第二十九話 手紙と会議とピザの行へ

 ワイズは、渡された手紙を確認する。

〈ワイズさんへ


 今、この手紙を読まれているなら捕虜の置き所に困っているということでしょう。

 わたくし、良いことを思いついたので、上手く纏めて来て欲しいですわ。


 捕虜の方たちは、子爵領で全て受け入れしたいのです。

 三段階に分けて、一部は工事に従事してもらうは、給金も領都民の資格も付けましょう。


 場所が、とあーだ、こーだと言っているのでしょ。

 そこで、3つの村を作りましょう。

 そうね、工事従事者以外は、国境近くに

 もう、分かってもらえたかしら。

 在る物ばかりに目が行っては、新しいことは出来ないわ。

 陛下とウィルビス候からは、受け入れのために、物資と資金を高く取って来てね。

 特に陛下からわ。

 ハイド伯からは、周辺警備の協力人員が欲しいですわ。

 作るのは、捕虜、攻められて守も通すも殆ど問題ない。

 戦場になれば、村は焼けるけど仕方ないわ。

 詳しくは、戻ってからにしましょう。

 お父様の事は、お任せいたしますわね。


     目も麗しいアンジェリカお嬢様より♡


 追申

 イリスは、傍にいるのでしょう。

 話すのは、お父様とイリスの3人だけよ。他は、他言無用で進めること。

 ワイズ参謀殿の案として発表すること。


 期待しているは、早く戻って来てね。〉

「くくくっ、あーっはははは!

 お嬢様、よくわかりましたよ。概案としては、これでいいでしょう。」

「ワイズさんっ、どうしたのですか。何がお分かりになったのです。」

 手紙を、イリスへ渡すと、内容を確認する。

「これを、アンジェ様が・・・。」

「ご自身で、目も麗しいなんて、笑いがとまらん。

 腹が、痛い。」

 お腹を押さえて、笑いこむワイズであったが、

「うふふ。確かにそうですね。

 お嬢様らしいですが、そうじゃっなーい!。」

 ビクッと肩を震わせたワイズは、イリスを見ると真っ赤に顔を染め上げて、

「ワイズさんは、何も思わないのですか?

 アンジェ様は、今の状態を何故分かっておられるのですか。

 領主方が、困っているのにそれを、案まで出されるなんて、おかしいでしょう。」

「いやいや、すまなかった。

 思いのほか、ツボにはまった。

 それで、アンジェ様は幼きエドワード様のご息女で、5歳になられても我儘で可愛らしい方ですよ。」

 笑いながら、話すワイズに、

「見た目の事では、ありませんわ。

 この手紙の内容ですわ。」

「おそらく、捕虜の件は鍛錬の時にでも、マクミランから聞いていたのでしょう。

 アンジェ様の提案は、一理ありますから、言いくるめることは可能でしょう。

 ここ最近の、アンジェ様は面白いことを思い付かれる。

 この案は、ハイド伯か閣下の領内で無いと受け入れられないでしょう。

 国内の内側へ置きたくないのは、集まった方々で分かりますし、それを一領内で全てを処理するなら、異論は出ないでしょう。

 しかも、いつも帝国が攻めてくる戦場に村を作るのだから、嫌がらせにも程がある。

 これが、おかしいと笑っても、お嬢様はお怒りにもならないでしょう。」

「ですが、村を作ると帝国の拠点にされる可能性が出るのでは?」

 ワイズは、手紙の中に指を指し、

「3つの村とは、簡単に従順な者達から反抗的な者達であり、従順であって裏どりをして信頼できる者は、バルムに限定して領都民にし労働に従事させようってことでしょう。

 村も、柵もなく、食糧も常備しければ、ただの箱はあるだけですから、良く燃える事でしょう。おっと、話が逸れましたね。

 まあ、アンジェ様は、全部をこっちで面倒を見るから物と資金を取って来いと言われているのですよ。」

「最後に、ハイド伯は自領でお受けにならないでしょうか?

 この案でなら、実利は伯にも十分あると思われますが?」

 イリスは、ワイズに再度尋ねる。

「イリス嬢、それはですね。

 伯のここアゼリア要塞は、ウィルビス候のヘリアンサス城郭都市と閣下のバルム領都の間に位置し、国内側へ建てられていることです。以前は、この位置から国境までに村や集落もあったようですが、見せしめで焼かれてからは、領民を移動させ奥に移住させました。

 そこに、捕虜と言え帝国兵に村を作らせるには、伯としても領民の感情的にもわだかまりが大きいと私は考ています。

 なので、バルムならアンジェ様の案は分散せずに一括で管理でき予算と物資が入ってくる。

 領民も一緒に暮らすわけではないのですから、それに戦場に立った兵たちや他にも配慮できるのは、大きいですからね。」

「そこまで、考えられて。」

「そうですね。作るとは、何処にどれだけ任せるか。監獄の数と足りない数に目が行って、面白いですね。」

 イリスは、黙ったまま手紙を読み返す。

「イリスさん、知っていますか?

 アンジェ様は、以前からよくお隠れになってサボってばかりの残念なお嬢様で知られていました。

 アニー嬢とお話しした時に、アンジェ様は高い所へよく隠れていることが多いと聞きいたですが、何故かお分かりになりますか?」

 ワイズの話を聞いていただけで、急な回答を求められて、言葉が出ない。

 何で、どうして、隠れやすい所なんて色々あるけど、

『何んとかと煙は高い所にのぼる』小さい声でポッとでた声に

 ワイズは、また笑い出した。

「いえ、そんなつもりは・・・。まさか、声にしてしまうなんて!どうか、ご内密に、ご容赦を・・・。」

 真っ赤になったイリスに、

「流石に、アンジェ様もお可哀そうに。『プッ、ククク』

 失礼しました。

 それで、アニー嬢からですが、アンジェ様は殆どの人たちは、私を探すのに下を見てばかりで、上を殆ど探さないから見つかりにくいと仰ったそうですよ。

 よく人や物事を観察しているのですよ。

 まあ、以前のアンジェ様でしたら、イリスさんの言葉がぴったりだったでしょうが。」

 微笑むイリスと暫く閑談してから、

「今日の事は、帰還までご内密に頼みます。」

「了解いたしました。」

 イリスは、アンジェからの任務に満足して、部屋へ戻っていく。

 それから、この招集も時機に終わるだろと。


 ※ ※ ※ ※

 その頃、入浴中のアンジェは

「ふぇっく、ずっ、しょーん!」

 と盛大にクシャミをして、ミリーから風邪でしょうか?

 と言われていた。

「誰か、綺麗な私の噂でもしているのよ。」

 あながち、間違ってはいない。

「アンジェ様、そろそろお休みになられる時間ですよ。」

「明日こそ、完成させるわよ。」

 アニーも皆は出来ようになったのだが、アンジェだけはどうしても、ソースを焦がしてしまいムキになっている。


 ※ ※ ※ ※

 翌日のアゼリアは、天気も良く長引く会議に心を疲弊させている護衛たちに、やる気にみなぎった者が1人。

 イリスの気分は此処に来て、最高に達していた。


 会議前に、ワイズはエドに嘆願を申し出ていた。

「リヒタル閣下、そろそろ決を取る頃合いかと思われます。

 最後に、発言をしたくお願い致します。

 閣下の為、領の為に、全て円満に纏め上げてみせます。」

「ここまで、聞き役で終わっても仕方あるまい。

 許す、お前の提案を聞かせてもらおう。」



 会議室では、ハイド伯爵から

「長引かせても、時間だけ浪費するのみだな。

 この辺で、纏めて報告を上げたいものだがどうだろうか。」

 ワイズは、手を挙げ

「ハイド伯爵様。

 最後に、発言の機会を頂きたいのですが、宜しいでしょうか。」

「其方は、リヒタル子爵のワイズ殿であるか。

 何か、この件について話があるようですね。

 分かりました。発言を許可します。」

 ワイズは、アンジェの概案に私案をつけたし、必要な部分を発言する。

 リヒタル子爵に目が向けられる。

 ハイド伯爵からエドに

「リヒタル子爵、今そなたの側近が申したことは、存じているのか。」

「むろんだ。

 この、リヒタルの名に懸けて全てをお受けいたしましょう。」

 ホントに、大丈夫なのかよ。ワイズ~。

 斜め目線で、参謀の顔を見るが、自信満々な様子。


 細かな事を、いくつか話して揃った面々も頷いていく。

 一領内で全てを預かることで、支援の取り付けは揉めずに済みそうであった。

 ハイド伯も、人員の協力で済むのだから拒む事も無かった。


 休憩を挟みながら、夕方には纏まる方向で

「みな、ご苦労であった。

 最後に、良き協議であった。陛下とウィルビス候にも、直ぐに報告もできることに感謝する。」

 少し長い挨拶の後で席を立つと、会議が終わった。

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