんですか?」


『一緒にダンジョン探索するなら隠しきるのは無理だからしょうがないわ』

「もし言っちゃったらどうするんですか?」


「それはお互いあまり楽しくない結果になると思うから、言わない方が良いと思うぞ」


「えええ!処されます?私、処されます?」

「あ、いや、俺たちが何かするんじゃなくて、欲に目が眩んだ奴がポアンを人質にして俺のゴーレム盗もうとするとかなったら、俺は絶対ゴーレム選ぶから、悲しい結末になるだろ?」


「ゴーレム?」

「あーそうか、俺はゴーレム乗りでゴーレム持ってて、それのAIがマリーなんだよ」


「あ、はい」

 イマイチ理解してないみたいだけど、後で見せれば良いだろうから今は放置。


「とにかく、言わない方が危なくないって話だ」


『そんな事より、ポアンちゃんは何が出来るの?』

「えっと、ひと通りなんでも出来ます!」

 ポアンが元気に答える。


「ん?それは得意なものは何もないってのと同じじゃねぇか?」

 その言葉で、ポアンがシュンってなった。

「…はい」


『もしかして魔導鍛治師になるつもり?』

「あ!はい!そうなんですよ!普通の鍛治師だとどうしても男の人に勝てなくて、幸い他のドワーフより魔法の相性良かったんで、いっそ魔導鍛治師目指そうかって思って!」


「マリー、説明プリーズ」


『マジックアイテムを作る鍛治師よ、ゴーレムもマジックアイテムの一種だから極めればゴーレムも作れるわよ、私たちにはピッタリの人材ね』


「おーギルドマスターいい仕事するじゃねぇか」


『その代わり物理と全魔法を平均的に育てないとならないから、物凄く成長するのに時間かかるわよ、育てば有効だけど、育てるの大変だから、都合よく押し付けられたんだと思うわ』


「くっそー、俺らにも利益あるから文句いえねぇ」


『こちらの事情を話すわね、ゴーレムを運用したいから魔石は売りたくないの、魔石以外の部分でお金稼げるモンスターに心当たりない?』


「有るには有りますが、ずっと下の階ですよ」


『何階?』


「22階から25階までがアリの巣になっていて、そこのアリの外骨格は防具の材料として需要高いですね、ただ、20階を超えるのが難しいんで」


「ボスだっけ?」


「はい、そこが越えられないって人達が沢山います」


「ウチはゴーレム居るから大丈夫だろ、な?」

『そうね、大丈夫だと思うわよ』


「とりあえず、今日は10階まで下がって石碑に登録してしまおうぜ」

 ダンジョンには5階毎に石碑が有る、そこを触ってダンジョンに認識させれば次はその階から挑める様になる。

 帰りは自力で歩いて帰らないとならないが、それでも次来た時に大幅な時間短縮になる。


「あのー聞いていいです?」

『なーに?』


「ショウさんって強すぎませんか?」

 ショウが目の前のオークの群れを素手で倒してる姿を見ながらマリーに聞いた。

『あら、気づいたのね、本人は兵士になった時に鍛えられたって思ってるけど』


「そういうレベルじゃないですよ、普通ゴブリンにだって素手じゃ戦わないですよ」


『あの人の兵士時代に言われてた通り名は“狂鬼”よ、凄いのは本人全く自覚ないって所よね、バカなんだか、鈍感なんだか…』

 最後に1匹を殴り殺したショウを見ながら、呆れた口調でそう言うのだった。

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