第38話

遅れました。

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空間断絶を放った直後、振り抜いた刀はチリになって崩れていく。微かに吹いている風によってこの階層に舞い散りながら…


こうなると分かっていたから俺は、インベントリから普段使わないけど勿体無い思考で取っておいた、まあまあ品質の良かった刀を使ったのだ。


剣神はまあまあ面倒臭い制約を受けている。


それが「専用の剣を使用しないと一太刀で消え去ってしまう」と言う理不尽な制約を持っているのだ。専用の剣は思考を持ったインテリジェンスウェポンである。剣神になったと同時に自身の半身として生み出される使用なのだ。


剣聖は剣に好かれるが、剣神は剣に畏れられるのだ。


その分剣神専用武器は破格すぎると言うより、使用者本人にとって1番使いやすく設計されている上、とてつもない性能もしている。その代表例が「自動反撃モード」である。それが剣神として名を出したあの時の「剣戟結界」である。


と言ってもあの時は俺の剣技ではあるがね。だって専用剣出してないじゃん。まあ、あれが剣戟狂気の上位互換というのは本当のことじゃないけれどね。

嘘はついていない、嘘は。




だって剣神状態自体が上位互換なのだから。


『………………こ、これは…何故、何故俺は意識が戻っているのだ?そして、何故動けん…?』


「コマとして動かされていたお前に同情して、答えを教えてやろうとね。生かすことは出来ないが、お前ほどの者が何も知らず、気付かずの状態で死んだ事にも気付かせてやれなかったら、それはあまりにも不憫すぎる。お前はただ、後ろにいた奴らに動かされていただけのコマだが、剣聖にも至れた強者だ。」


『………はっ!なるほどな!そういうことか!…俺は敗れたのか…——少し、聞かせてくれるか?』


「空間断絶はその空間そのものを斬る技だ。何をするにも必要な土台である空間なんだ。スキルだってなんだって行うためにはその空間が必要だ。空間の無い世界なんて存在しない。していいはずがない。世界を形成するのに必要な土台がないんじゃ産まれるはずもない。」


『つまり何が言いたいんだ?』


「お前と俺を監視していた奴はもうこっちを見ることは出来ないってことだよ。」


『——っ!』


「だが悪いね。俺はお前を見逃す事も生きて帰してやる事もできない。と言ってもアイツらがお前を逃す事もないだろうがね。たった数分のこの自由をぜひ楽しんでくれたまえ。」


『——はっ!それはお優しいことで!…ほんと、お優しいことで…』


「で、1番聞きたいのはやっぱり、剣神のなり方かな?」


『教えてもらえるのか?というよりまず聞きたいのは、何故俺はこの状態で意識が保てているんだ?』


「簡単な話さ、俺の魔力操作で延命しているんだ。」


『——ほんと、何もかも俺は咬ませ犬だったって訳だ。お前、おそらくになるがさっきも全く本気でやっていなかっただろう?魔力が流れている人間が、魔力で出来ている魔物を魔力で生かしているなんてな。普通逆なら問題ない事が多いが人間が魔物を延命なんて不可能だぞ。


ほんとどれだけ非常識さを見せつければ気が済むのやら』


「見せ付けてるわきゃないやろ!少しやりにくいだけで難しくはないやろがい!」


『はぁ…お前それ人間で例えたら血液型O型の人間にA(O)、B(O)の血液型の血液型からOの成分だけ抜き取って輸血し用途しているのと同じくらい難しいんだ。異常って自覚しといた方が身のためだぞ。』


「それ不可能やろがい!難しいどころの話じゃ無いやろ。」


『まぁいい、さっさと剣神の成り方を教えてくれ、自分でなりたい気持ちも無くはないが、知っておきたい気持ちの方が強い。』


「簡単さ、剣聖の状態で、剣鬼、剣王、剣帝、そして剣聖に勝利する事だ。剣鬼とのバトルから神が見ているから一年以内に決着をつけなきゃいけないタイムアタック仕様だ。」


『それは簡単とは言えないだろ。』


「もう一つ方法がある。剣神から師事を受けて最後、剣神に勝利すれば剣神の称号を受け継ぐ事が出来るぜ。」


『……お前はどっちで剣神になったんだ?』


「そりゃ、…秘密さ。だが、師事する方はあり得ないと思った方がいい。正直本当に信用を勝ち取らないといけないし、そもそも俺は受け継がせる気は無いからあり得ないのよね。


だから世界に一人居たら凄い称号なんだよね。」


『自分で言うな。はぁ…もしかして一つ目のルールクリア不可能だよな?』


「正解。剣王と剣帝は一年の間に同時に存在する事はイレギュラー以外あり得ない。と言う罠なんだよね。ホントに意地が悪いと思うだろうけどそれ程、剣神がイレギュラーだって言うことなのだよ。」

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