第14話 教育方針の変更は聞いてない
アンジェは、ハンスと共に帰ってきた〜。
「ごっはっん〜食べなきゃ早く〜死んじゃうぞ〜♪」『ハァ』ハンスが溜め息を付く。
「アンジェお嬢様、もうおやめください。お家に着くのですから。」
「は〜い。」
ハンスが、扉を開けると
「たっだいま、戻りましたわ〜。」
とアンジェは飛び出し、ハンスはまた、首襟を掴むと
「お嬢様、はしゃぎ過ぎです。」
と止められた。
ちょうど、エドとステフが降りてきて、
「この姿を見ると、ただのアンジェだな。」
エドの言葉に、ステフも
「そうでございますね。」
と笑い声まで上げて
「お帰りなさい、アンジェ。」
とアンジェは2人に飛びつくと、
「お友達も、分かってくれたわ。
アンジェとして、変わらず遊んでくれたのよ。」
(対等な友達なんていなかったから、興奮してるな。)
「あっ、お父様、お母様もお話し合いは、終わりましたの?」
エドは頭を抱えながら、
「ああ、何とか形は出来たから、場所や調整は今からだが、秋作からは間に合うだろう。」
「そう。良かったわ。」
ステフは、
「さぁ、ここでは邪魔になりますわよ。お食事にいたしましょう。」『グ〜ッ』アンジェのお腹の音で、
「ほら、アンジェも早くって言ってるわ。」
ステフは笑いながら言ってる。
(おお、アンジェよ顔が真っ赤だぞ。
当たり前よ。私にだって、羞恥心刃はあるのよ!)
エドは、
「ハンスよ、今日はご苦労であった。では、行こうか。」
と食堂へ向かった。
席につくと、アンスから、
「旦那様、本日のメインは肉のワイン煮込みになります。」
とサラダやパンが一緒に並べられた。
エドは、
「何時もながら、美味しいな。」 と満足そうに食事を楽しむ。
アンジェも、パクパクと食べては、御代わりをしていた。
食後に、エドから
「アンジェに聞きたいことがある。あぁ、別に問いただす事ではないから、ゆっくり聞いてほしい。」
アンジェは、
「お父様、改まってどうしたのですか?」
エドは、ステフに目線を移し、確認するように、
「アンジェよ、まだ早いとも思ったが、将来について何か考えていることはあるのかね?」
アンジェは、少し考えたが思いつかない。
(俺は、長生きしたいなぁ。でも、アンジェの立場なら政略結婚が妥当だと思うが?弟が出来なければ、婿取りじゃないの?アンジェも、理屈は分かるが納得は出来ないのか?黙ったままだ。)
アンジェは、俺達が思った事をそのままエドに伝えた。
「ですが、まだ決めかねています。
私は、皆と家族のように暮らしていたいのです。この家の皆も、街で暮らす人達とも身近な所で、平穏に暮らしたいのです。」
ステフも、笑顔で
「アンジェの想いも、分かるわ。
ですが、今の貴女には、もっと出来ることがあるのでわないかしら?」
いつも優しいお母様も、何か様子が違うようだ。
エドは、
「3年だ。アンジェよ、成人の儀までに、領内の内政改革に力を借りたい、カミラと協議を進めよ報告をさせようと思う。
また、鍛錬の相手をマクミランとハンスに教わりなさい。アニーとミリーは今まで通りとする。表立ってやる必要はない、気付いた所があれば、カミラと相談するように。」
とお父様が口をパクパクして何か言っている。
(いやいやいや、やる事、増えてない?もう、授業なんて殆ど無いよネ!
アンジェの農地改革を成功させろってことじゃないかな。まぁ、プラスで他にもと考えての内政だよな。
聞いて無いわよ〜。急にどうしたのかしら?)
アンジェは、
「お父様、急にどうしたのですか?それに、3年とは?」
エドは、
「アンジェには、この領の後継ぎとしての教育をしていく。
残念だが、この地が平穏でいられるか、可能性は低いと考えられる。貴族として、領内の統治と領民を守ることは義務なのだからな。友を守らなければ一緒にはいられないのだぞ!3年だ。
資質を見定め、またアンジェの考えを改めて聞きたいのだ。」
(普通の5歳じゃ、この案は無かったろうに。
何よ!私のせいなの?
調子に乗っただろうが!
今の私を、見せびらかしたかったのよ!
真っ裸《まっぱ》族なの?淑女として、もっと言葉を選べよ。)
仕方なくアンジェは、席を立つとカーツィーで挨拶をすると、
「お父様、お母様の仰られる事、アンジェリカの名に誓い全身全霊を持ってやり遂げてみせますわ。」
(カッコつけたな!
私の覚悟を表してるの!黙ってて!)
エドも、ステフも、驚きと高揚感に包まれて、
「アンジェ、貴女の覚悟は心から嬉しいわ。」
エドも、
「こんなに早く、アンジェの立派な姿が見られるとはな。
だが、友達も大切にしなさい。」
アンジェも、
「分かりました。お心遣い、感謝致しますわ。」
部屋に戻ると、アンジェはやってみたい事を紙に書き出していった。
いや、書いたというより、願望だった。
「遊びたい、お昼寝、遊びたい、お昼寝、遊びたい、お昼寝・・・。」
(アンジェよ、やりたいことは、分かったが、残念だったな。
わかってるわ、でも聞いて無いわよ。
そりゃそうだろ。遊んで帰ってたら、決まってたもんな。セトにもエル達にも会えるから、良いじゃないか?
私は、何も出来ない。貴方の力を借りただけ・・・。それも卑怯な真似をして!
アンジェ、それも含めて今の俺は、お前の一部だよ。いいよ、俺のモブ人生にも価値があるなら、力になるさ。
『グスッ』ありがとう。)
しばらくすると、モーラがやってくると、お風呂だそうだ。
「あれ、ねぇモーラ、アニーたちは、どうしたの?」
「アニーもミリーも、今日は所用で私が代わりにお手伝いさせて頂きます。」
「わかったわ。モーラも大変ね。」
「いえ、そんな事はございません。」
「じゃ、よろしくお願いしようかしら。モーラ行きましょ。」
「はい。アンジェ様。」
アンジェは、またもストンと服が落ちていくと、ポイポイと服を脱がされ、モーラに髪と体を洗われると、湯に浸かりながら、一息をつく。
(明日から、少しカミラに相談してできる事をやるしかないかぁ。
稽古は、どうしたらいいかしら?
アンジェ、専用の武具でも、調達したら?もう、やるって決まってるから諦めろ。)
部屋に戻ったアンジェは、改めて、やってみたいリストを書き出していった。
「やっぱり、水道が欲しいわね。北の方から、川が流れていたわね!これを使えないかしら?」
ブツブツ呟きながら、少しずつリストに書き足していく。
(なぁ、アンジェが書いてるのって、アンジェが個人的に欲しいだけじゃないの?
そっそっそんなことは、無いわ・・・。
ほら、やっぱりなぁ。
水道は分かるが、うどんにラーメン、お菓子とかケーキって欲望まるだし過ぎだ。
何よ、力を貸してくれるんでしょ!優先順くらいはわかっているわよ。
まぁ、程々にして、また明日な。)
しばらくアンジェは、俺達の記憶を遡ると出来そうな物を書いては、リストに追加していった。
翌朝、窓から射し込む光で、目を覚ますアンジェに、アニーが
「アンジェ様、おはようございます。」
アンジェも、
「アニー、おはよう。どうしたのかしら、今日は早いのね。」
「いえいえ、何時もと変わりませんわ。アンジェ様が、昨夜は夜更かしをなさっていたからでしょう。」
準備をすると、食堂で朝食を食べ、お茶を飲みながら、アンジェが、アニーとミリーを呼ぶ。
アニーが、
「アンジェ様、お呼びでしょうか?」
アンジェは、
「おはよう。アニー、この後、訓練場に行きます。マクミラン団長にお願いしたい事があるのです。準備をお願いしますね。」
「かしこまりました。」
アニーは、少し驚きながら下がって行く。
代わりに、ミリーがやってきた。
「アンジェ様、お呼びでしょうか?」
「おはよう。ミリー、午後から、カミラ政務官に相談があるのですが、この辺の地に詳しい者を付けて欲しいので、準備をお願いします。」
「アンジェ様、かしこまりました。」とミリーも下がって行く。
アンジェは、もうちょっとはやって見ようとやる気に満ちていた!
(専用武器に何故か心が揺れる?トイレの方法と匂いが、何とかなるかもしれない!)
ただ、その為だけにエドとステフの前で、パフォーマンスを見せたのだった。
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