第2話 いきなり敗残兵2
「ところでどうやってここから出るんだ?」
『今は扉動かせる人いないから、力ずくしかないわね後ろの方の壁が役人のピンはねの皺寄せで壁薄くなってるから、殴れば壊せるわ』
「殴ったら指先壊れねーか?」
『大丈夫よ、あなたが言ったようにマニュピュレーターを防護するカバーが出るわ』
「へー凄いな、どうやるんだ」
『まずは右肩にある火属性変換器を起動して』
「右肩?おかしなところに不思議なもんつけたな」
『何言ってるの!あなたが右肩をくらい赤にしろとか言うから、火属性変換器で赤くなるようにしたんでしょ!』
「俺そんな事言ったっけ?」
『もう…酔って記憶無くすのほんと嫌だ、左肩は偽物だ右肩にしろって』
「そもそもなんで火属性変換器なんてつけたんだ?」
『あなたが俺のこの手は真っ赤に燃えないと殴れないって言ったからでしょーが!
そのくせ火属性扱えないせいで、やっと苦労して属性変換器開発して取り付けたのよ!」
「色々すまん、マジで覚えてなくてごめん、それで火属性パンチはどのくらい強化されてるんだ?」
「変換器のエネルギーロスや、無理な事してるせいでリソース持っていかれて、火属性強化分と差し引きで5%ほどパンチ力低下してるわ」
「なんじゃそりゃ!ダメじゃん!」
『あなたのせいでしょ!絶対燃えなきゃダメだって!』
「はい、すいません、ごめなさい」
『増幅器に換装出来れば威力が倍増するから、火属性扱えるようになって』
「う…頑張る…ところでそんなパンチ力落ちて壁壊せるのか?」
『私を誰だと思ってるの!このサイズでもスペックは一般的な大型ゴーレムと変わらないわ!』
「お!すげーな!」
『MP満タンの時はね』
「ん?何か言ったか?」
声が小さすぎて聞こえなかった。
『何でもないわ!早速壁壊して逃げ出しましょう!』
「よっしゃあ!うおりゃー!」
『…』
「…」
俺たちが壁を壊した先は街がゴブリンで埋め尽くされている光景だった。
「あんのクソ豚野郎!あいつもグルだったのか!」
侵攻を守るはずに門が開いている。
『確か、ここの領主は王族派だったはず、寝返ってここより良い領地もらうつもりね』
「いらねぇから蹂躙させてもかまわねぇってか!いつか絶対ぶっ殺してやる!」
『そうね、この機体もまだまだ強化する余地あるし、貴方も強くなれば、飛躍的に性能伸びるわ』
「どこ行く?」
『西ね、迷宮都市があるわ、あそこなら強くなれるし、身柄隠せるし、一石二鳥よ』
「王都は?」
『この機体接収されて終わりね』
「じゃあ、迷宮都市目指すか!
まずは、このゴブリン共かき分けて街から出ないとな!」
『それなら左手の最高ガン使えばいいわ』
「左手の最高ガン…まさか俺、やっちゃいました?お酒の席で」
『あなたの要望なのは間違いないわ、実弾の方が運用楽なんだけど、どうしてもビーム兵器にしてくれって言われて、小型の魔導砲開発して付けたわ』
「あ、そ、そうなんだ、どうやって使うんだい?」
『まず、腕のところのチューブを引き出してお腹につけるわ』
「それも俺が言った?」
『ええそうよ、斬新なアイディアで気に入ってるわ、今後の拡張性も高い機能よ』
そっかぁ、酔っ払って色んな所の色んなものをごちゃ混ぜにしちゃったんだなぁ。
俺、好きだったもんなぁロボットアニメ。
こっちで乗れないってなって、絶望したもんな。
一部ロボットじゃない設定も混ざってるけどね。
そんな事を考えながらチューブをお腹に取り付けた。
ゴブリン達もこちらに気づいて近づいて来てるが、危機感は全然感じない。
「で、どうするんだ?」
『薙ぎ払え!のキーワードで発動するわ』
…
…
…
「俺、酒少し控えよう…」
気を取り直して。
「薙ぎ払え!」
ビュゥゥという音の後、閃光が辺りを包む。
ゴーレムの中だから直視してないから大丈夫だが、この光見たやつって失明するんじゃなかろうか。
最高ガンの威力は俺の想像を遥かに超えた。
周辺にいた、何百匹というゴブリンは全て魔石に変わっていた。
モンスターを倒すと手に入る石だ。
魔導系のアイテムのエネルギーに使える、ゴーレムもエネルギーとして使える機体もあるという話だ。
『…出力間違っちゃったみたいね、エネルギーが無くなる寸前だわ』
「どうするんだ?」
『魔石を回収しましょう、エネルギーに変換する機能はちゃんと付けてあるわよ』
「お、さすが最新鋭機!」
『まあね!腰のホースを右腕の内側に付けて、手首の先に背中の装備してるノズルを装着して、伸ばして』
掃除機じゃん!
このゴーレム掃除機じゃん!
『はぁぁ、ゴブリンの魔石じゃ全然エネルギー貯まらないわ、せめて操縦者がもう少しマシだったらなぁ』
「お前、そういう言い方ないだろう!」
『あなたのPが小さくて全然持たないから、私が満足出来ないんでしょう!
せめて何回も出来れば良いのに、全然回復しないし!』
「俺のMPをPって略すな!なんか男として悲しくなるじゃねぇか!」
『粗P野郎』
「くっそー俺の悲しみの涙返せ!お前の為に泣いて損した!」
『そう?私は嬉しかったわよ、万が一の為に魂を移せる機能付けておいて正解だったわ、貴方の本音聞けたし』
「なぁ、思ったんだけど、こんな機能付けるって事は命狙われる危険性は前からあったのか?」
『そうね、あなたが酔った時に色々話してたものはどれも斬新で面白かったわ、だからあなたの為にあなたがゴーレムでやりたかった事を全部出来るようにって研究したの。
その中にはゴーレム運用の常識を覆すものもあったわ、他の技術者は女で身分の低い私が大発明するのを何としても阻止したいと思ってた人も沢山居たの、それは私も気づいていた。
全然違う理由で殺されちゃったけどね』
彼女の声が寂しく聞こえた。
「ここから西に行って、もっと強くなって、俺が全員ぶっ殺してやる!心配すんな!ホムンクルスだって最高のやつ作ってやる!」
『ありがとう期待してるわ』
「まずはずらかろうぜ!」
こうして、1人と1機のおかしな冒険譚が始まった。
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