第14話

カァンと地面にコインが落ちた瞬間、時が止まった。

かのように、お互い即座に刀を抜いた二人がその場で動かなくなったのだ。


この時お互いに攻撃タイミングを見計らっていたのだ。


(こやつ、隙を己自身でわざと作って、あからさまに見せておる。下手に突っ込んでも確実に防がれるか、手痛い反撃が来る事だろう。やはりこやつと手合わせしてよかったわい。何年振りかのこの戦いの高揚感…本当に久しぶりじゃ…)


一方、渓の方はこう考えていた。


(誘いを完全に見切っているな。流石にギルマスになるだけの実力を持っているってことか。いやいや、これは想定以上に面倒な戦いになるやもしれんな。想定範囲を一段階上げるか。これはある程度面白くなるだろう。そろそろ仕掛けて来るだろう。)


「こちらから行かせてもらうぞ!」


「来るか!」


「せい!」


一直線で正面から走ってきた爺さんは、単純な真向斬りを仕掛けてきた。様子見だと言うことは見え見えなので、こちらも真っ向から…


打ち砕いてやろうではないか。

ここでテンプレを起こすのであれば、真っ向から受けて鍔迫り合いするのだろうが、ここでそれはちょっと面倒な気もする。


だから俺はここで、半身をそらして、



流水斬鉄剣!



おん、これはパクリではない、オマージュである。決してパクリではない。前世でよく見たアニメの技を改造させてもらった。相手の技を受け流し、時にはそれを使って攻撃する技。


前世のアニメはすごい勉強になった。色々利用、オマージュさせてもらったけどそれが無ければ俺は魔王に勝てなかっただろう。ありがたく使わせて貰うぜ。


今回は正面からきた真向斬りを、流水斬鉄剣で自分が逸らした体の逆側へと流して、ついでに左下から逆袈裟斬りの要領でカウンターをしたが、爺さんは後ろの飛び退いてギリギリ交わして避けた。


流石だ。これで俺は、爺さんが充分自分と戦えると、上から目線で認めようではないか。ふふふ、久々に剣で楽しめるではないか。


「次は、こっちの番だな!」


一刀流、飛剣!


「ぬっ!?」


飛ぶ斬撃は見えないから爺さんの『大幅に避ける』が1番正解なんだ。アニメでよくある斬撃に合わせて鍔迫り合いするが、あれは無謀なんだ。魔力を刀に纏わせないとただの迫り来る鋭い空気の移動に刀を振うだけなのだから。


「ほっ!」


「おっと、攻めるねぇ。お身体は大丈夫なのかい?おじいさん」


「ほっほっほっ、心配はご無用じゃよ。こう見えても定期的にダンジョンに潜っておるし、毎日鍛錬も欠かしたことはないのじゃよ。」


「元気なようで何よりですね。おじいさんはいつまでも元気でいて欲しいものですね。」


「はん、よく言うわい。どうせ次世代になったら口止めができるかわからなくなるからじゃろがい。見え見えじゃな。」


「はっはっはぁー」


こうして話している間でも何度も刀を合わせている。キィンカァンと刀の鉄と鉄が合わさる綺麗な音が鳴り響いている。

俺はたとえこの刀の刃が潰れていようともこの刀の消耗を抑えるため、ずっと流水斬鉄剣を使って衝撃をそらしている。


今回はある程度実力を出すんだ。。こんなふうにずっと同じ技を見せているのも相手に悪いだろう。と言うわけで、


流水斬鉄剣!


で一旦気を逸らしてからの!



一刀流、飛剣、、、五月雨!!


隙をついた一瞬のうちに後ろに飛んでそのままジャンプする。そしたら一気に飛剣を撃ちまくる。向きを一定にして一定の間隔で、暇なく飛ばす。


「なぬっ!?」


「今日は今まで言った事ない数、驚きの言葉を言ったんじゃないのか!?さっきから『ぬ』ばっかりしか言ってないぞ!」


「バカを言え!こんなの楽勝じゃわい!」


手がぶれているかのように右へ左へあらゆる方向に、魔力を纏わせた刀を振って斬撃を防いでいる。


ガァンギィンと先ほどよりも重い音を出しながら爺さんは斬撃を捌いている。正直すごいとしか言いようが無い。こっちも手元を見られて飛んでくる見えない斬撃を予測しているのかと思って、たまに撃たない時と一瞬ギアを上げて2連にしたりしたけどちゃんと対応しているから斬撃を感知して捌いているとわかる。


ずっと続けていても体力勝負になるだけのつまらない戦いになるだけだろう。


「さあ!受けてみろ!爺さん!」



一刀流、大飛斬!


持ち手を両手でしっかり持って思い切り真向斬りをする。そうすると、飛んでいる斬撃が白銀に見えるほどの濃密な魔力を持っていることがわかる。


そして先ほどの五月雨で逃げられない位置に斬撃を繰り出して準備は完了している。


さて爺さんよ、その大斬撃にどう対処するのかな?鍔迫り合いをしても耐え切れるかわからないぞぉ?




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