第17話

「ハァ…ハァ…お主の勝ちじゃ。良い試合だった。」


ギリギリで大飛斬を後ろに逸らした爺さんは、疲労困憊な感じで床に座り込んでしまった。

魔力が散って斬撃が消えるまで耐えるのかと思ったら逸らして凌いだ。予想外で感心してしまったけど、流石に逸らすので精一杯だったんだと納得した。戦ってみて分かったがこの爺さんは確かに強いが、引退直前ギリギリの戦闘能力だった。


何度も「全盛期ならここ通用しなかったのでは?」って感じの手応えだったのだ。流水斬鉄剣で逸らした時も、逸らす事は出来るがカウンターは難しいかもしれない技量だった。技量と共に必須な筋力が足りてないせいで微妙に隙が多く、カウンターを許してしまう様だ。


「全盛期の爺さんは相当な実力者だったんだな。刀を合わせて良く分かったぜ。流石、ギルマスって感じだな。」


「ほっほっほっ、お主の力は全盛期のわしでも届かぬだろうて。じゃが有り難くその賞賛を受け取っておこうかの。」


「んで、爺さんよ、この試合で勝ったが俺の結果はどうなるんだ?」


「勿論、合格じゃ。聞かんくても分かるだろうに、負けたから腹いせに不合格にでもすると思うたか?馬鹿にするなと言いたいが悲しき事に、そういう事をする輩は居なくならないのが現実じゃな。わしはそんな事はせんから安心してくれ。」


「今回の試験でお主はBランクの探索者になる為の条件をクリアしたのだが、本来なら実績と言う条件も付いてのBランクなんだがそれを抜かしてもなれるるんじゃ。それでお主に聞きたいのだが、そのままBランクになるか、Aランクになる条件を実績と信頼を抜いてクリアしてるとして順当にDランクからやっていくか、どちらがいいかの?」



「そんな事は簡単だ。勿論Dランクから順当にやっていくさ。俺は目立ち過ぎるのは勘弁だしな。異例のBランク!なんてどんな奴に恨まれるか分かったもんじゃない。あらぬ敵意を向けられたらそれ相応に報復しなきゃならんし厄介極まりないしな。」


「やめてやれ、お主の報復なんて死んでしまうぞい。」


「下手に殺さないでギリギリまで追い詰めるに決まってるじゃぁないかぁ。」


「おお、怖い怖い。あまりやり過ぎ無いようにのぅ。あまりおいたが過ぎると庇いきれなくなってしまう。」


「ん?庇う?」


「ああ、わしはお主の事が気に入った。だから裏から出てくる干渉をあらかた処理してやろうと考えとる。これだけの力の持ち主じゃ、恐らくお主もその力を過度に隠そうとはしないだろう?」


「そりゃ勿論、隠して隠して、ギリギリで開放なんて戦い方するつもりも無いからな。戦いがつまらなくなる。」


「じゃろう?そうするとすぐにお主の力を利用しようとする輩が確実に現れる。だからわしが出来る事はさせて貰う。わしもここまでお主を気に入るとは思わんかったわい。おっとこれはわしの勝手じゃ、今回の試験の報酬とは違うからの。後程お主に報酬は送っとくわい。」


「……なんだか知らんが、ありがたくその好意を受けさせてもらうよ。助かるぜ。」


「わしの好きでやる事じゃ。気にせんでええわい。」






















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