第12話 不作の理由と対策の説明

 アンジェは、見てきた畑の土を掘り返す。虫やミミズがいたので、少しホッとした。

 暫くして、アニーとミリーも戻ってきた。

「アンジェ様、見て参りました。大根や、きゅうり、白菜、ジャガイモにトマトも小さかったり、育ちが悪いとのことでした。」


 アニーに続きミリーも、

「水が不足していることは無く、日の当たりも悪くなかったと言われてます。」

 アンジェは、

「皆、ありがとう。休息をとって頂戴。マクミランは、私と一緒に来てもらえるかしら?」

 マクミラン団長は、右手を斜めに上げ

「畏まりました。」

 と敬礼をする。

(ここ異世界なんかなぁ?

 どうかして?以前は無かった国でしょう、魔法とかも?

 あぁ~、そうだったな。アンジェよ、食べ物が似すぎているし、今の敬礼も地球にいた頃に使われていた物に覚えがある。)

 アンジェは、

「取り敢えず、お父様の所へ行きましょう。」

 とマクミランを連れて向かった。

「お父様〜。」

 アンジェは、手を振りながら、エドの元へ合流した。

 エドは、

「アンジェ、何か見ていたようだが、分かったのかい?と言っても不作はどうしょうもないか。」

 アンジェは、

「お父様、お尋ねしたいことがあるのですが?畑には肥料は、与えていらっしゃるのですか?」

「肥料を知っているのかね?家畜から出る糞尿を土に混ぜているようだが、それがどうしたのかい?」

 アンジェは、悩んだ。話していい物か、話せばもう私は以前のアンジェではないとバレてしまう。

(アンジェ、今更だよ。剣も持ったことなかったのに、もうやらかしてるだろ!

 そうね、今更だわ!)

「お父様に、大事なお話があります。ここでは、人の目もありますので、子爵邸に戻ってからにしたいのですが、皆を集めて頂けますでしょうか?解決する方法があります。」

 アンジェの言葉に、

「まことなのか?」

「はい。時間はかかりますが、ある程度の不作は対処出来ると思います。それから今日は、マクミランとカミラもお願いします。」

(良く言ったな。領民の為にすることは、いつか皆の笑顔になって返ってくる。それに、信用できる見方を固めておきたいしな。

 そうね、貴方の力を貸して頂戴。それにしても、本当に、消えないわね?

 また、お前は!良い感じに戻ろうとすると、余計なことを!わざなのか?呪われてるのか?ハァ〜もういいや。)


 アンジェ達は、馬車に乗ると子爵邸へと戻って行く。そうして、中央広場にさしかかった、お父様の評判は良い様で手を挙げて迎えてくれる。

 アンジェも、朝と同様に手を振っていると、

「ウゲッ!セト達だ。」

 皆して、こっちを凝視している。

 アニーから、

「アンジェ様、はしたない声を上げてどうなさったのです。」

 お父様も、苦笑いをしている。

「アニー、朝も気づかれたかもと思ったけど、セト達が皆んなで私を、見ていたわ!何か恥ずかしくてムズムズするわ。」

 アンジェは顔を赤くしながら訴えたが、

「身分がバレるのは、問題ないでしょうと、街へ出かけたのですから、これくらいは想定内ですわね。」

 アニーは、冷静に整理したが、恥じらいは理解してもらえなかった。

(ミリーからの、援護も無かったな。クククッ。仕方ないよ、いずれバレたろう。

 分かっているわよ。

 でも、ちゃんと友達として、これからも遊ぶんだぞ。

 出来るかしら?

 アンジェが、そう望むならきっと出来るよ。)


「たっだいま~。」

 アンジェが飛び出すと、皆が出迎えて

「お帰りなさいませ。旦那様、アンジェお嬢様。」

 あれ~、何か仰々しいよ?

「アンジェ、貴方は、いつもいつも、そそっかしいのかしら。」

 お母様の一言に、カルビンが笑うと皆に伝染し、クスクスと笑顔が広がる。

「お嬢様、外への見学も上々のようですな。」

 カルビンの言葉に、

「ありがとう、カルビン。外の世界は凄く広いのね。綺麗な麦畑だったわ野菜も全部ね。

 今度は、お花畑を見に行きましょう。」

(もう、やめろー!何がお花畑だ。そんな物は、アンジェの頭だけで十分だよ。

 何それ?私の頭がお花畑の様に綺麗ってこと?

 わざと言ってるだろ〜。都合のいいように、解釈するな!

 ふ〜ん、バカにして。今日じゃなかったら、激おこ問題よ!)


 エドが、カルビンと話してる。

 今から、会議室へと向かうのに、呼ぶ人以外の人払いの為だろう。

 集まる人が多くなったので、執務室は狭いのだろうなぁ。

 アンジェは、会議室にお父様とお母様にカルビン、マクミラン、カミラそれから、ロッテにアニー、ミリーと9人もいる事を確認した。

 お父様から、

「では、今日の視察にて、例年より不作であることは確認できたが、アンジェから、話があるとの事で集まってもらった。ここでの話は他言無用である。」

 目で合図するお父様から、

「皆様、お集まり頂きありがとうございます。」

 アンジェは、周りを見渡すと、

「農家の作物は、天候によって左右され不作の時もありますが、他に連作障害と言う物があります。これは、同じ畑で同じ作物を作り続けると起こる作物の病気です。」

「作物の病気だと?」

「お父様、人も同じです。毎日ずっと裸で過ごしたら風邪を引くでしょう。作物も同じ土で同じ物を作り続けると病気になります。それは、作物によって、好きな栄養があって作れば作るほどにその栄養が無くなって土が痩せてしまうのです。」

 カミラが、

「連作障害とは、その同じ物を作り続ける事だと言うのですか?」

 アンジェは、

「カミラの言う通りです。例えば麦では、その後にひまわりを育てます。ひまわりからは、油が採れますよ。また、畑を4つに分けて、きゅうり・とうもろこし・枝豆・トマトとします。

 次に後作は人参・玉ねぎ・大根・ほうれん草にします。

 それぞれが、欲しい栄養を使うので使わない栄養はまた、回復していきます。これを4年かけて、1周させて行くと収穫に影響も殆ど出て来ないでしょう。

 後、腐葉土を土に混ぜるのもいいですね。・・・・」

(ハァハァハァ、顎がぁ。もう無理、一度に説明するにも疲れる。アンジェ、後は適当に任せるよ。

 えぇ~。質問とか来たら困るんですけど〜!上手く出来るのかしら?

 疲れたとか、言って休め。まだ、子供なんだから、それくらいで十分だろう。)

 一度に説明したせいか、周りもザワついている。私の言葉を書き留めているのは、カルビンとカミラだった。

 アンジェは、先手を取らなければ何を言われたり聞かれたりするか分からないと危険を察知した。

「お父様、お母様に皆様、今の言葉は、私ではなく、お父様が皆様と検討した結果として公表して、少しずつ広げていってくださいませ。

 それでは、見学をして、お話をしすぎた事もあり、疲れてしまいましたので休ませて頂きたく思います。」

(実際、疲れたのよ〜。外は楽しかったから良いけど、顎が痛いわ!

 お前もか!

 当たり前でしょ、私の体なのよ、体が疲れたら私も貴方も疲れるのよ!

 これまで、こんなに半同一化したことはないからわからんかったわ〜。何かアニーかミリーに軽食を持ってきて貰って、部屋で食べて寝ようよ。

 そうね、賛成だわ。たくさん持ってきて貰って食べよ〜!

 いやいや、軽食って言ったやん!何故また、アホなことを。追求から逃れる為にも、部屋でおとなしく休めやぁ!

 もう、仕方ないわね、明日の為にお腹3分ぐらいで我慢するわ。ん〜、8分と言えよ。)


 お父様から、

「そうだな。今日は、ご苦労であった。ゆっくり、休むとよい。」

「それでは、失礼いたしますわ。アニー、ミリー、良かったら、後で部屋に軽く食べ物を運んで頂けるかしら?」

 アニーとミリーは、

「わかりましたわ。アンスに言って、お持ちいたします。」

 おぉ、綺麗にハモったよ。


 エドは、残った者達と話が続く。

「アンジェは、本当にアンジェなのか?何時、何処で学んだのだ?そもそも、本当にあるのかこの農業の方法が?」

「どちらにしても、大変ご興味のあるお話でしたな。」

 カルビンの言葉に、ステフも、

「私も、少々驚きましたわ。いえ、倒れそうでしてよ。」

「ステフ様、大丈夫でございますか?」

 ロッテがステフの傍に寄る。

 マクミランも、

「お嬢様の知識は大したものですな。」

「旦那様、ここは一度お食事にして小休止を入れては如何でしょうか?」

 カミラの言葉に、

「そうであるな。皆もそれぞれ休むと良い。また、時間を取り検討する。」

 とエドは立ち上がると、全員が続いて部屋を後にした。


あとがき

 いつも読んで頂き、ありがとうございます(*´∀`)

お盆です。

 本日10日土曜日に、この第十二話掲載しましたが、1週間お休みします(=゜ω゜)

次の掲載は24日土曜日の深夜0時に、

『第十三話 会議は続くアンジェは遊ぶ』

になりますので、宜しくお願いしますね(^^♪


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