第二十一話 砦強化と護衛騎士

 カミラとは、ほぼ話は終わった。

 ところに、マクミランの帰還の知らせだ。


 街は最後の兵達に、拍手喝采でお出迎えてお祭り模様だ。


 再度の攻勢も無かったようで、皆が元気に帰ってきた。


 日暮れ前に、また祝宴だった。

 お父様が、挨拶に入ると

「皆、ご苦労であった。

 今宵は、囁かではあるが、この地が守られたことを共に祝おうではないか。

 乾杯!」

 兵達が喜び、飲んで飲んで食べまくる姿に(デジャヴだな。)とノブはアンジェに伝える。


 前のマクミランの後ろに、またも女性兵士が見えた。


 アンジェは、マクミランの所へ行き

「無事な帰還を祈ってましたわ。」

「おぉ、アンジェ様、アニーから日課として、訓練をしていた事は聞いておりますぞ。

 いやぁ。直ぐ音をあげるかと思いましたが、ご立派になられましたな。」

 少し照れながら

「ありがとう。

 それから、後ろの女性をご紹介して頂けますか?」

 マクミランが、後ろを見ると

「あぁ。イリス、少し付き合え。」

 と彼女を呼ぶ。

「団長、何か御用ですか?」

「こちらは、アンジェ様だ。

 お前を紹介して欲しいと言われてな、自己紹介でもしてもらえんか。」

 少しビックリしたようだが、

「お初にお目にかかります。お嬢様。

 私は、イステリス・カルメンと申します。16歳になります。

 イリスとお呼びください。

 所属は領都軍マクミラン団長配下の剣士です。」

(ホウホウ、こちらもイイね。

 ノブ、何かイイねの意味が違うくない?

『あれ』そ・ん・な、ことは、ないよ〜多分。

 浮ついた声に、だらし無い顔じゃないの。

 共有情報が、現在進行系っておかしくね。個人情報が、ダダ漏れじゃない。)


「マクミラン、イリスを私に頂戴な。」

 イリスが、

「エッ、いきなりそう言われましても・・・」

「いきなりですなぁ。

 エリアにイリスを、引き抜こうとは、何をお考えか聞いても。」

「出陣の時から考えていたのだけれど、専属の侍女は大丈夫だけど護衛の方は、誰もいないのよ。

 これを気に、専属の護衛騎士を付けて貰おうと、ね。

 同性の方が何かと都合が良いのよ。」

「なるほど、突然ですが街行きたーいとか、門から外に行きたーいとか、対応がしやすくなると。

 しかし、何故この二人なのですかな?」

「決まっているじゃない。

 数人の護衛を付けるより、強いでしょ。『ニコッ』」

「エッ、いや私なんてまだまだで。」

「ん~~、『ニヤッ』とされてもですな。エド様に相談してみましょう。」

「『なぬっ』でしたら、私も同席いたしますわ。」

(ニコッがニヤッて、己の欲望が顔にまで、出るなんて、『ヒ〜』腹が痛い痛い。

 ノブ、おかしいわ!普通に笑顔で対応したのに?

 アンジェ、自制が出来てないのか?対象が自分の為なら口にも顔にもでるのかよ。)


「酒宴は続く中、少し夜風にあたってくるわ。」

(家の奥にこんなに広い場所が、あったなんてな。

 外の方も、大騒ぎね。明日は、皆とここの片付けね。

 珍しいく、アンジェが掃除をすると。変な物、食べたんじゃないの?)


 ※ ※ ※ ※


「公爵様、予定通りと手紙を、預かって来ました。」

「遅かったな、バーモン。

 もうよい、下がっておれ。」

 バズール公爵は

「ヘルモンド伯爵へ使いを出せ。

 あと少しの所で、邪魔をしよってバーモンは消せ。」


 ※ ※ ※ ※


 朝から、アニー、ミリーとモーラを連れてお掃除だ。

 兵士や侍女達に混ざって、

「アンジェ様、ここは私が手を出そうとする。」

 アニーだったが、

「ここは、いいから早く片付けましょう。

 外の皿やゴミを片付けたら、中のテーブルを出して、床をキレイにするわよ。」

『お嬢様が、・・・』

『あの、お嬢様が・・・』

『何か小さい子が、混ざっているが誰だあれは・・・』

『しーっ、アンジェリカ様じゃないか?』


 陽の高くなる頃、やっと休憩できる程にはキレイになった。

 途中、ざわついた声が聞こえたが、邪魔もなく終わった。


 エドは

「アンジェが、どうしたのだ。」

「それが、朝から皆と酒宴の片付けをしていたようですわ。」

 ステフの言葉に

「また、何の問題かと思えば。

 良いことではないか。好きにさせておけばいいだろう。」

「エド、最近アンジェが遠くへ行ってしまうような感じがして怖いのよ。

 遊んでいる時も、食事の時も、笑顔が遠く感じるわ。」

「何か感じる事が、あったのだろう。

 ステフ、私たちで見守ってあげようじゃないか。」


 領都バルムが、落ち着きハンスも戻ってきて、ようやく相談の日がやって来た。

 午前の会議に、『ちょこん』と座っているのは、アンジェだった。

「マクミランから、先に済ませたい議題があると聞いているが。」

「エド様、アンジェ様の外出の件ですが、これまではハンスをはじめ、兵を、数人付けておりました。

 先日、アンジェ様からご提案があり、エリアとイリスを専属の護衛に付けて欲しいとの事です。」

 ハンスが

「面白いなアンジェ様は、2人を、知っていたのか?」

 お父様は、

「エリアは、ここの騎士爵だが分隊長を任せてるだろ、イリスなんて、ハイド伯爵領の男爵家のご息女だろ。頑張り屋さんで、上達も早いって・・・。

 何故、この2人なんだ。」

(ほへ~、あの2人ってやっぱり強いんだ。

 そこじゃ無い。ランブル騎士家って武勲次第で、昇爵して男爵になるとこだぁ。カルメン男爵家はハイド伯爵領の家臣だぁ。何で、忘れてたんだよ〜アンジェ〜。

 ん~~、Zzz

 おい、考えろよ。

『パチンッ』大丈夫よ、多分。)

 マクミランが、

「アンジェ様が、ただ強いんでしょうと言われまして、同性の方が、都合が良いと。」

『ニコッ』アンジェは、体を揺らしながら笑顔を撒き散らす。

「もう、仕方がないですね〜。」


 皆が、笑顔の頂戴攻撃に口を、滑らそうとする。

「待て待て、そうはならんだろう。

 軍団の編成はどうするつもりだ。」

 ワイズは、咄嗟に割って入った。

『チッ』心の中で舌打ちをするアンジェだが、

「皆さん、軍の任務は優先すべきことですので、それ以外での範囲で私にお貸しください。

 それなら、部隊の編成に問題はないと思うのだけれど。

 いかがかしら?」


 再び

「それならば、致し方ないですな。」

(おぉ~、アニーに染まってない、新砦が手に入るわ。

 アンジェ、終わるまでが取引だ。気を抜くなよ。)

 と脳内会議で、ノブの注意が

「エド様、アンジェ様の事がエリア嬢ならばまだしも、イリス嬢に知られては、ハイド伯爵へも情報が漏れてしまうのでは無いでしょうか?」


 カルビンの一言にブレ出す。

「も〜、遅かれ早かれ情報は隠しきれないでしょ。

 形だけでも、誓約書にサインでもしてもらったら?

 お題は、特別任務とかにして、情報の秘匿と立ち位置を護衛騎士とかにして、軍団の任務以外を私の直下にしてしまえば良いのよ。」

 ハンスが、

「アンジェ様、訓練に差し支えは無いですか?」

「どうせ、そろそろマクミランもハンスも、私にうさ・・んっん〜、指導をつけたいと思っていませんか?

 合同は、軍団の管轄、個人訓練は私の日課なのだから、大丈夫じゃない。」

(手放してなるものか!筋肉達に、対抗できる盾とアニー達から私を守る砦を逃すものかぁ!

 いや、凄いよアンジェ。楽したい、手を抜きたい想いが凄く伝わって来るよ。)


 お父様が、

「マクミラン、ハンスどうかね。」

 二人とも

「もう、異論はございません。」

(よし、勝ったわ。

 ノブ、これで、私に立ち塞がる者はいない!

 ホントかぁ?そこそこに、楽して長生きできれば、文句は言わねぇよ。)


「マクミラン、ハンス、ワイズには、エリアとイリスの件を任せる。

 アンジェ、ほどほどにしなさい。

 皆を余り困らせるでない。」

「承知いたしましたわ、お父様。

 では、これにて失礼いたしますわ。」

 アンジェは、席を立つとカーツィをして部屋を出ていく。


「あれは、誰だ。

 良く言えば機転が利くみたいだが、5歳が話す事なのか?」


 暫くの沈黙の後、その後も続く、午前の会議に、ハンスが伯爵からの手紙をエドに渡すと

「参ったな、どうした物か?」

 リヒタル領に降りかかる問題とは。

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