第34話

『え?…は?冗談だろ?お、お前が…お前が剣神…だと?』


狂気に包まれた状態でも驚きが勝つんだなぁ。

剣戟結界は剣神であるものしか出来ない強力な技だ。


名前の通り、この技は剣戟狂気の上位互換の技だ。だがその実中身は全然違う、元になっているはずなのに殆ど原型の欠片も無い。唯一同じなのはこの技も狂気同様、術者の状態変化の技な事だけだ。



ただこの技は狂気とは真逆、感情の無を極めるようなものだ。俺はこの技を極めたから感情の上下はないがこうやって思考することはできる。

まあ過去、異世界の事を含めても剣神にあったことは無いから、これが極めたのかどうかは分からないんだけどな。


『クソッタレがぁ!元々俺の勝ち目はなかったってことかよ!俺を馬鹿にしてたのか!?ずっと俺を嘲笑っていたんだろ!?』


「お前がそう思うんだったらそうなんじゃないか?一つだけ言わせてもらうと俺はお前のことを弱いとは思っていたが、決して馬鹿にはしていなかった。踊らされておるなぁとは思っていたが、嘲笑ったりはしてない。」


踊らされている元凶は今でもずっと見ているが、俺自身そいつから見たら全くの別人に見えているだろう。念には念を込めて魂まで細かく偽装しているから、俺には絶対に辿り着けないだろう。以前、声、見た目だけを変えていたら匂いでたどり着いたやつがいたんだ。


本当に面倒なんだ、こう言う後ろに厄介そうな存在がいるって言うことが…力を示せば示す程無駄に興味を稼いでしまう。稼げば稼ぐ程こちらへの干渉が強くなると言う付属品が付いてきてしまう。本当に面倒なのだ。


異世界の時でも一国の国王に目を付けられた時はストレスが溜まったもんだ。無駄に利用された時は殺してやろうかっ一国の相手したろうか!?と思ったが無駄に一国の相手すると他の国も首を突っ込んで来る可能性が高いから止めていた。


勿論国王の仕事を増やすと言うささやかな嫌がらせをさせてもらったけどね。ヤラレっぱなしは嫌いなのだ。


話が脱線しすぎたな。戻そうか。


ちなみにこのダンジョンに入った時から偽装しているから、ストーカー野郎のカメラには偽装した俺しか映っていないだろう。


にしても盗み見してるアイツら不可思議な力を持っているが何者なんだろうか。


『まぁいい、どうせ勝てないとわかっていても俺はもう引けないんだ。お前を殺すか、俺が死ぬかのどっちかしか道がないんだ。そろそろ俺は……俺の理性は消える。俺はこの剣聖の間この技を研究していた。それのおかげで俺は今、理性を飛ばさずにいられる第二段階になったら俺は理性が飛ぶ、だがお前相手じゃその程度、傷一つも付けられず、あっけなく死ぬだろう。


だから俺は理性を消してお前に挑む。それが俺にできる最高の力だ。最高の死に場所をくれたお前に向けたささやかな贈り物だ。それをもってこの戦闘を終わらせようじゃないか。』


随分覚悟を持って……いや、覚悟を決めたなぁ。これはちゃんと返してやらないと不義理過ぎるな。ここはちゃんと剣神として対応してやろうじゃあないか。


「そうか…お前の研究対象狂気なんだな。分かった、その覚悟受け止めてやろうではないか。悪いが俺の名は出せないが、お前の名前を聞いておこう。お互い自己紹介はまだだろう?」


『フッ…そいつは残念だ。冥土の土産に持って行こうと思ってたんだがな。この状態じゃあ仕方のない事よな。教えてやろう、俺の名はサンダスだ。』



「安心しろ、お前はこの戦いで終われる。これ以上化け物にはならない。これ以上苦しむ事は無い。」


『………やっぱりお前色々知っているよな…ハッ、お前がそう言うなら安心できる。

…ありがとよ。』



バチバチとサンダスの周りに纏わりついている紅いスパークがどんどんと強くなっている。音もバチバチと言う物からパァンパァンと地面や空気に当たって弾けているような物に変わっていく。


剣戟狂気を使うものに会うのはこれで3人目だが、それぞれ身体の周りで起こる現象は違うものなのだ。前回遭遇した使い手は気迫のような物が身体の周りから視認できる程出ていた。


同じ技でも使い手によって性質が変わると言う面白い事が起きるのだ。


だから戦いは楽しい。こう言う奴は予想外の事もしてくれるから面白いのだ。



『ウォオォオオオォォォ!!!!』


さて、最終ラウンドを始めようじゃないか。

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