第18話

「それにしてもお主、その強大な力を何処で手に入れたんじゃ?その年齢で独学でその域まで到達したなんて誰も信じんぞ?嘘でも本当の事でも何かしら答えを考えとかないとそれこそ厄介じゃ。別に答えなくても問題は無いが有名になった時にマスコミ共がどんな事をするか分からんぞ。」


「なんかされるのか?マスコミに。」


「うむ、過去に最年少でBランクに上がった!って言う少年が現れたんじゃ、だがそやつはギリギリまで力の事を隠し通した。だがマスコミの奴らはそれが気に食わなかったようで、その少年に毎日本人に張り付くようになったんじゃ。完全にストーカーになっておったんじゃ。」


おおぅ悲惨…爺さんが少年って言うならそいつはまだ学生だったんだろう。そんな思春期真っ只中の子にストーカーが付いたらそりゃノイローゼになるんじゃないか。なまじ弱くないから気配には敏感だろう。


ずっと知らん人間が後ろから付いてくるなんて嫌に決まってる。それこそ最悪、周囲にいる人が全員ストーカーに見え始めてもおかしくないだろう。


「そりゃ、最悪だなぁ。」


「マスコミの奴らの行動は日に日にヒートアップしていった。潜伏スキルを使える奴を動員して無許可で撮影して、ネットにあげ始めた。しかもその動画は悪意ある編集を入れておった。」


「悪意ある編集?」


「聞こえるか聞こえないか分からない声量の助けを求める声を入れて、今、助けを求める声がしましたが、彼は動きません!と文字を入れたり、意図的にその少年の批判的な事しか言わない明らかヤラセな人を取材したり、色々とまぁやりたい放題やった。」


「しかもその時代は今とは違い、ネットの動画などあまり流行っておらんかったからその時代の人々には新鮮で、編集と知らず信じ込んでしまった。」



「おおぅ、想像以上にやべー事されてたんだなその子…」


「その頃じゃな。その少年が家に引き篭もり出したのは…」


「そりゃ、そうだ。子供がそんな仕打ちに耐えられない。ストーカーされてる時点で病まなかったのが凄いと言えるな。」


「そうじゃな…それでその子はまた最悪な事にネットのそう言う人達に目を付けられてしもうた…住所は特定され、電話には毎日の様に無言電話…それはもうやりたい放題、今では探索者は規則で守られておるが、その頃は規則も法律も探索者にはあまり役に立たなかった。」


「うわぁ…」


「まぁ皮肉な事にそれが原因の一旦となって今の『マスコミ法』が出来たんじゃがのぅ。もっと早く作れば良かったものの…」


そう、今は『マスコミ法』と言う法律が出来たのだ。この法は簡単に言えば、嘘を報道出来ない(必ず根拠となる確固たる事実と言える情報を載せなければならない。もしそれが嘘だと言う根拠が見つかったら相応の罪を背負うのでリスクが出る。)、むやみに個人情報を出せない(例え有名人であったとしても)等諸々マスコミにとって嘘や根拠が無い薄い情報を報道できなくなったのだ。


勿論、これが決まった時色んな所で騒動が起きたが、俺的にはいい法律だとは思う。昔から胡散臭いと思っていたマスコミが縛られるんだからありがたい事だ。


そんな法律を敷かれたマスコミはどんどん衰退していった。いつもは長い長いどうでもいい事件や疑念、問題視系を報道していたがそれも減り、ニュース自体徐々に無くなっていった。今ではニュースは天気を知る為のツール位にしか役に立っていないのでは?と考えるほどしか放送されていない。

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