第二十八話 始まる会議とピザ

 アンジェに、友達の招待の報告をしてから

「何を用意しようかしら?

 お菓子に、お茶や果実水に~。」

「アンジェ様、そんなお顔をされて、私たちもお手伝いさせていただきますわ。」

 アニーも、やる気がみなぎっているようだ。

「感謝を。

 皆も知っているでしょう、私には同じくらいの歳の友達がいないから嬉しくって、楽しくって。」

(まあ、箱入りっていうか、外に行けなかったからな。

 ノブ達の記憶がなかったら、自由に行きたいことなんて叶わなかったわ。

 嘘だっ!アンジェ君、俺たちは知っている。勉強や教養をサボり、木登りしてまで逃げ回っていたことを。

 くっ。しかし、私の過去を知られたところで、もう遅い。ふはははは。

 ひ~、開き直ったよこの子。そこで、頼みがるのだが、ピザを作ってみないかな。

 そんなお菓子は・・・。フムフム。そんなに美味し物なの?

 そりゃ日本のパンみたいには白くもフワフワもしていないけど、材料は用意できるからさ。パン生地を、薄く丸く伸ばして、トマトソースやホワイトソースの上に、チーズやベーコンとか置いて焼くだけでいいと思う~。多分できる。ホワイトソースは、小麦とミルクに、塩、胡椒とかスープの素は~ないだろう、がスープを混ぜてみて、トロトロに煮込むとできたはずだ。頼むよ~、過去は知らんが、今の俺たち味はわかるんだぜ。

 いいわ。仕方無いですが、やってみましょう。

 アンジェ君、ヨダレでててるよ。)


 ロッテは、

「アンジェ様、私たちは当たり前のことをしたままです。

 アニーは、準備を仕切ってみてね。

 ミリーもモーラも、アニーをよろしくお願いするわ。」

「わかりました。」

「アンジェ様では、また明日から段取りを致しましょう。

 今夜はお休みなさいませ。」

 ロッテの言葉に、アニー達も挨拶を済ませると部屋をでていった。


 ※ ※ ※ ※

 アゼリアには、領内の主な面々が揃っていた。

 ウィルビス侯爵からはシュナイゼン伯爵、ハイド伯爵、ハイド伯爵の治める領内から、ファナル子爵、リンデン子爵、カルメン男爵にリヒタル領からエドである。リヒタル子爵である。

 まあ、ウィルビス候の領内の事で、今回はハイド伯へよろしくねと、丸投げされた結果の出席者であることは、みな承知しているようである。

 ハイド伯爵から

「よく来てくれた。

 久しい顔もあるよだが、先に会議と内容について話しておくとしよう。

 最近の帝国兵について、指揮官とそれ以下に分け、それ以下について国王陛下から、ウィルビス閣下の領へ移す様に・・・。協力の要請だ。

 閣下もお人が悪い、一万人弱の受け入れなど。そこで、この案件に、どう対処したものか集まってもらった。」

 ファナル子爵も

「分かっておられると思うが、陛下からの協力要請は断れない。

 こんな数になると思わなかったこともあるが、置き場所に困っているとか。」

「海側の方へ、東か北東へは分散させればよいではないか。」

 リンデン子爵から強く発せられる言葉に、ハイド伯爵から

「忌憚のない意見で結構だが、それは却下だ。

 攻められる事のない領地に、敵兵を送ることは無理がある。

 閣下も、分かっているだろう、だから我々にこの案件を任されたのだ。

 リヒタル子爵は、どうかね。」

「バズール公爵や派閥の領も駄目なのかね。」

 さらに、ハイド伯爵は

「それこそ、敵兵とかく乱、王都へ派兵でもされたら目も当てられない。」

 カルメン男爵から

「ハイド伯爵、この案件について、少し時間をいただく事は出来ませんかな。

 各々方も、大なり小なりとおそらくと思われていたことでしょうから、最善となる様に、提案させていただきたい。」

「んむ。分かった。急いては事を仕損じると言うしな。

 また、明日の朝から始めるとしよう。男爵は着いたばかりだ、今日は、ゆっくり休むといい。」

 部屋には、ハイド伯爵とシュナイゼン伯爵だけになる。

「この件、みなも怒っているのだ。

 陛下が、候を頼って来ることは、臣下としてよい事なのだがな。

 自ら采配はして貰えないものか。」

「今の陛下ではな。」

 シュナイゼン伯爵の一言で、肩を落とす。

「納得できる案を候へ届けるのみか。」

 翌日から、会議は続く、

「アゼリアやバルムだけでなく、各村にも分けて監視を付ければ、それなりに収容はかのだと思うが。」

 シュナイゼン伯爵は、普通に誰もが平等にリスクを負う提案をする。

「それは、みなも分かっておる。

 だが、小村には負担が大きいだろう、しかも監視の人員も分散させればそれだけ守りが手薄になる。」

 エド・・・リヒタル子爵の言い分に頷く面々は、また振り出しに戻る。

「アゼリアとバルムの2か所か、もしくは、候の領内にある子爵領都に限って分けるか。」

「そうだな、アゼリアは要塞として常時兵が多いしな。それに、子爵領都ならそれなりに収容もできるだろう。」

 リンデン子爵とファナル子爵が、これでいいんじゃない風に纏めようとする。

 リヒタル子爵が

「それって、我が領はどちらにしても、受け入れることになるのか?

 そんな、勝手が通用するものか!」

「宜しいですかな。

 そもそも、アゼリアを始めここにおられる方々の領地は、帝国との戦いに兵を出している所に問題がります。

 それに敵兵を受け入れても、領民に不平や不安を与え失ってしまった家族たちが、暴動でも起きれば終わりです。」

「鎮圧したら直ぐに終わるだろうさ。」

 カルメン男爵の言にリンデン子爵が言葉を重ねる。

「誰を、鎮圧するのだ。帝国兵ならまだしも、領民を罪人にすることは、全ての領民が我々に敵意を向ける切欠にしかならん。

 候を始め、誰もそんな結果など望んでいない。」

 シュナイゼン伯爵の一喝で鎮まる。

 エド・・・、リヒタル子爵の事は、華麗にスルーされていた。

「であれば、あまり帝国との戦争に参加できずにいた者たちの領へ分ければいいではないか。」

 ファナル子爵が、意見したが、また返されることで一向に纏まる気配を感じることなく、また翌日へと流れていく。


 ※ ※ ※ ※

 アンジェは、仲良くピザの試作中である。

 ステフから、

「ロッテ、アンジェの為にありがとう。」

「ステフ様の為ですから。

 今のアンジェ様は、昔のステフ様と変わらないお転婆さんですから。」

「まぁ。ロッテたら酷いわ。私の娘とは言え、あそこまで酷くは無かったわよ。」

「うふふ。どちらも、お変わりありませんわ。

 私にとって、最良の出会いであり、主で一番の友人ですもの。

 今のアンジェ様には、歳近いご友人が出来ればと思っています。」

「そうね、私たちの様に。」


 ※ ※ ※ ※

 アゼリアでは、纏まる様子がない会議にエドワードもワイズも思案する。

 イリスは、アンジェから渡されていた手紙1を開ける事を決めた。

〈イリスへ


 少しは、家族との時間は取れたかしら。

 楽しんで貰えたら嬉しいわ。


 それで、この手紙を開けたなら、今は会議が行き詰っているのでしょう。

 ここで、ワイズへもう1つの手紙を渡して読んでもらいたいの。

 いいわね、ワイズによ。

 決して、お父様には『まだ』バレない様に。

 ワイズは、私の考えていることを分かってくれるわ。

 頼みますわね。

   アンジェより〉


 エドワード様が、お休みになられたころ。

 イリスは、ワイズのところへ向かった。

「こんな晩くに、どうしたんだい。」

「お渡ししたい物がありまして、今はお一人でしょうか?」

「ああ、でもまた、明日の会議で何か出来ないか考えている所ですまないが・」

「それなら、丁度よかった。私は、アンジェ様からお手紙をお預かりしていまして、ワイズさんへ渡す様にとのことでして。」

「アンジェ様から。

 分かった、入ってくれ。」

 部屋に通されたイリスは、

「エド様には、まだバレない様にと言われてます。」

「確かに、焦ってきておられている。今は、アンジェ様どころではないだろうしな。」

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