第33話

『それを…刀術と呼ぶのは刀に冒涜しているだろう…』


「だからことわりの外の術なんじゃないか。剣だけあればなんでも出来る、魔力さえ上手く使えば何にでも変化できる。それが理外刀術なんだからさ。」


『……わかったわかった。もういい、お前自身が理外ってことが良くわかった。ここまで出来る人間は今まで見たことがなかった。そもそもお前、人間か?』


「失敬な!立派な人間に決まっているだろうが!」


腹に大きな穴を空けながら称賛してくるデュラハンは急速に開いた穴を修復している。だが、それで一つわかったことがある。無限に再生すると言うのはもしかしたら違うのかもしれない。


コイツもしや増殖はしない?


瓦礫のところから部品が飛んできている上、コイツをぶっ壊したところには金属破片一つも落ちてはいないのだ。


『その様子じゃ俺の特性に気付いたみたいだな。だったら言ってやる。俺は元の形に戻す再生しかできない。お前の予想通り消滅すればそれ以上再生できない。簡単だろ?』


「ああ、非常に簡単だ。そろそろ決着にしようじゃないか。」


『そうだな。もう十分だろう。終わりにしようか。』


『剣聖流……

剣戟狂気!』


空気中にバチバチと赤い稲妻を放ちながら剣を振り上げるデュラハン。


コイツが使った剣戟狂気は剣聖流の中で唯一存在するモード切り替え系技であり、剣聖が使う最終手段でもある。

なんの技も出せない程の狂気に包まれる代わりに全ての能力が爆発的に上がり、剣のひと振りひと振りが一閃レベルのキレを持っているのだ。


この技の怖い所は時間で狂気が抜けなくなり敵味方関係無く暴れ散らかすバケモノに成り下がるのだ。剣聖のバケモノなんて上級の人間でも倒せるものではない。


異世界でも一人対峙した事があるが持っている力は異常だった。ソイツは『剣戟狂気を使用しながら技が出せれば最強では?』と言う理由でバケモノに成り下がったが、ただ暴れるのみで狂気に逆らう事が出来なかったのだ。


そのせいで国一つが半壊したのだ。

たまたま隣国にいた俺に対処してくれと依頼があって倒したのだが、異世界の自分が思う強者ランキング3位にランクインする程の者であった。


コイツと違う事もあった。ソイツはひと振りが一閃レベルな上、剣には断地刀の魔力が乗っていたのだ。この剣が無ければ何十個の剣を消費しながらの泥仕合だっただろう。


剣聖の本能で断地刀の魔力を纏った剣を絶対に空振りさせなかったのは非常に苦戦した原因だ。

空振りしてくれれば使ってる剣が破壊されて倒しやすかったのにねぇ。横に建物があれば横振り、無ければ殆どは縦振りだけど断地刀の魔力の流れが遅いのを利用して横振りしながら避けたらすぐ下に振り下ろしてどうにかしようとしていたが、数回やってホントにギリギリを攻めすぎたせいで、剣が軋みをあげて止めていた。


しかもちゃんと断地刀の魔力を纏わせずに攻めてきたりして無駄に臨機応変に攻めて来られたから面倒だった。


さて……そろそろ向こうの準備も終わる頃だ。この剣戟狂気は無駄に時間かかるっていうのも弱点になるのだ。

だからだれも使いたがらない。ここまでリスクのある行為なのにこうやって使う人が居なくならないのは、この状態が与える力が本当に絶大だからだ。


これをもし20歳くらいのダンジョンに入った事のない一般人が使ったとしたら、手足を動かすだけでそこら辺に落ちてる石やコンクリートの欠片は容易く握り潰せるし、一度足を地面に踏み込んだだけでコンクリートの地面が陥没するだろう。


塀を殴れば砕け散り、ドアノブは鉄の為壊れないが回さずに引っ張るだけでドアが開くであろう。そこまで異常な力が手に入るのだ。



そりゃギリギリまで追い詰められ、命の危機と捉えれば誰だって使うだろう。

どうせ死ぬかもしれないんだからやってやると、一泡吹かせてやると、俺を追い詰め過ぎたことを後悔しやがれとね。


大丈夫だ。お前が最後そうするだろうと分かっていたよ。


だから今出来る最高の力で迎えてやる。


安心しろ、お前はこれ以降、これ以上バケモノにならない。


お前は剣聖として終われる。


『うオオォォォ!!!』


だから、だから……




「剣神流……剣戟結界!!」



それ以上の力で応戦してやるよ








『………………ファ!?』

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