第2話 新生活の始まり
俺、一ノ瀬
物件は駅近で1LDKという高校生一人暮らしには贅沢すぎる広さだ。
さらにはセキュリティ完備や24時間ゴミ出し可能とくれば1カ月一体いくらかかっているのか知るのも怖いくらいだ。
母親曰く大事な息子を一人暮らしさせるんだからこれくらいは当たり前よとドヤ顔である。
その代わりになのかはわからないが母親からはいくつか言われていることがある。
羽目を外しすぎないこと、家のことをきちんとやること。
最後に「柊が心穏やかに学校生活を楽しむこと」これが一番大事だからねと言っていたが正直俺には難しい話だ。
前半部分の心穏やかには正直一人暮らしの時点で達成しているに近いが問題は学校を楽しむというところである。
過去の出来事が俺を人間不信にさせ上辺だけの関係ならそれなりにうまくやりこなすのだが深い関係を持つのは苦手だ。
相手を知れば知るほどその人の裏の顔があるんじゃないかと探ってしまうのが嫌だからだ。
そんな俺でも唯一自分のすべてを知る親友が一人いるが地元を離れた俺には友達と呼ぶ人がいない。
自分で決めたことなどでどうしょうもないのだがあいつがいれば他に友達はいらないと思っていたので友達の作り方がわからない。
というより人とあまり関わりたくなくて避けてさえいた。そんな奴が新生活でどうやって楽しめばいいのだ。まさに無理ゲーである。
母親には申し訳ないが一人静かに3年間学校に通って楽しいという嘘を突き通すしかないか....
そんなことを考えながら今現在入学式に臨んでいるのだが、こんな考え事をしてしまうのは、お偉いさんの有難いお話が長くて退屈だからだろう。
....一体来賓は何人いるんだ。
何人目かもわからないお偉いさんの話が終わった頃、俺はぼーっと時計を眺めていた。
プログラム通りなら後20分程度だろうか。
後何人の話を聞かされるのだろうかと呆けていると、新入生代表とアナウンスが流れたと同時に
――突然周りが騒つきだした。
一体何事だと周囲を確認するとこの騒めきの原因が彼女だと一目でわかった。
新入生代表として彼女、朝比奈
理由は簡単で何とも可憐な少女が登壇してきたからだろう。
彼女の声は透き通るような透明感でありながら芯のある声で、彼女が話始めてからはあれだけ騒がしかった体育館は静かになり、目の前で船を漕いでいた生徒ですら、演壇の上の彼女の声に聞き入っていた。
これだけ目立ってしまえば、彼女は入学式が終わったあとも大変だろうなぁと内心思いながら新入生代表の挨拶を終えた彼女が席に戻るのを見届けた。
そのあとはどの学校でも同じであろう、まだ覚えてもいない校歌を歌わされ
気がつけば入学式は終わっていた。
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