第二十話 凱旋と祝宴の裏で


 ようやく、マクミラン達が帰ってくる。


 ここ数日のアンジェは、それなりに頑張った。

 何もサボった訳じゃないのだが、アニーにはお世辞は通じなくなっていた。


 日課の訓練に勉強をしても足りないのか?ミリー砦とモーラ砦と言う壁を立て、アニー女鬼めっきを宥めて封じ込める日々に、違った楽しみを覚えていた。


 そのアニーは、私に対して期待しているのだと分かった、また期待の高さがハンパね〜。


 そして、今日は・・

 アニーは、教会の窓から外を眺める。

「アンジェ様、帰ってきた者たちの、姿を良く見ていてくださいませ。」

「アニー、いよいよ明日には、マクミラン達が帰ってくるわ。

 先発隊も、帰還して来ている。

 規模の小さい戦いでも、怪我人も死人も出ているのね。」

「アンジェ様、・・・戦場に立った事もない私の言葉では伝えきれるか変わりませんが、兵士が命を懸けて国を護っているのですから、被害が出ない事はないでしょう。

 まだ、この程度ですんだと思う方が良いのではないでしょうか。」

 アンジェは、少しイラついた。

「アニー!

 この程度とは、何をおっしゃっているのかしら。

 軍事に携わってもいない貴女に、何が分かるのかしら!

 ワイズが、考え参謀として戦略を練り、マクミラン団長や将軍達が兵を、指揮して戦術を駆使して敵を討つ。

 私はね、はじめにこれを準備していたらとか、あの時こうしていたらら、なんてゴメンだわ!

 常に最善になる様に考えて、実行するのよ。思考を止めたら、それ以上は得る物も無いでしょう。

(アンジェ〜、言い過ぎだぞ〜。

『ハッ』しまったと、アニーへ視線を向ける。が、遅かった。凹んでいるアニーに、諭すように。)

 何故、今日はここに来たの?

 見物なの。街を見て。兵に労いの言葉をかける者たち、勝利を喜ぶ者がいる側で、兵に声をかけられ泣き崩れる人たち。ホッと安堵した人たちがいる事を、忘れてはいけない。

 私達の暮らしは、この兵達の上に成り立っている。

 残された者たちの事は、また教えてもらって、何が出来るか相談しましょう。」


 アニーは、かなりビックリしたのか

「アンジェ様、申し訳ありません。

 まさか、街を、見に行くとおっしゃられた事に、ここまで深い想いがあるとは思いませんでした。」

(アンジェ、誰の言葉なの、誰の記憶から引っ張り出したの?アニーも、分からなかっただけで、悪気はないだろ。

 ノブ、わかっているは、でもそれで傷つく人がいるのよ。平民なら、良いのよ、まだね。甘い見立てで、被害を大きくする様な指揮官にはご退場を願いたいわね。

『アンジェは、貴族なら誇り高くあれ。』

『ノブは、貴族なら民の生命の重さを軽んじてはならない。』

 アンジェ、締まらないなが、良く学んでいるようだな。

 ノブ、貴方の記憶のおかげね。まるで、私が体験して来たようだわ。

 アンジェ、またいつか今日の事を思い出してくれ。そろそろ、帰るか。)


 アンジェは、

「アニー、言い過ぎたわ。ごめんなさいね。

 ラーズ司祭に、帰りの挨拶をして行きましょう。」


 アニーは

「はい!何処までもお供致します。」

(アンジェさんっ!また、アニーが変に目をキラキラさせてますけど。

 ノブ、忘れなさい、あぁ~また好感度と忠誠心が変に上がってるわ。

 ミリーもモーラは、大丈夫だよね・・・。

 ノブ、要注意よ!アニー菌は、感染するのよ!最近、残りも怪しいのよ。)

『ハァ』と二人でため息をつくと、帰るのであった。


 帰ると、エドもワイズも、忙しそうに指示を出していた。

 そこには、出陣時の女騎兵の姿があった。

 ワイズに、

「戻りましたわ。

 まだ、時間がかかるのかしら?」

「アンジェ様、今この様な場所へ来られなくても、お呼びであれば、私の方からお伺いしたます。」

「直ぐに、済みますので、ワイズ参謀へお尋ねしたいのです。

 そちらの女性は、何方ですか?」

 女性がこちらを見ると、ワイズから、

「すまんが、こっちに来て挨拶をしてくれないか?」

「お嬢様、何用でしょうか?

『あっ』すいません。

 私は、領土兵団、マクミラン麾下のエリシュリア・ランブルと申します。エリアとお呼びください。」

 アンジェは、

「お姉さん、家名持ちなんだ。

 騎乗してたよね?

 強いの?

 歳はいくつ?

 マクミランの嫁なの?」

「『グッ!!』なぜ嫁なのです?

 あの筋肉の嫁・・・。

 お嬢様、あんまりです!

 そりゃ、筋肉にはまだ勝てませんが、めがないとは思っていません。

 歳は16になります。」

 アンジェは、


「エリア、ありがとう。

 私も、あの筋肉には、ぎゃふんと言わせたいわね。」

(アンジェ、エリアをどうするつもりだ?

 決まってるじゃないの。こちら側に、道づ・・引き込む為よ!

 だよなぁ。言い直しても自分の為になんだよなぁ。

 ノブ、それだけじゃないのよ。街の護衛も色々と便利じゃない。同性だから、相談もしやすい、セトには悪いけどね。最後の砦だった、お母様もロッテも、アニーを信頼してるから、最後は私がお叱りを受けるハメに『オヨヨッ』。

 満場一致で、アンジェが悪かったからじゃないか。

 ミリー砦とモーラ砦だけじゃ足りないわ。守りを厚く固めないと、これからはやりたい事が出来ないのよ。

 いよいやいや、結構な自由を満喫してるよね。

 お父様とマクミランには、護衛騎士で直ぐお願いしとかなきゃね。

 また、聞いてないよ。被害が大きくなりません様に!)


 夜からは、戻った者たちで祝宴が開かれていた。


 エドもワイズも、兵達に声をかけ労いっている。

 アンジェは、早めに撤収すると明日に備えて休むことにした。


 朝から、モーラが起こしに来たが、

「おはようモーラ。

 いつの間にか、モーラは私付きの侍女みたいね。」

「アンジェ様、今日も何か予定されていることはありますか?」

「そうね、カミラに会いに行くわ。

 あと、マクミランが、戻ったら教えて欲しいかしら。話があるの。」

 モーラは、

「畏まりました。

 それと、『クスッ』アンジェ様の付きみたいじゃ無くて、アニー、ミリーの補佐になりますが、みたいじゃ無くて、アンジェ様の侍女ですよ。

 最初だけでしたね。手のかかるお嬢様の侍女の補佐って、言われたのは・・・?『ハッ』利発で聡明なお嬢様のお側に要られるなんて。『ヒッ』」

 アンジェは、ブス〜っとした顔でジト〜ッとした目で、モーラを見つめる。

(クククククッ、ッアーハッハッ腹が・・・我儘で、食いしん坊じゃ。

『プチッ』ノブ、ゴーハウスッ。全く、失礼すぎない?

 アンジェの、余計な一言は皆に感染でもするのか?アンジェ菌なのか?誰か、ここに感染源がいますよ〜。

 知らないわよ、勝手に自爆するなんて私の侍女の覚悟が足りないのね!

『ヒ〜ッ』もう覚悟とか、そんな事じゃ無いやろ。アンジェに、感化されてる近しい人は、ツイに、ポロッとが出てるよ。アンジェの前だけだがな。あぁ~お腹が痛い。)


「モーラ、別に咎めたりしないからね。

 それでも、顔にくらい出ても仕方ないじゃないのよ。

 これが、普通のアンジェなんだからね。」

「ありがとうございます。

 アンジェ様、これからも宜しくお願い申し上げます。

 カミラさんへは、お伝えして調整しておきます。

 また、マクミラン様も戻られた際には、直ぐにお伝え出来るように申し付けて置きます。」


 日課の体力作りの時、人が多いと思い、建屋の方で剣の訓練をした。


 それから、一息ついていると、カミラの都合が空いたと聞き、一目散に走り出す。


『バタンッ』

「カミラ、急に時間を、割いて貰ってありがとう。」

「アンジェ様、本日は・・と水路の件ですよね。」

 話が早くて、アンジェも、

「その通りよ。

 話が早くて、助かるわ。

 それで、どうなったのかなぁと思っていたのだけれど?」

 カミラは、

「アンジェ様、大枠はお話しした際の通りでエド様もカルビンも承知しております。」

「と言うことは、変更もあったのでしょう。

 変更になった所は、代案で解決済みかしら?」

「はい。

 先ず、事業費の債権と有りましたが、利子を付けなくても大丈夫だろうとの判断です。

 商業ギルドに、預ける場合に管理費を払うので、無料で預けられると言うメリットだけで十分補う事が出来る判断です。

 また、孤児院へは直接対応して、成人の儀を終えている者であれば参加可能にしました。

 スラムが・・貧困層には、ハンターギルドを介して、仕事の斡旋を頼むことになっております。」

(デジャブだな。

 そうね、さっきも見たわ。)

「ありがとう。他に変わった所はありますの?」

「いいえ。手直しと、詰めの話で直ぐ終わりましたから。

 そういえば、職人へもレンガやコンクリートの発注を進めています。

 エド様は、孤児院と商業ギルドへ。

 カルビンは、ハンターギルドへの対応をしています。


 現場は、アベルに任せ進捗や問題があった時の対応をさせます。」

「これで、街の問題のいくつかは、解決できるわ。

 それより、帝国の件があったのに、ここまで話が進んでるなんて凄いわね。」


 とっ、『コンコン』モーラが

「アンジェ様、まもなく、マクミラン様が戻られて来ます。」

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