第26話とある視点:Part5
「あそこにいるアイツは…人型って言うことじゃねェかよ…そうなると益々マジィじゃねェかよ…おい、マジでここ開けろ!マジでシャレになんねェぞ!オマエも逃げるしかねェだろォがよォ!」
「いやいや、何言ってるんだ?ここでずっと閉じときゃ逃げる必要なんて無いだろ?お前が戦い始めて数分後逃げれなくなったお前はもう俺の姿は見えないかもしれないけどなぁ!」
「オメェマジのクソ野郎じゃねェか!」
「一つ聞いてもいいか?」
「あ?」
「お前、ずっと嫌がらせしてきたの俺が気付いて無いと思うのか?」
「………。
チッ!気付いていやがったか!じゃあなんで放置したんだよ?」
「そりゃそうだ。あれで隠れているなんて気付かない方が可笑しいだろ。堂々と目の前の通路に地雷仕掛けてるのマジで馬鹿すぎて笑いこらえる方が辛かったわ。いくら隠密が得意とは言えもっと上のレベルの気配を掴めないって未熟にも程があるだろ。」
「ハァ!?気付いていたってのに手を出さなかったってのか!?ただのお人好しか馬鹿じゃねェかよ!何考えてんだ!テメェ!?」
「それよりも良いのかい?そろそろみたいだぞ?」
「!?チッ!」
後ろから飛んできた魔力の斬撃を間一髪で避けれた。さっきまで攻撃してた不可視の壁に当たり金属音を鳴らす。
こっちに手を出してきたという事は、もう巨狼は居ないのか。
………まさか、予想したくもなかった…可能性を感じたからこそ現実から目を背けたのにまさか、デュラハンだとは……しかもこれ、剣が無駄に豪華ってことはもしかしなくても剣聖体か…
まさかデュラハン種の上位二位の剣聖体を引くとは…つくづく俺は運が悪いみたいだな、剣聖体相手は逃げる事も厳しい。
てか何故こんなビギナーダンジョンにSランクモンスターが居るんだよ…ツイてなさもここまで来ると呪われてるんじゃないか?
いや、呪われてると言っても恨まれて呪われてるんだろうな。
ここが俺の墓場って事か。
ここで不可視の壁が消えてももう逃げ場は無いだろう。ただでは死なん!せめて兜に傷を付けて死んでやる!
そしてこっちの奴には絶対いい思いをさせてやらねェ!死ぬ直前にバフポーションありったけぶっ掛けてやる!
やってやる!
「身体強化!瞬歩!」
「二刀、一線斬撃!」
ガキィィィン!
「んなっ!?テメェ!!」
キィン!ズバァァ!
「舐めてんのか!!?オマエエエェェ!!!」
コイツ、俺をガン無視して不可視の壁に攻撃を仕掛けやがった!つまり完全に俺の事は眼中に無かったという事になる。無視しても問題無いと、俺が弱いと、楽勝だと、勝てるとは一切思ってなかったがここまで馬鹿にされると俺も黙っては居られない!
だが、これはチャンスでもある!
おれに興味が無い、眼中に無いなら俺はこのまま離脱しても問題無いという事だ!
…だが、それでいいのか?みみっちい事ばっかしてた俺だって強さについてはある程度のプライドがある。
とある事件でプライドがへし折れてからは、そんな物放り捨ててみみっちい事ばっかしてた俺だって未だ捨て切れないプライドがある。
ここまで馬鹿にされて、無視されて…
今の俺には何がある?何が残ってる?
どうせ逃げきれても俺はもう過去から逃げられない。
それなら、未だちっぽけに残っているプライドを守るとするか。
「瞬歩ォォ!」
「二刀、乱撃!」
キキキキィン!
「流石に受け止めるよなァ!」
三回位は受け流されたが四回目の斬撃で鍔迫り合いになる。
弾かれたかの様に少し後ろに下がって爆炎ポーションを投げる。コイツの防御を抜ける訳はなさそうだが目潰しにはなるだろう。相手の視界が取れなくなった瞬間大技を喰らわしてやる。一秒でも足止め出来ればそれでいい。
案の定、奴は剣でポーションをぶった切ってくれた。
ドカァァァー ン!!!!
「これでッッ――」
「あ〜あ〜やっちゃった〜」
大技を繰り出そうとした瞬間、後ろからとてつもない衝撃が来たと思ったら俺は不可視の壁に弾き返されていた。
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